美白と言えば、近年、『カネボウの白斑問題』という、絶対にあってはならない安全性トラブル(肌トラブル)が起こりました。
今回は、「何故、カネボウ白斑問題は起こったのか?」を考え、この問題から『美白化粧品(医薬部外品)』について、私の考えを述べたいと思います。
シミが出来る原因とその対策は?
簡単ではありますが、「何故シミは出来るのか?」について、ご説明します。
メラニンと呼ばれる色素、『メラニン色素』は、皆さんのお肌の中、『基底層』で毎日作られています。
正常なお肌の場合、『ターンオーバー』によって、『メラニン色素』は基底層から、お肌表面へ押し上げられ、最終的に体外へ排出されます。これを『メラニンの代謝』と言います。 ですから、若い頃、紫外線を浴びてもシミになりにくかったのはこのためです(若い頃はターンオーバーが正常です)。
メラニンは『生成』と『排出』を繰り返していて、この両者のバランスは保たれています(メラニンの代謝)。しかし、過剰にメラニンが生成されたり、ターンオーバーの異常により、『メラニン代謝が乱れる』と、お肌にメラニン色素が居座るようになります。
この、メラニン色素がお肌に居座った状態が『シミ』です。
ですから、「ターンオーバーを正常化して、メラニン色素を体外へ排出させる」、そして、「過剰なメラニン生成を抑制する」ことが、シミへの対策です。
『ターンオーバーの正常化』には、マッサージやパックなどで、血行をよくして、新陳代謝をアップさせることが有効でしょう。
一方、シミの根本対策と言われる『過剰メラニンの生成抑制』こそが、『美白剤』(美白の有効成分)の役割であり、シミ対策に、美白剤を配合した『美白コスメ』(医薬部外品)を使う理由です。
もう少し詳しくご説明します。
シミ対策①:チロシナーゼの活性を抑制する
シミの原因とも言うべき『メラニン色素』は、表皮最下層の基底層にある『メラノサイト』と言われる細胞で作られています。ですから、このメラノサイトは『メラニン形成細胞』、通称、『メラニン生成工場』とも言われています。
メラニン色素の出発は、アミノ酸の一種である『チロシン』という物質です。 このチロシンが『チロシナーゼ』という酸化酵素によって、『ドーパ』という物質に変化します。 さらにチロシナーゼはドーパにも働きかけて、『ドーパキノン』という化合物に変化させます。 このドーパキノンは、反応性が高く、酵素の力を必要せず、一人で勝手に反応していきます。 『ドーパクロム』、『インドールキノン』、そして最後に、黒褐色の『メラニン色素』になります。
つまり、『チロシン』という出発物質が、『チロシナーゼ』という酸化酵素の力を借りて、反応(酸化)を繰り返すことで『メラニン色素』は生成されるのです。
このように、シミの原因であるメラニン色素は、『チロシナーゼ』という酵素が働くために生成されます。ですから、『チロシナーゼの働きを抑制する』ことが、メラニン色素の過剰生成を抑え、シミ対策になります。
シミ対策②:メラノサイトの活性化を抑制する
メラニン色素は、『メラノサイト』で作られます。女性ホルモンや紫外線などの刺激を受けると、『プラスミン』や『プロスタグランジン』と言われる物質が、メラノサイトに働きかけて、メラニン生成をスタートさせます。
つまり、メラノサイトに、「メラニンを作りなさい!」という『シグナル』を与えて、『メラノサイトを活性化』させるわけです。
「メラニンを作りなさい!」という、『メラノサイトへのシグナルを遮断』し、メラノサイトの活性化が阻害されると、メラニン色素の生成は抑制されます。ですから、『メラノサイトの活性化の抑制』も有効なシワ対策です。
シミ対策③:メラノサイトの拡散を抑制する
視覚的にシミと認識されるのは、メラニンやメラノサイトが、お肌表面(表皮)に移動するからです。ですから、『メラノサイトの表皮への拡散を抑制』すれば、視覚的にシミと認識されない、つまり、シミ対策になります。
以上のように、シミ対策には『①チロシナーゼの活性化抑制』『②メラノサイトの活性化抑制』『③メラノサイトの拡散抑制』があり、当然、これらに対応した『美白剤』が存在します。
ですから、一口に美白剤と言っても、『シミを改善するメカニズム』が異なるのです。
美白剤は種類によって作用メカニズムが異なる
チロシナーゼ活性化抑制
チロシナーゼの活性化を抑制する美白剤は、一番種類が多いのではないでしょうか?
「アスコルビン酸2グルコシド」や「アルブチン」といった有名な美白剤から、「4MSK(4-メトキシサリチル酸K)」、「コウジ酸」、「エラグ酸」、「ルシノール(4-n-ブチルレゾルシノール)」、「マグノリグナン」、『ロドデノール』、これらがチロシナーゼの活性化を抑制する美白剤(美白の有効成分)です。
※後ほどご説明しますが、「ロドデノール」がカネボウ白斑問題の原因物質です。
メラノサイト活性化抑制
メラノサイトの活性化を抑制する美白剤には、「カモミラET」、「トラネキサム酸」、「TXC(トラネキサム酸セチル)」、「テトラヘキシルデカン酸アスコルビル」などがあります。
メラノサイトの拡散抑制
メラノサイトの表皮への拡散を抑制する美白剤には、「ナイアシンアミド」があります。
何故、カネボウ白斑問題は起こったのか?
カネボウが開発した独自の美白有効成分『ロドデノール』配合の美白化粧品(医薬部外品)に、皮膚が白くまだら模様になる『白斑』の症状が確認されました。
これが、化粧品業界に大きな衝撃を与えた、『カネボウの白斑問題』です。
「ロドデノール」は、先ほどもご説明した通り、チロシナーゼの活性を抑制する『美白剤』です。では、「チロシン」と「ロドデノール」の『構造式』を見てみましょう。
「チロシン」と「ロドデノール」、構造式がすごく似ていると思いませんか?
それもそのはず。
「ロドデノール」は、チロシナーゼの活性化を抑制します。チロシナーゼは、メラニンの出発物質、チロシンに働きかけますが、「ロドデノール」はチロシンに形が似てますから、分かりやすく言うと、本来、チロシンに反応するチロシナーゼが、形が似ている「ロドデノール」に、間違えて反応してしまうんです。
このように、「ロドデノール」がチロシナーゼと反応するため、本来持ってる、チロシナーゼの活性を抑制します(チロシンとの反応を阻害する)。
これは「ロドデノール」に限ったわけでなく、チロシナーゼの活性化を抑制する美白剤のほとんどが、『チロシンに似た形』をしています。
では、何故「ロドデノール」だけに白斑が見られたのか?
正直、詳細は不明ですが、チロシンとの親和性が高すぎて(性質が似すぎて)、チロシナーゼの活性を抑制する過程で生じる何かしらの物質が、メラノサイトを攻撃し、メラノサイトが破壊され、消失した結果(メラニンの消失)、白斑が起こったのではと推測します。
ただし、メカニズムに関しては難しすぎて、推測の域を出ませんが、問題は、『白斑が予想できなかったのか?』『被害の拡大を防げなかったのか?』ということです。
以前、肌生理学に詳しい先輩にお聞きしたことがあって、その方によれば、ロドデノールの開発途上で、種々のデータを見れば、『白斑は予想できた可能性が高い』とおっしゃっていました。
と言うのも、部外品の有効成分として国から認可を得るためには、国が定める規定に則った試験が必要です。ロドデノールも同様、この規定に沿って試験データを取得したでしょう。しかし、規定通りの試験法だと、今回のロドデノールの白斑は見逃されてしまう可能性が高い(実際、見逃されてしまい大問題となりました)。ロドデノールのチロシナーゼ活性抑制のデータから、規定通りの試験は勿論、『白斑を疑うような追加試験』をすべきだったとおっしゃっていました。
肌生理学にあまり詳しくない私にとって、難しいお話でしたが、カネボウと言えば超一流の化粧品メーカーで、そこで働く研究員も、超一流の人たちばかりだと思います。そんな優秀な人材の集まりなのに、見逃してしまったことは残念なことです。
ただし、あくまで結果論ですから、私の先輩がおっしゃるように、追加試験を行ったとしても、白斑を防げたかは分かりません。
今回、一番の問題は、最初の白斑被害発覚から、商品回収までに『1年半』かかったことです。
最初の被害報告は、2011年10月。そして、商品の自社回収が2013年7月。
これほど長い間、いわば、『放置』していたわけですから、被害の拡大を招いてしまいました。
カネボウの場合は、花王との関係もありますし、ブランドイメージを大きく傷つける事態ですから、回収を躊躇する気持ちは分かりますが、ユーザーの生活を豊かにし、社会に貢献する企業のすべきことではありません。ましてや、カネボウのような超一流企業であれば、ユーザー数も非常に多いと思うので、絶対に許されるべきことではありません。
カネボウには、被害にあわれた方々と真摯に向き合い、誠実な対応をするとともに、2度とこのようなことが起きないよう、企業体質を改善し、今まで以上に素晴しい商品を世に出して頂きたいと思います。
注目の美白コスメ
先ほどご説明した通り、美白剤には様々な種類があります。
「どの美白剤が一番効果が高いのだろうか」と、皆様思っているのではないでしょうか?
しかし、医薬部外品に配合される有効成分に、効果の順位をつけることは出来ません。国が認めた以上、『全ての有効成分』に改善効果があります。
また、美白の有効成分を2つ配合した美白コスメ(医薬部外品)があると思いますが、2つ配合したからと言って、「1つのモノよりも効果が2倍ある!」なんてことも絶対にあり得ません。
ですから、私自身、美白剤について議論する際、『効果』にあまり着目していません。私が着目している点は、『安全性』です。
美白剤は、「美白効果がある」と、国が認めた成分です。国は、効果は勿論、『安全性の高さ』も認めています。安全でなければ、国から認可を得ることは出来ません。
※ロドデノールは除く
また、医薬部外品を含むコスメにおいて、「絶対に安全」と、『安全性の保証』は禁じられております。
国から認められた=絶対に安全ではなく、人によって合う合わないは必ずあり得る事です。
以上を踏まえ、安全性の高さも議論することは難しいですが、私は安全性に関しては、『市場実績』と『メーカー規模』に置き換えて判断しています。
つまり、昔から使われている成分であれば、実績も豊富で、比較的安心して使うことが出来るということです。
そして、メーカー規模が大きければ、安全性を評価する技術に長けているという事です。
「中小メーカーでも良いコスメを開発する」と言う方はいます。それは事実ですが、安全性を評価する技術に関して言えば、大手には到底かないません。
このブログでも再三申している通り、化粧品にとって(医薬部外品含む)一番重要な要素は、「効果」でも「価格」でも「ブランド」でもなく、『安全性』である、というのが私の信念です。ですから、美白剤に関しても、以前からこのような考え方でしたが、白斑問題が起こって、その想いが一層強くなりました。
そのような意味で、私がおすすめする美白剤は、実績豊富な、『トラネキサム酸』・『アルブチン』・『ビタミンC誘導体』、そして、資生堂独自成分の『4MSK』です。
資生堂 HAKU
チロシナーゼの活性を抑制する美白の有効成分として有名な『4MSK(4-メトキシサリチル酸K』。
これは、資生堂の『独自成分』です。そして、4MSKを美白有効成分として配合した商品が、誰もが知る『資生堂 HAKU』。
「HAKU」は、資生堂のシミ研究の集大成として2005年に誕生し、発売以来16年連続で『美白美容液売上No.1』のブランドです。
※インテージSRI美白美容液市場 2005年1月~2020年12月 金額シェア
資生堂の『シミ研究の最先端技術』を搭載したのが「HAKU」であり、資生堂の最先端=日本の最先端と言っても過言ではありません。
他社の追随を許さない『圧倒的技術』だからこそ、長年に渡り、美白市場のトップに君臨し続けるのでしょう。
2021年3月、「HAKU」が進化しました。
それが『HAKU メラノフォーカスZ』。
最大の特長は、「4MSK(美白)」と「トラネキサム酸(美白)」の『W美白有効成分の医薬部外品』という点です。
「4MSK」は資生堂独自の美白有効成分、「トラネキサム酸」は資生堂が美白有効成分として、日本で初めて国から承認を得た成分ですから、この両成分の組み合わせは『資生堂オリジナル』で、資生堂しかできない組み合わせです。
W美白有効成分の組み合わせは複数ありますが、「HAKU メラノフォーカスZ」の『4MSK+トラネキサム酸』の組み合わせが最強ではないかと私は思っています。
「4MSK」と「トラネキサム酸」は、美白有効成分の中でも『スター成分』ですから、これ以上の美白有効成分の組み合わせは、少なくとも私には考えられない。
さすが資生堂。他社の追随を許さない『圧倒的技術』です。
美白ブランドNo.1にふさわしく、資生堂の『シミ研究の最先端技術』を搭載した、他社を圧倒するブランドが『HAKU』です。
しかも、これまでは4MSKとトラネキサム酸という『美白有効成分の組み合わせ』だけに注目されがちでしたが、今回のメラノフォーカスZは、『液晶技術』を用いることで、美白有効成分を肌奥深くまで届かせる工夫をしています。
液晶と言う言葉は、コスメの世界では一般的ですが、技術的ハードルが高く、資生堂の高い技術力があってこそと言えるでしょう。
しかも今回は、「美容医療か。美白美容液か。」と、美容医療にも負けない事を暗に意味するような挑戦的な表現を用いています。
これは、資生堂のメラノフォーカスZに対する自信の表れでしょう。
間違いなく、今考えられる最高峰の美白美容液に相応しいと言えます。
富士フィルム アスタリフト ホワイト
『市場実績』という点では、『アルブチン』と『ビタミンC誘導体』も十分と言えます。
「アルブチン」・「ビタミンC誘導体」を美白剤として配合したコスメであれば(医薬部外品)、富士フィルムの『アスタリフト ホワイト』に注目しています。
富士フィルムは、化粧品業界に参入してまだ歴史は浅いですが、松田聖子さんをCMに起用した『アスタリフト』は大ヒットとなり、瞬く間に、化粧品業界のトップ集団の仲間入りを果たしました。
『アスタリフト』と言えば、「アスタキサンチン」配合の『真っ赤なジェリー』が有名です。
『アスタリフト ホワイト』は、その名の通り、アスタリフトの『美白版』です。
アイテム全てが、『美白の医薬部外品』で、化粧水(ブライト ローション)とクリームには『アルブチン』が、美容液(エッセンス インフィルト)には『ビタミンC誘導体』が配合されています(いずれも美白の有効成分)。
アスタリフト ホワイトには様々な特徴がありますが、その中で私がすごいと思うのは、富士フィルムが最も得意とする『ナノテクノロジー』です。
富士フィルムは、様々な分野の研究を行っていますから、これらの研究で培った独自のナノテクノロジーを、化粧品(アスタリフト)に技術展開しています。
これが、他社では真似できない、『富士フィルムの強み』ではないでしょうか。
『独自のナノテクノロジー』によって、『オリザノール』や『美容成分(AMA)』を、お肌の奥深くに届け、効果を最大限発揮させています。
他ではなかなか真似できない、富士フィルム独自のナノテクノロジーによって、成分がシミの元に届く『アスタリフト ホワイト』。今注目の美白コスメ(医薬部外品)です。
※「トラネキサム酸配合コスメ」、「アルブチン・ビタミンC誘導体配合コスメ」に限らず、化粧品や医薬部外品は、安全であることが大前提ですが、お肌に合わないケースはあります。万一、お肌に何かしらの異常や違和感をお感じになった場合は、直ちに使用を止め、メーカーの指示に従ってください
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません
