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コスメの真実 化粧品全般

<プロ解説>ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準とは?指数表示って何?

天然系、自然系、オーガニック系の原料を配合するコスメ、それが「ナチュラルコスメ」・「オーガニックコスメ」です。

配合原料の良いイメージから、ユーザー支持を広げ、数年前に爆発的人気になり、その後だいぶ落ち着いてきましたが、落ち着いた今でも年『約5%』のペースで市場を拡大しているようです。

そんな「ナチュラル・オーガニックコスメ」ですが、一番の課題が、「何を持ってナチュラルコスメ、オーガニックコスメと言うのか?」という『基準の曖昧さ』です。私も以前記事にしています。

<オーガニックコスメ・ナチュラルコスメとは?>

しかしついに、日本化粧品工業連合会(JCIA, 日本の化粧品業界団体)が、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの基準を国際レベルで統一しようと動き出しました。

今回は、化粧品開発者の私が、『ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準』(最新版)についてご説明します。

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今のナチュラルコスメ・オーガニックコスメ

新基準・ISO16128・ナチュラルオーガニックコスメ

ナチュラルコスメ・オーガニックコスメほど、『怪しいコスメ領域』はありません。何故なら、これらコスメには統一基準がなく、各社ばらばら、各化粧品メーカーの『自社基準』で運営されているのが現状ですから、配合成分的に「これ本当にナチュラルコスメ?」と疑わしいモノがたくさん存在します。

実際、ナチュラル原料はごくわずかで、多くを合成原料が占めているにもかかわらず、ごくわずかなナチュラル原料を配合しているという理由で「ナチュラルコスメ」と宣伝している『怪しいナチュラルコスメ』が当たり前のように存在します。

また、「90%以上を植物由来成分と水で構成」と表示された商品に対し、認定NPO法人から、90%のうち何%の植物由来成分が配合されているのか? 植物由来成分が多量に配合されているとの印象を与える可能性があると指摘された事例もあります。

この場合、90%以上と言っておきながら、『大部分は水』であり、植物由来成分はわずかでしょう。

このように、今のナチュラルコスメ・オーガニックコスメには、統一基準がありませんから、ユーザー側は時に『不利益』を被ります。

ナチュラル・オーガニックを求めるユーザーが、自身にとっての真のコスメを選ぶためには、これらコスメを手掛ける化粧品メーカーの『ナチュラル・オーガニックの解釈』を理解し、共感する必要があります。

統一基準がない現状では、化粧品メーカー自身が、自社のナチュラル・オーガニックに対する考え方・理念を、ユーザー側に発信する必要があるわけです。

これで成功しているブランドが、ポーラ・オルビスグループのオーガニックブランド『THREE』です。「THREE」は、自分達の考えるナチュラル・オーガニックの考え方を、ホームページなどを通じ発信し、自社の商品には『天然由来率』という表現で、天然由来成分の配合%を明確にしています。

THREEの考える天然由来成分には賛否両論があるかもしれませんが、これは、ユーザー目線で物事を考え、世の疑わしいコスメと一線を画すための素晴らしいやり方であり、だからこそ、この数年のTHREEの大躍進があるのだと思います。

ISO 16128に基づくガイドラインの策定

世のナチュラル・オーガニックコスメが、全て「THREE」のようであれば、ユーザー側はナチュラル・オーガニックの考え方を理解したうえでコスメを購入し、使用しますから、大きな問題とはならないでしょう。

しかし実際は、考え方をしっかり理解できずに、ナチュラル・オーガニックコスメを使用しているユーザーが多く、『化粧品業界団体』は、誤解を与えることなく正しい情報をユーザーに提供しなければならないと考えました。

そしてこのほど、ISO 16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドラインの策定に着手しました。

言い換えると、ばらばらなナチュラル・オーガニックコスメの基準を、『国際レベルで統一化する』ということです。

ISOとは、『国際標準化機構』の略称で、1947年に設立された非政府機関です。2017年7月時点で163の国が参加しており、様々な産業の基準を『国際レベルで標準化』しております。

『ISO 16128』がナチュラル・オーガニックコスメに関する国際標準規格で、日本の化粧品業界団体である、日本化粧品工業連合会(JCIA)は専門部会を発足させ、日本代表として会議に出席し、日本の意見を積極的に発信しながら、ISO 16128の成案に貢献してきました。

ISO 16128に基づく自然及びオーガニック化粧品に関するガイドラインによる、『基準の統一化』によって、今後のナチュラルコスメ・オーガニックコスメがどのように変わるのか、次項で詳細をご説明します。

ISO 16128に基づくガイドライン詳細

では、ISO 16128の詳細をご説明しますが、本記事は一般ユーザー向けの内容ですから、細かな計算式などは割愛します。私は一通り把握しておりますが、詳細の詳細は、ここでは触れませんのでご了承ください。英語とフランス語に限定されますが、ISO 16128は有料で入手可能ですから、そちらをご確認ください。

原料の定義

ISO16128によって原料は、『自然原料』『オーガニック原料』『自然由来原料』『オーガニック由来原料』『鉱物由来原料』『非自然原料』に定義されます。

詳細は割愛しますが、『由来』に対しても明確な決まりを設けており、『水』に対しても4つに分けて細かく規定しています。

これは非常に評価できる点で、これまでの「天然由来」とか「自然由来」・「植物由来」といった『由来』という表現は非常に曖昧で、これがナチュラルコスメ・オーガニックコスメを複雑にしてきた要因でもあります。

今回、『自然由来原料』『オーガニック由来原料』に該当するための、明確なルールを設けています。

また、全成分表示には「水」とまとめて表記されてしまいますが、コスメの「水」には様々な配合のされ方があります。今回、この様々な配合のされ方の「水」が、どの原料定義に分類されるかも細かくルール化されました。

今回のISO16128によって、コスメに配合の全ての原料が、「自然原料」・「オーガニック原料」・「自然由来原料」・「オーガニック由来原料」・「鉱物由来原料」・「非自然原料」に定義されることになりましたが、後ほど説明する『指数計算』のためにも、配合原料がどの原料定義に該当するか、化粧品メーカーは確実に把握する必要があります。

これは結構大変なことで、ISO16128を深く理解する必要がありますから、どれだけの化粧品メーカーがこれに対応できるか、化粧品開発者の能力次第でしょう。

原料処理

コスメに配合の原料は、コスメに配合されるために、様々な『処理』が施されます。

「エコサート認証」や「コスモス認証」などでは、この『原料処理』も規定していますが、日本のナチュラルコスメ・オーガニックコスメの多くは、原料処理までは考慮していませんでした。

ISO16128では、粉砕・発酵などの「物理処理」、自然に起こる「発酵反応」、意図的な化学修飾を伴う「化学的処理」など、『原料処理法』によって原料定義は異なります。

ですから、同じ成分でも、処理方法が違えば、「自然由来原料」になったり、「オーガニック由来原料」になったりします。

指数表示

今回のISO16128で一番のメインが、『指数表示』でしょう。

今のナチュラルコスメ・オーガニックコスメには「統一基準」がありませんから、「植物由来原料〇〇%以上配合」とか、「天然由来原料〇〇%以上配合」など、化粧品メーカーによって様々な表示法があります。

先程も述べたように、例えば、「植物由来原料90%以上配合」と宣伝しながら、おそらくこの中には「水」も含まれていますから、真の意味で、植物由来原料が何%配合されているか、ユーザーは知ることが出来ません

このユーザー側の不利益を解消するために、ISO16128では、『指数表示』を導入しました。

指数の種類は、『自然指数』『自然由来指数』『オーガニック指数』『オーガニック由来指数』で、それぞれに「水を含む」、「水を含まない」の2種類存在し、『計8つ』の指数表示の中から選択して表示します。

これはつまり、「〇〇指数」の〇〇に定義される成分が、コスメ中に重量で何%配合されているかを表す表示法で、特筆すべきは、各指数に『水の有り無し2種類』を用意したことですね。

先程の例のように、世のナチュラルコスメ・オーガニックコスメの中には「自然由来原料90%以上配合」と、非常に高い自然由来度を宣伝するモノがあります。おそらく、この数字の5割~8割は「水」が占めているでしょう。

「自然由来原料」と聞くと、ユーザー目線では、「植物由来のオイル」や「植物由来のエキス」を想像すると思いますが、化粧品メーカー目線では「水」も「自然由来原料」にカウントします。

何故なら、由来度のパーセンテージを大きくしたいためです。コスメには「水」が多量に配合されていますから、「水」を「自然由来原料」とすることで、「自然由来原料90%以上」という、非常に高い数値が可能になります。

しかしこれは、真にナチュラルコスメ・オーガニックコスメを求めているユーザにとって、あまり好ましいことではありませんから、ISO16128は、この部分にメスを入れたわけです。

ISO16128によって、指数に表示されているパーセンテージが、水を含むか、含まないか、ユーザー側は容易に判断出来るようになります。

もう一つ注目すべき点は、ISO16128では、『自然』『自然由来』『オーガニック』『オーガニック由来』の4種の表現に限定しており、世に存在する「植物由来」や「天然由来」といった表現での指数表示は認めていません

表示例

では実際、どのような表示例になるのでしょうか?

以下が、ISO16128に準拠した、これからのナチュラルコスメ・オーガニックコスメの表示例になります。

【表示例】

・自然指数50%(水を含まない)ISO 16128準拠

・自然由来指数70%(水45%を含む)ISO 16128準拠

・オーガニック指数30%(水を含まない)ISO 16128準拠

注意点

ISO 16128は「化粧品」を規定していない

今回のISO 16128は、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの、『配合原料』に対するガイドラインであり、『コスメ(化粧品)』に対するものではありません。

ですから、「自然化粧品(ISO 16128に準拠)」とか、「オーガニック化粧品(ISO 16128に準拠)」といった表示は禁止されています。

法的拘束力はない

これが一番の注意点と言うか、今回のナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準で、『一番重要な点』です。

この新基準(ISO 16128)には法的拘束力はありません。

ですから、世の化粧品メーカーはこのガイドラインに従う必要はありません。

これまで通り、自社の判断で、「植物由来原料〇〇%配合」や「天然由来原料〇〇%配合」という表現を使っても、何ら問題はありません。

しかし、ユーザー目線で考えれば、今回の新基準は非常に有用です。『基準の統一化』は、化粧品メーカー間の競争力を平等にしますし、何より、ユーザーが不利益を被る、訳の分からないナチュラルコスメ・オーガニックコスメは淘汰されていくでしょう。

ただし、この「新基準」が、世に広く『浸透』したらの話です。

せっかく基準を統一化しても、法的拘束力がない以上、いかに各化粧品メーカーに浸透させるかが重要です。今後、JCIAは、日本だけでなく、欧米の化粧品業界団体と協力して、「新基準」を浸透させる必要があり、その活動に尽力していくでしょう。

この「新基準」は、ユーザーにとってのメリットは大きいですが、正直、化粧品メーカーにとって、他社が導入しない限り、あまりメリットはありません。

何故なら、今回の「新基準」によって、これまで「植物由来原料90%以上配合」と宣伝していた商品は、確実にパーセンテージの数字が下がるからです。しかも、「植物由来原料」と言う表現も使えませんし。

数字が下がるということは、見方を変えれば『スペックダウン』と言えますし、従来の表示方法の他社品に比べて『競争力が劣る』とも言えます。

ですから、今回の「新基準」が化粧品業界に浸透するにはまだ時間がかかると思いますし、第三機関による認証コスメも存在する現状を考えると、浸透させることは、並大抵のことではありません。

個人的には、勢いのある、日本を代表するオーガニックコスメ『THREE』が、この「新基準」を導入すれば、広がっていくと思いますが、「THREE」は独自の『天然由来原料表記』を採用していますから、今後どうなるかは分かりません。

ユーザー目線で考えると、今回の「新基準」は非常に有用なので、多くの化粧品メーカーが導入し、化粧品業界に浸透して、今のナチュラルコスメ・オーガニックコスメを変えてもらいたいと思っています。

おわりに

いかがでしょうか?

今回の、ISO 16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドラインの策定、いわゆる、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの『統一基準(新基準)』は、間違いなくユーザーにとっては有用ですから、是非、多くの化粧品メーカーに採用してもらいたいです。

この「新基準」を浸透させるには時間がかかると思いますが、オーガニックコスメのメガブランド、『THREE』『HANAオーガニック』が採用すれば、多くの他社が追随するのではないでしょうか?

<本物のナチュラル・オーガニックコスメは?>

※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません

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