ハトムギ化粧水は何故、「やばい」と言われるのでしょうか?
この記事では、インターネット上で見かける「やばい」という口コミの真相を、現役の化粧品開発者が、処方特徴とともに詳しく解説します。実際のユーザーが感じるデメリットを徹底解析し、ハトムギ化粧水の全貌を明らかにします。
この記事を読むことで、ハトムギ化粧水「やばい」の真実が分かるとともに、あなたの肌に合ったハトムギ化粧水が見つかるでしょう
本記事の内容
- 「ハトムギ化粧水やばい」の真相を、現役の化粧品開発者が詳細に解説
ハトムギ化粧水
本題に入る前にハトムギ化粧水について、本物と偽物があるのをご存じですか?
偽物というのは言い過ぎですが、ハトムギ化粧水にはオリジナル(本物)とオリジナルでないモノの2種類存在します。これは、処方開発者の間では周知の事実ですが、一般的にはあまり知られていないので、詳細は以下をご参照ください。
「ハトムギ化粧水 やばい」の口コミは、オリジナルでないモノに対してがほとんどなので、この記事では、オリジナルでないハトムギ化粧水について、解説していきます。
「ハトムギ化粧水 やばい」の口コミが見られる、代表的なハトムギ化粧水は以下です。
- ナチュリエ ハトムギ化粧水
- 麗白 ハトムギ化粧水
- プラチナレーベル ハトムギ化粧水
- 情熱価格 ハトムギ化粧水(ドンキ)
「やばい」と聞くと、悪いイメージが強いかもしれませんが、良い意味でのやばいも含まれています。次項で詳しく解説します。
「ハトムギ化粧水やばい」の口コミ
「ハトムギ化粧水やばい」の口コミには、良い意味と、悪い意味があります。まとめると以下に集約されます。
良い意味での「やばい」
- 大容量で価格が安すぎる
- 全身にも髪の毛、頭皮にも使えて万能すぎる
悪い意味での「やばい」
- 保湿力、うるおいが全然足らない
- 肌なじみが良くない
- 肌にしみてニキビができる
- 効果がない
「なるほど!」という感じですが、処方特徴を知れば、上記は全て納得がいきます。詳細を説明する前に情報として、それぞれの全成分と容量、価格を記します。
「ナチュリエ」 全成分・容量・価格
【全成分】水、DPG、BG、グリセリン、ハトムギエキス、グリチルリチン酸2K、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、クエン酸、クエン酸Na、メチルパラベン
【容量 / 価格】500mL / 627円(税込, AMAZON)
「麗白」 全成分・容量・価格
【全成分】水、グリセリン、DPG、メチルグルセス-10、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、BG、ヒアルロン酸Na、ハトムギ種子エキス、グリチルリチン酸2K、キサンタンガム、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、PEG-60水添ヒマシ油、クエン酸、クエン酸Na、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン
【容量 / 価格】1000mL / 598円(税込, AMAZON)
「プラチナレーベル」 全成分・容量・価格
【全成分】水、BG、グリセリン、加水分解ローヤルゼリータンパク、ハトムギ種子エキス、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、クエン酸Na、クエン酸、フェノキシエタノール、メチルパラベン
【容量 / 価格】1000mL / 619円(税込, AMAZON)
「情熱価格(ドンキ)」 全成分・容量・価格
【全成分】水、グリセリン、DPG、メチルグルセス-10、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、BG、ヒアルロン酸Na、ハトムギ種子エキス、ローズマリー葉エキス、ラベンダー花エキス、セージ葉エキス、タチジャコウソウ花/葉エキス、カニナバラ果実エキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウサンザシ果実エキス、ビルベリー葉エキス、キュウリ果実エキス、エタノール、キサンタンガム、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、PEG-60水添ヒマシ油、クエン酸、クエン酸Na、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン
【容量 / 価格】1000mL / 500円(税込)
では次項から、現役の化粧品開発者の私がプロの視点で、やばい口コミの真相を、詳しく解説します。
「ハトムギ化粧水やばい」の口コミの真相
価格が安すぎる
まずは、良い意味での「価格が安すぎてやばい」について、確かに、1000mLで500円~600円なので、やばすぎるくらい安いです。ナチュリエは500mLで約600円ですから、他3品に比べれば高いですが、他3品が安すぎるだけであって、ナチュリエも十分すぎるほどやばいです。
この容量と価格設定、勿論、企業努力があってこそですが、処方技術的にも安さの秘密があります。
それが、「白濁化剤」の配合。
ハトムギ化粧水と言えば、「外観が白い」が特徴の一つですが、外観を白くさせるには2つの方法があります。
1つ目が、界面活性剤の安定分散(自己乳化)による白濁。これは、ハトムギ化粧水のオリジナルである「アルビオン スキコン」が採用している方法です。詳細は以下をご覧ください。
界面活性剤の安定分散による白濁は、技術レベルが非常に高く、簡単にできるものではありません。技術力、製造の手間、付加価値が価格に転嫁されるため、1000mLで500円~600円で提供することは不可能です。
実際、アルビオン スキコンは、165mL 5,500円の中価格帯に位置しています。
2つ目の方法こそ、ナチュリエ・麗白・プラチナレーベル・ドンキが選択した白濁化剤の配合です。ナチュリエが「(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー」を、他3品は「(スチレン/アクリレーツ)コポリマー」を白濁化剤に選択しています。
白濁化剤は界面活性剤の安定分散とは異なり、混ぜるだけで外観を白くすることができるので、高度な技術は必要ありませんし、製造の手間もないです。相当な企業努力はあるものの、白濁化剤の選択が安さを実現している秘密です。
白濁化剤には肌への効果は全く期待できません。あくまで演出の一つです。
全身にも髪の毛、頭皮にも使えて万能すぎる
次も良い意味での「全身にも使えて万能すぎてやばい」。
これだけ大容量で低価格であれば、気にすることなく全身に使えます。お肌に合うのであれば、身体への使用は問題ありませんが、髪の毛への使用は控えた方がいいです。
そもそも、髪の毛用と顔用では処方骨格が違います。髪の毛用には必須の界面活性剤がありますが、この界面活性剤は、顔用には安全性の観点から基本、使われません。
ハトムギ化粧水を髪の毛に使っても何の効果もなく、間違った使用法なので、髪の毛には髪の毛用の化粧品をお使いください。
保湿力、うるおいが全然足らない
次から、悪い意味でのやばいです。「保湿力、うるおいが全然足らなくてやばい」ですが、化粧水で保湿力を出すには、グリセリン、BG、DPG等の多価アルコールが必須です。
ですが、これら成分は水に比べれば価格が高く、1000mLで500円~600円を実現するには、原料価格(原価)を抑える事が必須であり、結果、保湿成分である多価アルコール量を減らさざる得ません。
また、多価アルコールには、保湿成分として以上に重要な役割があります。それが、パラベン等の防腐剤量を減らすための抗菌成分としての役割です。
多価アルコールには抗菌力が備わっており、配合することで、パラベン等の防腐剤を減らしたり、フリーにすることができます。
ナチュリエ・麗白・プラチナレーベル・ドンキのハトムギ化粧水全てにパラベンが配合されており、多価アルコールの抗菌力はそれほど必要ありませんから、原価の低減も重なって、多価アルコールの配合量が少なくなり、結果、「保湿力が足らない」となったと考えられます。
肌なじみが良くない
次が「肌なじみが良くない」について。人の肌表面は親油性、つまり、油の性質が強いです。例えば、肌上に水を置くと、水をはじいて、丸の滴になると思います。一方、油を置くと、丸の滴にならず、広がると思います(肌になじむ)。
これが、人の肌表面が油の性質が強い証拠です。
化粧水の肌なじみを挙げるには、多価アルコールの配合か、界面活性剤の配合が不可欠です。ですが、先ほども述べたように、ナチュリエ・麗白・プラチナレーベル・ドンキは多価アルコール量が少ないと予想されますし、ナチュリエとプラチナレーベルには界面活性剤が含まれていないため、肌なじみ悪いと感じるのは当然と言えば当然です。
界面活性剤を配合することで、原料価格は上がります。また、製造においても少し手間になります。
肌への悪影響から、界面活性剤フリーを宣伝する商品は存在しますが、そもそも化粧水などの基礎スキンケアに配合される界面活性剤は、安全性が高いノニオン型なので、合う合わないはあるにしても、界面活性剤=肌に悪いと考えること自体、間違いです。
肌にしみてニキビができる
次に、「肌にしみてニキビができる」について。
肌にしみたり、ニキビができる原因は様々なので、そもそもお肌に合っていない可能性はあります。ですが、エタノールや防腐剤、保湿力不足による乾燥が、肌へのしみやニキビの原因となることがあります。
ドンキにのみ、エタノールが配合されていますが、全成分の配合順序により1%以下ですから、エタノールの影響はないでしょう。
問題は、防腐剤です。
パラベンとフェノキシエタノールが該当しますが、これらはそれぞれ「配合上限1%」と、国の規制で決められています。しかし、0%~1%の間は、メーカーの自社基準です。ですから、パラベンとフェノキシエタノールを、例えばそれぞれ0.8%配合しても、1%以下ですから何も問題はありません。
しかし、これら成分をそれぞれ0.8%も配合した場合、防腐力は余裕でクリアしますが、確実に肌刺激がやばいです。ですから、常識的に考えて、これほどの高配合はありません。
しかし、パラベン類やフェノキシエタノールといった防腐剤は、1%まではメーカーの自社基準ですから、正確な配合量までは分かりません。
特に大手メーカーは、安全性基準が厳しいので、化粧水であればパラベン類は合計で0.1%~0.2%、フェノキシエタノールは0.3%程度、これだけで防腐力はクリアできないので、それをBGやプロパンジオール、ペンチレングリコールなどの多価アルコールで補うのが一般的です。
先ほどの「保湿力が足らない」という口コミが示す通り、原価低減のため多価アルコール量を減らし、防腐力のほとんどを防腐剤に依存している可能性はあるので、防腐剤量が多いという事は十分考えられます。
※防腐剤を使用することで、原価は圧倒的に抑えられます
さらに、肌が乾燥するとバリア機能が低下し、外部刺激に対して敏感になるため、「肌にしみる」と感じやすくなります。
つまり、「保湿力が足らない(乾燥)」という口コミと、「肌にしみる」という口コミは相関性があるのです。
防腐力に関する補足
化粧品や医薬部外品には製造後3年間の品質保持義務があります。これは、製造後3年間、「分離など性状を大きく損なう事」や「腐る事」はダメという事です。ですから、3年間、腐敗を防止するために、防腐剤や多価アルコール等の抗菌成分が配合されます。
勿論、肌にしみたりニキビができる原因は人によって様々です。化粧水がしみたり、ニキビが頻繁にできる場合は、使用を中止し、肌の状態を見極めた上で、例えばパラベンフリー等の製品に変更するか、皮膚科専門医に相談することをお勧めします。
効果がない
最後、「効果がなくてやばい」について、効果に関しては個人差があります。
また、化粧品は、「安全であって、効果は緩和である事」が大前提です。ですから、そもそも化粧品である以上、即時効果は期待できず、長く使い続ける事で効果を得られます。
一方で、1000mLで500円~600円という圧倒的なコスパを実現させるには、極限まで無駄を省く必要があり、処方はよりシンプルにせざる得ません。美容効果が期待できる複数のエキスは配合されていますが、原価を考えれば十分な量の配合は出来ないでしょう。
原価が高ければ高いほど、美容成分を贅沢に配合でき、効果への期待が高まるというのは、全てとは言わないまでも化粧品にはあることなので、価格を考えれば、「期待していたほどの効果がない」と感じられても仕方がないことかもしれません。
ただし、「ハトムギ化粧水はただの水」という口コミも見られましたが、さすがにこれは言い過ぎです。効果の大小はあれ、ハトムギ化粧水は「水」ではなく「化粧品」です。
以上、「ハトムギ化粧水やばい」という良い意味と悪い意味での口コミに対して、技術的な視点で解説させていただきました。
ナチュリエ・麗白・プラチナレーベル・ドンキの大容量&低価格は圧倒的です。低価格だから効果がないとかダメという訳ではありません。これらのハトムギ化粧水は、驚くべき企業努力によって、大容量&低価格を実現し、幅広いユーザー層に受け入れられています。
一方で、大容量&低価格には必ず理由があり、ある程度の「安かろう悪かろう」は否定できません。結果、効果を感じにくかったり、肌に合わなかったりする事も、忘れてはならないと思います。
おわりに
いかがでしょうか?
この記事を通じて、ハトムギ化粧水の「やばい」という口コミの背後にある真実を深く掘り下げました。
良い意味での「やばい」、つまり、その驚くべきコストパフォーマンスと万能性について、そして一方で、保湿力や肌なじみの面での課題点についても詳細に解説しました。
この記事が、あなたの肌に合ったハトムギ化粧水を見つける一助となれば幸いです。
また、仮にハトムギ化粧水がお肌に合わなかったり、効果に満足がいっていないのであれば、以下をご参照ください。ハトムギ化粧水ほどの低価格ではありませんが、現役の化粧品開発者の私が厳選した、いずれも一流メーカーが手掛けた、価格的にもお手頃な化粧水の名品ばかりです。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません