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<化粧品開発者が解説>酸化チタンは散乱剤ではない!日焼け止めの疑問②

コスメには疑問や誤解がたくさん。このブログでは、大手化粧品メーカーで約20年、今なお現役の化粧品開発者である私が、メーカーが明かさない『コスメの真実』を明らかにします!

日焼け止めコスメの疑問 第2弾です。実は、

日焼け止めコスメに配合されている酸化チタンや酸化亜鉛は紫外線散乱剤ではない!!

酸化チタンや酸化亜鉛というと、日焼け止めコスメでは『紫外線散乱剤』として扱われるケースが多いですが、実は、これは大きな間違いです。この記事では現役の化粧品開発者の私がプロの視点で、日焼け止めコスメに配合される酸化チタンと酸化亜鉛について詳しくご説明します。

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酸化チタンや酸化亜鉛は「吸収剤」であり「散乱剤」

酸化チタン・酸化亜鉛・吸収剤・散乱剤

一般的に、日焼け止めコスメに配合される酸化チタン酸化亜鉛『紫外線散乱剤』と言われています。

世の中には私のように、ブログやホームページなどを通して、コスメの情報を発信している人達がたくさんいらっしゃいますが、その多くが酸化チタン・酸化亜鉛=散乱剤と考えているのではないでしょうか?

これは全くの間違いではありませんが、真実ではありません。人様にコスメ情報を発信するのであれば、このくらいは勉強して頂きたいです。

日焼け止めコスメに配合されている酸化チタン酸化亜鉛は、『紫外線吸収剤』でもあって『紫外線散乱剤』でもあるのです。

つまり、酸化チタンや酸化亜鉛には『紫外線吸収能』『紫外線散乱能』の双方が備わっています。

紫外線吸収剤というとメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(OMC)のような『有機化合物』のイメージが強いですから、『無機化合物』である酸化チタン酸化亜鉛を、『紫外線散乱剤』として考えてしまうのは仕方がないかもしれません。

実際、酸化チタン・酸化亜鉛=散乱剤というのが、世の認識でしょう。

しかし海外では、日焼け止めコスメに配合される酸化チタン酸化亜鉛を、紫外線散乱剤として考えるというより、OMCのような紫外線吸収剤を含むこれら全てを、『UVフィルター』という表現で扱われるケースが多いです。

海外の原料メーカーのパンフレットで、「紫外線散乱剤」という表現はあまり見たことがありません。

というのも、OMCのような紫外線吸収剤(有機化合物)は、圧倒的に『海外原料メーカー』が強く、そもそも海外の日焼け止めコスメには酸化チタンや酸化亜鉛はあまり配合されません。

ヨーロッパを中心に起こった『ナノ問題』は、日焼け止めに酸化チタンや酸化亜鉛を積極的に配合しない海外メーカーによる『策略』と言っても過言ではありません。

「日焼け止めに配合の酸化チタンや酸化亜鉛は、ナノ粒子であり、人体に対して有害だ!」と訴えたわけです。

海外メーカーは、酸化チタンや酸化亜鉛が日焼け止めコスメに配合出来なくても全く困りませんから、無茶苦茶な事を言い出しました。

ただしこれに関しては、日本メーカーの尽力もあり、問題ないことが立証されましたから、酸化チタンや酸化亜鉛は安心してお使い頂けます

日本の原料メーカーは、紫外線吸収剤(有機化合物)では海外に大きく遅れをとっていますが、酸化チタンや酸化亜鉛では、大きくリードしています。

このような背景から、酸化チタンや酸化亜鉛は、日本の日焼け止めコスメに頻繁に配合されてきたため、日本ではこれらを、「UVフィルター」ではなく、『紫外線散乱剤』として扱ってきたのでしょう。

酸化チタンと酸化亜鉛を『吸収剤』として考えるのには、やや抵抗があるかもしれませんが、酸化チタンは『光触媒』としても活用されています。

光触媒は酸化チタンが持つ『吸収能』を利用していますから、光触媒として酸化チタンが広く活用されている現実が、酸化チタン・酸化亜鉛は吸収剤でもあるという事実を物語っています。

酸化チタンや酸化亜鉛の「吸収剤」としての役割を詳細に理解するには、『酸化チタンの型(ルチル・アナターゼ)』『粒径』『表面処理』などの解説が必要ですが、かなり専門的になってしまうため、分かりやすいよう簡単にご説明させて頂きます。

 

「吸収剤」としての酸化チタン・酸化亜鉛

コスメにおいて「酸化チタン」は、『日焼け止め』『ファンデーション』『コンシーラー』『リップ』など、多くのアイテムに配合されています。

これらアイテムの中で、『日焼け止め』と、「ファンデーション」や「コンシーラー」・「リップ」などの『色モノ』では、配合される酸化チタンの『種類』『目的』が違います。

「日焼け止め」の酸化チタンは、『紫外線カット』のために配合されており、『微粒子酸化チタン』(酸化亜鉛の場合は微粒子酸化亜鉛)と言います。

全成分では「酸化チタン」と表記されてしまいますが、日焼け止めには、非常に粒子が細かい『微粒子』の酸化チタンが用いられます。

一方、「色モノ」に配合される酸化チタンは、『隠ぺい力』のために配合されており、『顔料級酸化チタン』と言います。

先程同様、全成分では「酸化チタン」と表記されますが、日焼け止めの微粒子酸化チタンに比べ、粒子がかなり大きい酸化チタンが用いられます。

酸化チタンには『吸収能』『散乱能』があると先ほど説明しましたが、これらは「微粒子」や「顔料級」といった、酸化チタンの『粒子の大きさ』によって左右されます。

粒子が小さい『微粒子酸化チタン』には、十分な「吸収能」と「散乱能」がありますが、粒子が大きい『顔料級酸化チタン』には、「吸収能」はほとんどなく、大部分を「散乱能」が占めます

これらの寄与率は、なかなか一概に言えませんが、日焼け止めに配合される「(微粒子)酸化チタン」は『吸収と散乱』、色モノに配合される「(顔料級)酸化チタン」は『散乱のみ』と考えて頂いて構いません。

(微粒子)酸化チタンや(微粒子)酸化亜鉛の「吸収能」には、『バンドギャップエネルギー』が関係してきますが、これは専門的すぎるので、機会があれば別記事で解説させて頂きます。

吸収剤というと『光分解』が必ず話題になります。

「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」のような『有機化合物』の紫外線吸収剤は、紫外線を吸収すると、別の物質(構造体)に変化し、いずれ『分解』します。「分解」すると、紫外線を吸収する能力が無くなりますから、これら吸収剤を配合した日焼け止めは、紫外線カット能力が持続しません

ですから、日焼け止めコスメを使う際は、『塗り直し』が必須なのです。

一方、吸収剤としての『(微粒子)酸化チタン』は、紫外線を吸収して別の物質に変化する訳ではなく、分子内で電子が移動するだけですから、分解はしません。

吸収剤としての(微粒子)酸化チタンは、「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」のような有機化合物の吸収剤に比べ、光(紫外線)に対して『超安定』です。

ただし、無意識のうちに触ったりして、物理的な力で落ちてしまいますから、酸化チタン配合の日焼け止めでも『塗り直し』をおすすめします。

このように、日焼け止めに配合されている(微粒子)酸化チタンや(微粒子)酸化亜鉛は、紫外線を『吸収』して、カットします。

 

「散乱剤」としての酸化チタン・酸化亜鉛

「微粒子酸化チタン」の『微粒子の定義』ですが、明確な定義はなく、コスメの業界では、一次粒子径が『100nm以下』を微粒子として扱うケースが多いです。

現在の日焼け止めに配合される微粒子酸化チタンは、一次粒子径『10nm』が主流ですが、実際は、一次粒子の状態で存在することはなく、凝集して10nm以上になっています。

酸化チタン配合の日焼け止めでは、『白浮き』という表現が良く使われます。

これは、日焼け止めを塗ったら「白くなった」という意味ですが、微粒子酸化チタンの中でも、粒子が大きいと白くなります

この「白さ」が、まさに『散乱効果』です。

微粒子酸化チタン・微粒子酸化亜鉛は、粒子が大きくなればなるほど、『散乱能の寄与率』が高まりますが、『紫外線カット効果』は低下します。

ですから、(微粒子)酸化チタンの白浮きは好ましい事ではなく、『メーカーの技術力を知る指標』になります。白浮きする日焼け止めは、技術レベルが低いということですが、これに関する詳細は別途記事にします。

『散乱剤』としての(微粒子)酸化チタン・(微粒子)酸化亜鉛は、有機化合物の吸収剤に比べ、『幅広い紫外線領域をカットする』という特長を持ちます。
※酸化チタンは主にUV-B領域、酸化亜鉛は主にUV-A領域

以前の記事、「日焼け止めの疑問①」では、SPF値だけを考えれば、人の紅斑反応を引き起こしやすい『315nm付近だけ』をカットすればよいと言いました。

 

しかし、「315nm以外」の紫外線による肌ダメージは無視出来ませんから、SPF値に直接関係しなくとも、幅広い紫外線領域をカットすることは非常に重要です。

(微粒子)酸化チタンと(微粒子)酸化亜鉛は、有機化合物の吸収剤のように、特定波長に『吸収ピーク』を持つわけではなく、幅広い波長の紫外線を『散乱』させ、カットしますから(ブロードスペクトル)、非常に有用だと言えます。

 

おわりに

いかがでしょうか?

日焼け止めコスメに配合される「酸化チタン」や「酸化亜鉛」は、『紫外線散乱剤』と言われていますが、実際には、「吸収能」と「散乱能」の両方を持っていて、『紫外線吸収剤&紫外線散乱剤』と考えるのが正解です。

実際、皆様が日焼け止めコスメを使う際は、あまり関係がないかもしれません。しかし、吸収剤として考えた際の酸化チタンと酸化亜鉛の『光安定性』は超優秀ですから、これらの情報を踏まえ、ご自身にあった日焼け止めをお選びください。

その他の、日焼け止めの疑問もご確認ください。

 

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