コスメに関するブログを見ると、「ミネラルオイルは肌に悪い」や「ミネラルオイル配合コスメは避けるべき」との声が多いです。
本当にミネラルオイルは避けるべき成分でしょうか?
そこで今回は、化粧品開発者の私が、『ミネラルオイルの真実』と題しまして、「ミネラルオイル配合コスメは避けるべきか?」の疑問にお答えします。
ミネラルオイルとは?
ミネラルオイルとは『石油由来のオイル』で、『炭化水素系オイル』とも言います。
「ミネラルオイルは肌に悪い」・「ミネラルオイル配合コスメは避けるべき」と言われるのは、『石油由来のオイル』のためのようです。
有名コスメブロガーの中にも、「ミネラルオイルは肌に残留して乾燥につながるためミネラルオイルが入っていないクレンジングがおすすめ」と言っている人がいるようです。
ただしこれは、コスメの本質を知らない素人の意見です。後ほど述べますが、「ミネラルオイルは肌に悪い」・「ミネラルオイル配合のコスメは避けるべき」というのは、あくまで『イメージ』であって真実ではありません。
ミネラルオイルは昔から広くコスメに用いられてきましたが、それには理由があります。
それは『価格』と『供給』です。
ミネラルオイルは、コスメに用いられるオイルの中でも非常に『安価』です。ですから昔の『オイルクレンジング』にはミネラルオイルが多量に配合されていました。
オイルクレンジングは、配合成分のほとんどが『オイル』ですから、『原料価格を抑えるため』に、安価なミネラルオイルが用いられてきました。
原料価格を抑えることは、化粧品メーカにとって『利益確保』の面で非常に重要ですし、『お求めやすい価格の実現』のためにユーザーにとっても重要な事です。
また、ミネラルオイルは石油由来ですから『供給が安定』しています。
コスメにとって『供給の安定』は非常に重要な事です。昨今、イメージの良さから『植物由来のオイル』や『精油』がコスメに頻繁に配合されるようになりました。
ただし、特に『精油』は、供給が不安定な代表的成分です。
植物の収量は天候によって左右されますから、場合によっては、供給がストップするケースは十分あり得ます。
供給ストップは、コスメの製造・販売が出来ない事を意味しますから、これは『販売機会の喪失』であり、化粧品メーカーにとって絶対に避けねばならない事態です。
このように、『安価』で『供給が安定』しているミネラルオイルは、コスメを代表する成分です。
ただし、先程も述べたように、昨今はミネラルオイルのイメージがあまりよくありませんから、『植物由来オイル』や『合成オイル』が用いられるようになり、ミネラルオイルの配合機会が減ってきているのは事実です。
ミネラルオイルの真実
そもそも、ミネラルオイルは肌に悪くありません。
「ミネラルオイルは肌に悪い」・「ミネラルオイル配合コスメは避けるべき」・「ミネラルオイルは乾燥を助長する」というのは、全てイメージであって、真実ではありません。
ただ、肌に有益という訳でもありませんから、「積極的に使うべき!」とまでは言いませんが、世の誤ったイメージで、無理をしてミネラルオイル無配合のコスメを探す必要はありません。
一部を除き、ご自身のコスメ選びの指標に、ミネラルオイルの配合有無は必要ないと私は考えています。
『一部を除き』と表現したのは、ミネラルオイルが肌に合わない方、ご自身の信念で石油由来の成分を肌に塗布したくない方は、ミネラルオイル配合コスメを避けるようにして下さい。
コスメは、世の中のイメージ、世の中の誤った情報ではなく、『ご自身の肌質や信念』でお選びください。
コスメブログを見ていると、石油由来のミネラルオイルは悪と、短絡的に考えているブロガーが多いですが、コスメに配合の原料の中で、『石油由来』はミネラルオイルだけではありません。
この事実を、「ミネラルオイル=悪」と捉えている方達はご存じなのでしょうか?
例えば、コスメの必須成分である、保湿剤「BG」や増粘剤「カルボマー」は、『石油由来成分』です。
特に『BG』は、保湿成分としても抗菌成分としても機能しますから、ミネラルオイル以上の配合量になるケースがほとんどです。
※オイルクレンジングは除く
ミネラルオイルはダメで、同じ石油由来のBGを良しとする理由が私には分かりません。
BGに関してもう少し詳しく述べると、BGには2種類あります。
『石油由来』のBGと、『植物由来』のBGです。
『植物由来のBG』は、出発原料のエタノールが植物由来なのですが、非常に『高価』です。
しかも、『匂い』に大きな課題もあります。
化粧品開発者であれば、植物由来BGの『品質の悪さ』は常識ですが、私を含め多くの化粧品開発者が原料メーカーに『匂いの改善』を依頼していますが、技術的に困難なようです。
『植物由来のBG』は、ナチュラルコスメやオーガニックコスメに良く配合されます。
これら天然を訴求するコスメは、パラベンフリーや防腐剤フリーが多いですから、『抗菌成分』でもあるBGの配合は必須です。
ただし、通常のBGは『石油由来』ですから、『植物由来BG』を配合することで、パラベンなどの防腐剤を無配合にすることで不足する『防腐力』を補うとともに、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメに相応しい『成分設計』にするのです。
これらコスメは、『精油』を配合することが多いですから、植物由来BGの匂いは消すことが出来るでしょう。しかし、いくらナチュラルコスメ・オーガニックコスメの実現のためと言っても、植物由来BGを配合しないメーカーも存在します。
植物由来BGの匂いは、主に女性の顔(肌)に塗布するコスメには相応しくないと考えての事でしょう。
このような場合、『プロパンジオール』を配合する事があります。
植物由来のプロパンジオールは、抗菌力はBGに劣りますが、植物由来BGほどの匂いではありません。
以上のように、コスメに配合される『石油由来成分』は、ミネラルオイルだけではありません。
ですから、石油由来だからという理由で、ミネラルオイルを否定するのは大きな間違いです。
おわりに
いかがでしょうか?
世の中のミネラルオイルに対するイメージは根深く、今だ、「ミネラルオイル(石油由来オイル)は肌に悪く、ナチュラルオイル(植物由来オイル)は肌に優しい」という認識をお持ちの方も多いと思います。
私は、「積極的にミネラルオイル配合コスメを使うべき!」と言うつもりは全くありませんが、ミネラルオイルの配合有無でコスメを選ぶべきではない!という事は強く訴えさせて頂きます。
コスメはご自身の肌質や信念で選ぶべきモノ。
天然物である『漆』がかぶれるように、「ナチュラル系原料が肌に優しい」というのも、イメージであって、誤りです。
