
最近のコスメは特定成分を配合していない事を意味する『〇〇フリー』が増えてきました。しかし、実はコレ、本当に意味のあるフリーはわずかで、例えば、10個のフリー等、フリーの数を稼ぐためのフリーが多すぎるのが実情です。
まさに『意味のないフリー(意味のない無添加)』。
この記事では化粧品開発者の私が、意味のないフリー(無添加)をランキング形式で、本音暴露します!
何故、〇〇フリーが多いのか?
今のコスメに、何故○○フリーが多いのか?
それは、〇〇フリーにする事で、ユーザーに『肌に優しいイメージ』を簡単に伝える事が出来ると、メーカー側が考えているからです。
よく、10個のフリーとか、フリーの多さを売りにするコスメを見ませんか?
〇〇フリーは、肌に悪影響のある〇〇をフリーにしている(無配合)、という意味ですから、肌に優しそうなイメージがあります。ですから、〇〇フリーの数が多いほど、安全性が高いコスメと、メーカー側はアピールしたいのです。
実際、『敏感肌』を対象としたコスメに〇〇フリーは多いですね。
ただしこれは、メーカー側の『浅はかな戦略』に過ぎず、
〇〇フリー=肌に優しいではなく、敏感肌用でもない
です。
確かに、刺激がある成分のフリーは、肌にとって有効で肌に優しいと言えますが(『意味のあるフリー』)、世の多くの〇〇フリーは、『無意味なフリー』ばかりです。
実際、大手化粧品メーカーは最低限のフリーはするものの、意味のない無意味なフリーはせず、『美容理論と技術』で勝負します。
〇〇フリーは、美容理論と技術で到底勝負できないメーカーがやりがちな、『安易で低レベルな手法』です。
そのようなコスメはオススメ出来ません。
しかし一方で、『意味のあるフリー』が存在するのは事実です。
そこで次項では、以下に記載の、世の中のコスメでよく目にするフリーの中で、化粧品開発者の私が考える『無意味フリー』をランキング形式でご紹介したいと思います。
<ランキング対象のフリー>
- パラベン
- 防腐剤
- エタノール(アルコール)
- 合成着色料
- 合成香料
- 界面活性剤(石油系界面活性剤)
- サルフェート
- 鉱物油
- シリコン
- 紫外線吸収剤
- pH調整剤
- キレート剤
- 動物由来成分
化粧品開発のプロが考える「無意味なフリー」ランキング!
ランキングの前に、大前提として、特定成分に対して肌が弱い方、過去、特定成分で肌トラブルの経験がある方は迷わず、『特性成分フリーコスメ』をお選びください。
では一体、どのフリーが『最も無意味』なのでしょうか?
※あくまで私個人の見解です
※基礎スキンケア品に限定してのランキングです
無意味フリー 第一位:pH調整剤フリー
栄えある?無意味フリーランキング第一位は、『pH調整剤フリー』です。
pH調整剤フリーのコスメを目にした時、本当にびっくりしました。『無意味の典型』です。
pH調整剤とはその名の通り、コスメのpHを調整するために配合する成分です。また、調整だけではなくて、コスメは時間経過とともにpHが低下する傾向にあるので、pH低下を抑制するためにも配合されます。
コスメに配合される代表的なpH調整剤は、『クエン酸』と『クエン酸Na』です。詳細は割愛しますが、これらは『セット』で配合することで効果を発揮するので、多くのコスメには、クエン酸とクエン酸Na、双方が配合されます。
pH調整剤フリーとは、クエン酸やクエン酸Naが配合されていない、という事ですが、これほど無意味なフリーはありません。
まさに、フリー項目の数を増やすためだけの、『無意味なフリーの典型例』です。
コスメには様々な成分が配合されており、成分ロットの違いで、毎回同じコスメが出来る保証はありません。
ですが、品質管理・品質保証の観点から、一定のpH値に設定する必要があり、万一、設定外のpHになってしまった時に調整するために、クエン酸やクエン酸NaといったpH調整剤は必要になります。
特に、パラベンに代表される防腐剤は、pHによって抗菌力に大きな差がありますから、万一、pHが大きくずれてしまったら、本来の抗菌力を発揮せず、コスメが腐敗してしまうという事も十分考えられます。
pH調整剤は、肌刺激の懸念がある成分ではないですし、極微量で効果を発揮するので、コスメに配合される量は『0.1%~0.5%』程度です。
pH調整剤はコスメにとって品質管理、品質保証(防腐力)の観点から必須成分
配合量は極微量
以上から、『pH調整剤フリー』は、無意味なフリーランキング第一位ですから、あまり気にしなくていいですし、pH調整剤フリーを宣伝するコスメはそれだけで信頼度は下がります。
無意味フリー 第二位:紫外線吸収剤フリー
無意味フリーランキング第二位は、『紫外線吸収剤フリー』です。
無意味フリー第一位のpH調整剤と比べて、紫外線吸収剤は『ポジティブリスト』に掲載されている成分ですから、人によっては肌刺激の懸念があります。
実際、敏感肌や子供用の日焼け止めに、紫外線吸収剤フリー(ケミカルフリー)を大きく宣伝する商品は存在します。
そのような意味では、大変意味のあるフリーではありますが、この無意味フリーランキングは、あくまで『基礎スキンケア品』を対象にしています。
そもそも論として、
化粧水やクリーム等の基礎スキンケア品に、紫外線吸収剤なんて配合する意味も必要もない
にもかかわらず、堂々と紫外線吸収剤フリーを宣伝する基礎スキンケア品は存在します。
日焼け止めコスメ以外に、紫外線吸収剤の配合に意味などありませんから、『紫外線吸収剤フリー』をpH調整剤フリーに次ぐ、無意味フリーランキング第二位としました。
重ねて申し上げますが、『紫外線吸収剤フリー』は、日焼け止めには意味がありますが、配合の必要がない化粧水やクリームなどの基礎スキンケア品には全くの無意味。
フリーの数を稼ぐためだけの『低レベルで浅はかなフリー』です。
無意味フリー 第三位:サルフェートフリー
無意味フリーランキング第三位は、『サルフェートフリー』です。
サルフェートとは『硫酸化合物(硫酸塩)』の事です。
コスメでは、ラウリル硫酸ナトリウムやラウレス硫酸ナトリウム等のサルフェートが『界面活性剤』として主に、シャンプーやコンディショナー、ボディソープに配合されます。
特にラウリル硫酸ナトリウムは、肌刺激のある成分(界面活性剤)として有名ですから、サルフェートフリーは有効です。
しかしサルフェートは、界面活性剤の中でも『アニオン界面活性剤』です。
界面活性剤はイオン性によって、『ノニオン(ノンイオン)』、『カチオン』、『アニオン』、『両性』の4種類に分類されます。そして、基礎スキンケア品には、最も安全性が高い『ノニオン界面活性剤』(イオン性を持たない界面活性剤)を配合するのが一般的です。
先に申し上げたように、サルフェートに代表されるアニオン界面活性剤は、シャンプーやトリートメント、ボディソープ等、洗い流すことが前提の洗浄品に配合されますが、基礎スキンケア品には肌刺激の懸念から、基本、配合されることはないです。
しかし、基礎スキンケア品にもかかわらず、『サルフェートフリー』を大きく宣伝するコスメは存在します。
サルフェートフリーは、シャンプーやコンディショナー、ボディソープ等の洗浄品には大変意味がありますが、肌刺激の懸念から配合が避けられる基礎スキンケア品にとっては『無意味なフリー』と言えるでしょう。
要は、
そもそもサルフェートなんて配合しないのに、あえてフリーと言っている
という事です(フリーの個数を稼いでいるだけ)。
先ほどの、基礎スキンケア品にとっての紫外線吸収剤と同じです。
無意味フリー 第四位:防腐剤フリー
無意味フリーランキング第四位は、『防腐剤フリー』です。
防腐剤も紫外線吸収剤と同じく、『ポジティブリスト』に掲載の成分ですから、人によっては肌刺激の懸念があります。
ですから、意味のあるフリーではありますが、重要なのは、
防腐剤フリーであっても、
製造後3年間の品質保証の義務がある、即ち、製造後3年間、腐敗してはいけない
という事です。そして、世の防腐剤フリーコスメの多くは、
防腐剤フリーにする事で不足する防腐力を、他成分を高配合する事で補っている
のです。
このように、一見、安全性が高そうな防腐剤フリーですが、他成分の高配合によって、『肌刺激の懸念』が高まるのです。
これでは『本末転倒』。
勿論、パラベンなどの防腐剤に対し、過去、肌トラブルの経験がある人は、迷わず防腐剤フリーコスメを選ぶべきですが、メーカー側は、防腐剤の配合量に最大限の注意を払っています。
配合量に注意すれば、防腐剤は決して悪ではない!
ですから私自身、防腐剤フリーはオススメしませんが、『ファンケル』だけは別です。防腐剤フリーコスメの中で、ファンケルは別格。
これに関しては以下記事に詳細が書かれていますから、防腐剤フリーにご興味がある方は是非ご覧ください。
無意味フリー 第五位:界面活性剤(石油系界面活性剤)フリー
無意味フリーランキング第五位は、『界面活性剤フリー(石油系界面活性剤フリー)』です。
特に最近、界面活性剤の中でも『石油系界面活性剤フリー』が増えてきました。
界面活性剤は、コスメにとって必要な成分ですが、肌にとっては不要です。
しかしだからと言って、界面活性剤フリーが良いか、と言われればそうではなく、先ほども述べたように、基礎スキンケア品には安全性が高い『ノニオン界面活性剤』が配合されるのが一般的ですから、界面活性剤の肌への影響はあまり考えなくてもいいと思います。
また、最近増えてきた『石油系界面活性剤フリー』ですが、鉱物油同様、石油系と聞くと肌刺激がありそうというイメージをお持ちかもしれませんが、それはあくまで『イメージ』であって、実際は、石油系だから危険というわけではないです。
界面活性剤の肌への安全性を議論する際は、石油系・非石油系ではなく、ノニオン・カチオン・アニオンといった『イオン性』に着目すべきです。
界面活性剤(石油系)=危険ではない
※ノニオン界面活性剤の場合
ですから私自身、界面活性剤フリー(石油系界面活性剤フリー)は、『無意味なフリー』と考えています。
無意味フリー 第六位:鉱物油フリー
石油系界面活性剤同様、鉱物油と聞くと、肌に悪いとお考えかもしれませんが、これはあくまで『イメージ』であって、決して肌に悪いわけではありません。
鉱物油は石油系の油剤ですから、確かに以前は、精製度の問題から『重篤な肌トラブル』が大きな社会問題に発展したことはあります。
ですが、それは大昔の話であって、精製技術が飛躍的に向上した現在は、
鉱物油=危険ではない!
天然成分の漆がかぶれるように、天然由来の成分には、『不純物(夾雑物)』が含まれることがあり、逆に、高度な技術で精製された鉱物油の方が、不純物が少なく肌にとって安全と言えるケースすらあります。
ご自身の信念で、石油由来の成分は使いたくないとお考えの方は鉱物油フリーを選ぶべきですが、そうではない方は、あまり気にされる必要はありません。
鉱物油は、供給が安定していてコストも安い。精製度も高く、私自身は、非常に優秀な成分だと思っています。
無意味フリー 第七位:動物由来成分フリー
最近は『ヴィーガンコスメ』が増えてきました。
ヴィーガンコスメの必須条件の一つに、『動物由来成分フリー』がありますから、この影響もあってか、動物由来原料フリーを宣伝するコスメが多いです。
ヴィーガンなど、ご自身の信念で動物由来原料を使いたくないという方は、迷わず、動物由来原料フリーをお選びください。
しかし、肌への安全性の観点から考えると、
動物由来原料=危険ではない!
また、今のコスメは2000年初頭のBSE問題を期に、一部原料を除き、ほとんどの原料が『動物由来から植物由来』に変わりました。
動物由来原料だからと言って肌に危険というわけではありませんが、コスメはイメージが重要です。BSE問題時、動物由来=危険というイメージがついてしまいましたから、多くの原料が植物由来に変更になりました。
2000年初頭のBSE問題は、20年も前の事ですから、私から言わせれば、今更、動物由来原料フリー?と疑問に思いますし、逆に言えば、今でも動物由来原料を使用しているメーカーは技術レベルが低すぎると思います。
※代替できない動物由来原料は除きます
ヴィーガンコスメの場合、動物由来原料フリーが必須条件の一つですから、フリー表記には納得できますが、通常のコスメであれば、動物由来原料フリーはあえて記載するほどのフリーではなく、現在であれば『当たり前の事』です。
おわりに
いかがでしょうか?
フリー表記は、肌に優しいイメージがありますから、メーカーはフリーの数を稼ぐために『無意味なフリー』を多用したがります。
〇〇個のフリーと、『無意味なフリー』を数に入れて、フリーの多さを強調するコスメが多く発売されているのが実情です。
でも大半のフリーが『無意味』ですから、あまりフリーの数には惑わされない方が良いと思います。
今回の無意味フリーランキングは以下のようになりました。
- 第一位 : pH調整剤フリー
- 第二位 : 紫外線吸収剤フリー
- 第三位 : サルフェートフリー
- 第四位 : 防腐剤フリー
- 第五位 : 界面活性剤(石油系界面活性剤)フリー
- 第六位 : 鉱物油フリー
- 第七位 : 動物由来原料フリー
その中でも、そもそも基礎スキンケア品には配合されないという理由で、
- 紫外線吸収剤フリー
- サルフェートフリー
が、無意味フリーランキングの上位に位置していますが、
「そもそも基礎スキンケア品には配合されない」
というのは、大手化粧品メーカーの考えに基づいています。
私は大手化粧品メーカーで20年近く、化粧品の研究開発をしていましたから、この考えが染みついています。
しかし現在は、インフルエンサー等の個人や、中小メーカーであっても、化粧品の製造・販売が出来る時代です。
注意して頂きたいのは、この記事での「そもそも基礎スキンケア品には配合されない」は、個人や中小メーカーのコスメには当てはまらない可能性があるという点です。
何故なら、個人や中小メーカーでは、成分の安全性を高度なレベルで評価出来ないため、肌刺激に懸念があり通常は基礎スキンケア品に配合しない成分でも配合する可能性があるからです。
ですから、無意味なフリー表記などせず、『美容理論と技術』で勝負する大手化粧品メーカーのコスメを強くオススメします。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません
