2019年5月24日、化粧品大手ポーラから、新しい美白有効成分『PCE-DP(ピース ディーピー)』を配合した美白コスメ(医薬部外品)が発売されました。
美白の有効成分の承認は、約10年ぶりという事で、カネボウ白斑問題で国の審査が厳格化される中、新規成分の承認を得たことはすごい事だと思います。
しかし、「PCE-DP」は本当に効果が期待出来るのでしょうか?おすすめなのでしょうか?
そこで今回は、化粧品開発者の私が、ポーラの新規美白有効成分「PCE-DP」の効果と、おすすめなのかをご説明します。
新規美白有効成分「PCE-DP」
PCE-DPはポーラが国から承認を得た『美白の有効成分』です。正式名称は『デクスパンテノールW』と言います。
有効成分と言うのは、国が特定の効果を認めた成分の事で、化粧品よりも効果が期待できる『医薬部外品』の場合、この有効成分を効果が期待できる量、配合しなければなりません。
美白の有効成分は他にも、「アルブチン」「トラネキサム酸」「アスコルビン酸2グルコシド」「プラセンタエキス」などがありますが、これらは、これまでも医薬部外品の有効成分として用いられてきた『既存成分』で、今回ポーラが開発した「PCE-DP」は、『新規成分』になります。
ポーラには『ルシノール(4-n-ブチルレゾルシン)』というオリジナル美白有効成分がありましたが、ルシノールは既に特許が切れているため、オリジナル性が失われています。
ですから、ルシノールの特許切れによる排他性の喪失を見据え、かなり前から、新規美白有効成分の開発を行っていたと推測できます。
実際リリースでは、『10年の歳月をかけて開発』とあるように、膨大な時間とコストをかけて開発された成分が「PCE-DP」です。
PCE-DPの効果は?
「PCE-DP」は美白の有効成分ですから、メラニンの蓄積を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ効果が期待出来ます。
しかしそのメカニズムは、従来の美白有効成分とは大きく異なります。
従来の美白メカニズムは、「チロシナーゼ活性抑制」「メラノサイトへのシグナル遮断」「メラノサイトの拡散抑制」が一般的です。
詳細は、以下記事をご覧ください。
ポーラが開発した新規美白有効成分「PCE-DP」の美白メカニズムは従来とは異なり、表皮細胞のエネルギー産生を増やす事で、ターンオーバーを促進し(メラニンを抱えた細胞が自然に剥がれる)、シミの元であるメラニンが蓄積しにくい肌に導きます。
これをポーラでは『エネルギー美白』と呼んでいます。
ポーラの研究によると、「PCE-DP」は表皮細胞において、エネルギー物質を作り出す反応経路のひとつである『クエン酸回路』を 活性化させることが分かりました。
クエン酸回路は、一度の反応で多くのエネルギー物質を生み出すこと ができますが、表皮ではあまり活用されていません。この、休眠しているクエン酸回路を活性化させることが、美白への第一歩です。
「PCE-DP」によって、表皮細胞内で十分なエネルギーが作られた肌は、メラノサイトにメラニン引き渡しを促す伝達物質の産生が沈静する事、そして、表皮細胞自体のメラニンの取り込みが沈静する事が分かりました。これによって、表皮細胞に含まれるメラニン量(シミの元)が減少していくと考えられます。
さらに、クエン酸回路を活性化させる事で、表皮細胞の増殖が活発になります。結果、表皮の生まれ変わり(ターンオーバー)が促進され、シミの元であるメラニンを抱えた細胞が自然に剥がれやすくなります。
このように、ポーラの新規美白有効成分「PCE-DP」は、『表皮の状態を総合的に改善する』ことで、メラニンの蓄積を抑え、シミ・ソバカスを防ぎます。
引用:https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0508261_01.pdf
PCE-DPはおすすめか?
美白領域では、皆様の記憶にも新しい『カネボウ白斑問題』がありました。この影響によって、一時、各化粧品メーカーは積極的な新成分開発をやめましたし、国の基準も厳格化されました。
ポーラは2017年、日本初の『しわの有効成分』を開発し、『しわ改善コスメ』(医薬部外品)を発売しました。
しわの場合、これまで、しわ改善の有効成分は一切存在せず、まさにユーザーが待ち望んでいた成分でしたから、ポーラの功績は大変素晴らしいと思います。
ただし美白の場合、既に有効成分はたくさん存在しています。これらは、古くから美白の有効成分として用いられていますから、安全性も担保されていると考えてよいでしょう。
ですから、いくら美白メカニズムが従来とは異なっているとはいっても、今、ユーザーが新規美白有効成分を望んでいるのか?、というのは疑問です。
しかも、「PCE-DP」の効果が他の美白有効成分と比べて格段に優れているのならまだしも、美白有効成分同士の効果の差は、公には出来ないのが実情です。
医薬部外品の場合、医薬品と異なりますから、効果を求めたとしても『安全』である事が大前提です。言い換えれば、ある程度の効果を犠牲にして安全に使えることを優先するのが医薬部外品とも言えます。
ですから、いくら国が効果を認めた有効成分を配合した医薬部外品であっても、一定の効果を得るためには、少なくとも3ヶ月は使わなければなりません。
(効果よりも安全に使えることを重要視しているため)
ただし、3ヶ月使っても満足のいく効果を得られていないユーザーはたくさんいると思います。そんな方には、今回のポーラ美白有効成分「PCE-DP」はいかがでしょうか?
3ヶ月以上使い続けても満足のいく効果が得られていない場合は、ご自身がお使いの美白有効成分のメカニズムが、ご自身にあっていない可能性があります。
そんな時は、思い切ってコスメを変える、今お使いのモノとは美白メカニズムが異なる美白有効成分のコスメに変えることは、効果的だと思います。
「PCE-DP」は、これまでの美白有効成分とはメカニズムが異なりますから、従来のメカニズムではなかなか効果が得られなかった方にとっては救世主になるかもしれません。
おわりに
いかがでしょうか?
ポーラの新規美白有効成分「PCE-DP」は、新規メカニズムと言う点、審査が厳格化される中、国から承認を得た点は、大変評価出来ます。
今後の美白領域が楽しみです。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません