コスメには「美白」や「しわ」、「敏感肌」等、様々な領域が存在しますが、その中でも基準が不明確で最も曖昧な領域があります。
それが『ナチュラル・オーガニックコスメ』です。
世の中には様々なナチュラル・オーガニックコスメブランドが存在しますが、「何をもってナチュラル・オーガニックか?」が、メーカーによってバラバラなのが曖昧にしている一番の理由です。
今回は化粧品開発者の私が、ナチュラル・オーガニックコスメの種類を詳しくご説明します。
本当にナチュラル・オーガニックコスメ?
そのコスメ、本当にナチュラル・オーガニックコスメですか?
冒頭でも申し上げたように、コスメにおいては、ナチュラル・オーガニックの基準が不明確です。ですから、例えば、ナチュラル原料はごくわずかで、多くを合成原料が占めているにもかかわらず、ごくわずかなナチュラル原料を配合しているという理由で「ナチュラルコスメ」と宣伝している『怪しいナチュラルコスメ』が当たり前のように存在します。
しかし一方で、ナチュラル・オーガニックの持つ『良いイメージ』から、これらコスメは大人気で、様々なブランド、商品が誕生しているのも事実です。
現在の日本のコスメにおいて、ナチュラル・オーガニックコスメは大きく『3つの分野』に分かれます。
次項ではこれらを詳しく説明するとともに、それぞれの分野にておすすめのコスメをご紹介します。
第3機関が定める「認証コスメ」
先にも述べたように、ナチュラル・オーガニックコスメに怪しいモノが多く存在する理由は、『基準が曖昧』だからです。
基本、化粧品メーカーが『自社基準』という名のもとに、勝手に基準を作っているので、メーカー側が「これはナチュラル・オーガニック」と決めてしまえば、それは立派なナチュラル・オーガニックコスメになってしまいます。
ですから、ナチュラル原料がわずかで、多くを合成原料が占めている、『怪しいナチュラル・オーガニックコスメ』が存在するのです。いくら怪しくても、メーカー側がナチュラル・オーガニックだ!と言ってしまえばそうなってしまいます。
これはいわば、化粧品メーカーが、自分達の勝手な都合で作ったコスメと言えます。
これでは、本当にナチュラル・オーガニックコスメを求めるユーザーに不利益だと考え、これを正すために誕生したコスメが『認証コスメ』です。
認証コスメとは、化粧品メーカーとは全く関係がない『第3機関が定めるナチュラル・オーガニックルール』に従って作ったコスメの事です。
認証コスメには、化粧品メーカー都合の自社基準は存在せず、第3機関が定める基準に則りますので、『客観性』に優れていると言えるでしょう。
最も有名な認証コスメが、『ECOCERT(エコサート)』と『COSMOS(コスモス)』ではないでしょうか。
例えば『エコサート』の場合、製品の95%以上が天然原料であり、そのうち植物原料の95%が以上がオーガニック原料であることなど、厳格な基準が存在します。どのようなものを天然原料と言うかも細かく決められており、さらに、容器や製造に至るまで基準が設けられています。
これら全ての基準をクリアした製品にのみ、『エコサート認証』が与えられ、製品に表示可能となり、エコサート認証を得たオーガニックコスメとして販売が可能になります。
ポーラ・オルビスグループのオーガニックコスメブランド『THREE』が、認証コスメの代表格になります。
THREEはもともと、後で説明する『自社基準』を設けたナチュラル・オーガニックコスメブランドです。自社基準で設定した『天然由来成分』の配合%を製品に表示しています。
現在もこの方法を採用していますが、2019年のリニューアルで、ベーシックケアの『バランシングライン』の全アイテムを『コスモス認証』に刷新しています。今後、2025年までに、スキンケアをはじめとしたヘアケアやボディーケアなど、ホリスティックケアアイテム全てにおいてコスモス認証の取得を目指すようです。
認証コスメのメリットは、何と言っても、オーガニックコスメとしての『信頼性』です。
配合成分や製造にこだわり(ルール)があるため、価格がやや高価になるというデメリットもありますが、そこには化粧品メーカーの勝手な都合が存在しない、本物のナチュラル・オーガニックコスメと言えるでしょう。
自然由来・オーガニック由来原料を用いた「指数表示コスメ」
認証コスメはヨーロッパが盛んで、当時の日本国内にはコスメにおけるナチュラル・オーガニックの基準が存在しませんでしたから、日本の化粧品メーカーの多くが認証コスメに走ったという経緯があります。
ナチュラル・オーガニックコスメ分野で日本は遅れていましたから、これではだめだと、日本の化粧品業界団体(日本化粧品工業連合会)が中心となって、『国際レベルの基準』を設けようと動きました。
それが、ISO 16128に基づく自然由来・オーガニック由来原料を用いた『指数表示コスメ』です。
ISOとは、『国際標準化機構』の略称で、1947年に設立された非政府機関です。様々な産業の基準を『国際レベルで標準化』しています。
『ISO 16128』がナチュラル・オーガニックコスメに関する国際標準規格で、日本の化粧品業界団体である、日本化粧品工業連合会(JCIA)は専門部会を発足させ、日本代表として会議に出席し、日本の意見を積極的に発信しながら、ISO 16128の成案に貢献してきました。
これにより、これまでバラバラだったナチュラル・オーガニックコスメの基準が、『国際レベルで統一化』されました。
指数表示には、配合成分に応じて、『自然指数』・『自然由来指数』・『オーガニック指数』・『オーガニック由来指数』が存在し、これらのコスメには、「自然指数50%(水を含まない)ISO 16128準拠」とか「自然由来指数70%(水45%を含む)ISO 16128準拠」とか「オーガニック指数30%(水を含まない)ISO 16128準拠」のような表示がされます。
簡単に言えば、自然(由来)指数が『ナチュラル系コスメ』、オーガニック(由来)指数が『オーガニック系コスメ』、そして、数値が高ければ高いほど、ナチュラル度、オーガニック度が高いという事です。
ISO 16128の指数基準の詳細は以下をご覧ください。
エキップのスキンケア&ライフスタイルブランド『athletia(アスレティア)』が指数表示コスメになります。
アレスティアはエキップの「RMK」「SUQQU」に続く、第3のブランドとして誕生しました。指数表示だけでなく、容器には、業界最高水準であるリサイクルガラスを90%以上使用したガラス瓶を採用したり、一部製品にはプラスチックに代わるサトウキビ由来の原料を使用したバイオポリエチレン素材も採用するなど、CO2の削減にも取り組んでおり、環境に配慮したナチュラル・オーガニックコスメと言えるでしょう。
エキップは、花王・カネボウの関連会社ですから、業界屈指の技術力を誇ります。イメージだけのナチュラル・オーガニックコスメではなく、『確かな技術』が搭載されていますから、大変おすすめです。
自社基準に基づく「ナチュラル・オーガニックコスメ」
認証コスメは原材料や製造に厳しいルールがあるため、コストがかかります。また、制限がある中での処方化となるため、通常のコスメに比べ、使用感や安定性がやや劣る傾向にあります。
指数表示コスメも同様です。指数の値を上げれば上げるほど、コストがかかりますし、使用感・安定性が悪くなります。
コスト・使用感・安定性を、通常のコスメ同様にしながら、ナチュラル・オーガニックを実現しようと誕生したのが、『自社基準に基づくナチュラル・オーガニックコスメ』です。
これらは先に述べた、ナチュラル原料はごくわずかで、多くを合成原料が占めている怪しいコスメではなく、自社で天然由来の基準を設け、それを公開し、『天然由来率〇〇%』と表示している、納得性の高いナチュラル・オーガニックコスメです。
先ほどのTHREEが発売当初から行っている方法で(2025年までには全品コスモス認証に移行予定)、天然由来の定義をHPなどで公開していますから、かなり透明性が高いと言えますし、もしその定義に共感できないのであれば選ばなければよく、『ユーザー側に選択権がある点』が大変評価出来ます。
しかも、認証コスメや指数表示コスメに比べ、通常コスメ同等のコスト・使用感・安定性が実現出来るため、最近、増えてきている分野です。
昨年、クレンジングバームのDUOでお馴染みのプレミアアンチエイジング社は、新スキンケアブランド「IMMUNO(イミュノ)」をスタートさせましたが、認証、指数表示ではなく、『自社基準による天然由来率』を採用し、全品、天然由来率90%以上を目指すと宣言しています。
自社基準に基づくナチュラル・オーガニックコスメのおすすめはたくさんありますが、その中でもやはり、『HANAオーガニック』です。
この分野は、基準をメーカー側で設定出来ますから、厳しくしたり緩くしたりと、『メーカーのさじ加減』で決められます。当然、基準を厳しくすればするほど、ナチュラル・オーガニックの納得性は上がりますが、コスト・使用感・安定性面でハードルは高くなります。
HANAオーガニックは、自社でナチュラル・オーガニックの基準を設定していますが、その内容が『非常に厳しい』です。これは作りて側(メーカー)にとってはかなり大変ですが、ナチュラル・オーガニックを求めるユーザー側にとってはメリットしかありません。
しかもHANAオーガニックは、全ての配合成分の「由来」と「原産国」を公開しています。
正直、メーカー側が基準を決められる「自社基準系コスメ」は、第3機関が定める基準に則った「認証コスメ」に比べ、ナチュラル・オーガニック度や納得性という点で劣っていると思っていましたが、HANAオーガニックはある意味、認証コスメよりも、ナチュラル・オーガニック度が高く、納得性があると言えます。
それでいて、コスト的にも優しく、厳しい成分基準でありながら使用感にも優れるHANAオーガニックは、本物のナチュラル・オーガニックコスメを求めるユーザー向きと言えるでしょう。
おわりに
いかがでしょうか?
コスメにおけるナチュラル・オーガニックの基準が曖昧ですから、世の中には怪しいコスメがたくさん存在します。
しかし、ISO 16128に基づく自然由来・オーガニック由来原料を用いた指数表示によって、ナチュラル・オーガニックの基準は『国際的に統一化』されましたから、今後徐々に、怪しいナチュラル・オーガニックコスメは淘汰されていくでしょう。
また、認証や指数表示コスメでなくとも、HANAオーガニックのように、大変厳しい『自社基準』でモノづくりをしているメーカーも存在します。
是非、正しい知識で、ご自身にあったナチュラル・オーガニックコスメをお選びください。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません