資生堂 アネッサ、カネボウ アリィーは、誰もが認める『日焼け止めコスメの名品』です。毎年、最先端技術を搭載し、互いが競い合うようにリニューアルしてきます。
アネッサ・アリィーは、皆さんが良くご存じのブランドですが、『搭載技術』については、どのくらいの方がご存じでしょうか?
そこで今回は、現役の化粧品開発者の私がプロの目で、アネッサ・アリィーの『最新の搭載技術』を詳しく説明するとともに、これら以上におすすめの日焼け止めについてご紹介いたします。
資生堂 アネッサ
ラインナップ
- SPF 50+ PA ++++の最高スペックの2層タイプ「パーフェクトUV スキンケアミルク」
- ジェルタイプの「パーフェクトUV スキンケアジェル」
- スプレータイプの「パーフェクトUV スキンケアスプレー」
- パクトタイプの「オールインワン UV パクト」
- 敏感肌や赤ちゃんにも使える「マイルドタイプ」
- トラネキサム酸を美白の有効成分とした「ホワイトニング UV ジェル(医薬部外品)」
- 肌色がついた「BBクリームタイプ」
と、『種類が豊富』です。そして、SPF, PA, ウォータープルーフといった『日焼け止め機能』を重視しながら、「スキンケア成分50%配合」や、「敏感肌・赤ちゃん用」、「美白の医薬部外品」、「スキンケアパウダー配合」など、『スキンケア効果』を前面に押し出した内容になっています。
搭載技術
アクアブースター技術
資生堂アネッサと言えば、汗・水で化粧膜が強くなる『アクアブースター技術』。
通常の日焼け止めの化粧膜は、水に触れると不均一になり崩れやすくなるため、紫外線カット効果に持続性がありません。しかし、資生堂の『アクアブースター技術』は、水に触れると不均一になりがちな化粧膜が、水や汗に触れることで逆に『均一』になり強くなります。ですから、80分間の水浴テストでも紫外線カット効果が持続し、『スーパーウォータープルーフ』が可能になります。
アクアブースターは、他社が真似できない非常に高度な『化粧膜形成技術』と言えます。
サーモブースター技術
紫外線をカットする成分が、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤です。日焼け止めコスメには必ず配合されています。
化粧膜中には、吸収剤や散乱剤が『バラバラな状態』で存在しています。当然、吸収剤や散乱剤が存在しない箇所は、紫外線カット効果が発揮されず、紫外線が膜をすり抜けて、肌に直接届いてしまいます。
ですから、日焼け止めの化粧膜は、吸収剤や散乱剤といった紫外線をカットする成分が、隙間なく均一に存在している事が好ましいですが、実際に、これら成分を化粧膜中に均一に存在させる事は『不可能』です。
しかしアネッサはこれを可能にします。吸収剤や散乱剤といった紫外線カット成分を、太陽などの熱によって均一に隙間なく並ばせる技術が『サーモブースター技術』です。
アクアブースターに次ぐ、資生堂アネッサの唯一無二の『化粧膜形成技術』です。
アクアブースターEX粉体
もともと日焼け止めコスメには、「しっかり塗っていたはずなのに焼けてしまった!」という声が多くありました。
これは、日焼け止めが、汗や皮脂によって取れてしまう事が原因ですが、人は無意識のうちに、指や手で顔を触るため、これによって日焼け止めが取れてしまう事も原因である事が分かりました。
指や手で触る、つまり『摩擦(フリクション)』によって、日焼け止めは簡単に取れてしまうのです。
これに一早く着目したのがカネボウで、そのための技術が後程ご説明する『フリクションプルーフ』です。そして、このカネボウのフリクションプルーフに対抗して開発されたのが、資生堂アネッサの『アクアブースターEX粉体』です。
資生堂は、アクアブースターEX粉体という『独自粉体』によって、『均一で滑りやすい膜』を形成させることで、摩擦でも取れにくい技術を開発しました。
以上のように、資生堂アネッサは、「アクアブースター」・「サーモブースター」・「アクアブースターEX粉体」と、様々な環境下にさらされても、紫外線カット効果が持続する『化粧膜形成技術』に特化しています。
※ 「アクアブースター」と「アクアブースターEX粉体」をあわせて、『アクアブースターEX技術』と言う場合もあります
化粧膜は非常に薄く複雑です。これをコントロールする資生堂の技術はさすがです。
カネボウ アリィー
ラインナップ
- 高輝度パールでトーンアップした透明感ある「ニュアンスチェンジUV ジェル ホワイト」
- 明るく血色感のある「ニュアンスチェンジUV ジェル ローズシェール」
- 透明感ある儚げ顔を演出する「カラーチューニングUV アンニュイパープル」
- いきいきフレッシュ顔仕上げの「カラーチューニングUV サニーアプリコット」
- 汗、水、摩擦に強く落ちにくい「エクストラUV ジェル」「 エクストラUV フェイシャルジェル」「エクストラUV パーフェクトN」
と、いずれもSPF 50+ PA++++ スーパーウォータープルーフという『最高スペック』で、今回は特に、パール剤配合や色をつけることで、日焼け止めだけで顔色を作る、つまり、『コントロールカラーの機能』にこだわっています。
コントロールカラーはいわば『メイク効果』ですから、資生堂アネッサのスキンケア効果とは対照的です。
搭載技術
スーパーフリクションプルーフ技術
『スーパーフリクションプルーフ』は、摩擦から耐える力「フリクションフォースEX」と、化粧膜を守るトップコート「フリクションガード」によって、従来のフリクションプルーフを進化させた技術です。
正直、フリクションプルーフ登場時ほどのインパクトはないので、業界初の技術『フリクションプルーフ』がはどのように開発されたのかをご説明します。
先ほども述べましたが、フリクション、つまり『摩擦』への耐性を向上させた技術が『フリクションプルーフ』であり、日焼け止めが摩擦によってとれてしまうのを抑制します。
日焼け止めコスメでは、「しっかり塗っていたはずなのに焼けてしまった」という声がなかなか無くなる事はありませんでしたから、カネボウは業界で一早く、『摩擦による影響では?』と考え研究を進めました。
そしてついに、花王が開発した『化粧膜解析技術』と、大学との共同研究により、日焼け止めコスメの化粧膜が摩擦によってとれることを科学的に解明し、これを抑制する技術(フリクションプルーフ)の開発に成功しました。
水着を着た女性の背中に日焼け止めを塗布して、わずか『10分間』動いただけで、ほとんど汗をかいていないにもかかわらず、水着の紐がこすれた部分だけ、日焼け止めがとれてしまったというカネボウの研究報告があります。
何故このようなことが起こるかと言うと、これまでの日焼け止めコスメの化粧膜は、ただ単に、肌の上にのっている状態であったため、衣服やカバン、水着の紐などの『摩擦』によってとれやすいものでした。
「フリクションプルーフ」が搭載された化粧膜は、『弾性』をもっており、仮に摩擦を受けても、化粧膜の形状を維持するためにとれにくくなっています。
摩擦によって化粧膜は変化します。これまでは『剛直な膜』のため、摩擦によって壊れてしまうところ、フリクションプルーフでは、『柔軟な膜(弾性膜)』のため、変化はしますが壊れず、最終的に元の形状に戻る(形状維持)というわけです。
つまり『フリクションプルーフ』は、「花王の技術力」と「カネボウの経験値」の融合によって誕生した素晴らしい技術と言えます。
アネッサ デメリット
資生堂アネッサの『化粧膜形成技術』は素晴らしいですが、唯一のデメリットと言えるのが、敏感肌の方や赤ちゃんにも使えるという「マイルドミルク」と「マイルドジェル」です。
これらは、赤ちゃんにも使えるという事で、以前は『ベビーアネッサ』とも言われていました。
これらは、敏感肌、赤ちゃんにも使える『低刺激設計』と言いながら、『紫外線吸収剤』を配合しています。
資生堂は、「原料レベルから厳選した」と言っていますが、そもそも、敏感肌・赤ちゃんにも使える低刺激設計と自らが宣伝している商品に、『紫外線吸収剤』を配合する事は論理破綻しています。
紫外線吸収剤は基本、低分子ですから『肌刺激の懸念』があります。だからこそ、紫外線吸収剤は国によって、『配合が規制されている成分』なのです。
低刺激設計であるならば、紫外線散乱剤を選択し、『紫外線吸収剤フリー(ケミカルフリー)』にすべきです。
資生堂アネッサの「化粧膜形成技術」は誰もが認める素晴らしいモノですが、以前から、敏感肌・赤ちゃんにも使える日焼け止めに、肌刺激の懸念がある紫外線吸収剤を使っていますから、この点に関しては決して同意出来ません。
アリィー デメリット
カネボウアリィーは、ラインナップの全てが、SPF 50+ PA++++の最高スペックで、『紫外線カットに特化しすぎ』です。
『紫外線カット至上主義』と言っても過言ではありません。これは今に始まったわけではなく、以前からです。
そもそもSPF, PAは、高ければ高い方が良いというわけではございません。
長時間、屋外で活動をせず、生活紫外線に曝されるだけの人であれば、SPF 50+, PA++++の最高スペック品を使う必要はありません。
最高スペック品は、紫外線カット効果を最大化するために、肌刺激性が懸念される吸収剤を多量に配合しますし、汗・水に強く、洗浄剤で落とすのも大変です。
つまり、最大限の紫外線カット効果を得られる代わりに、『肌への負担』が懸念されるのが、最高スペック品の日焼け止めです。
勿論、肌への負担より紫外線ダメージの方が深刻ですから、日焼け止めは使うべきアイテムですが、生活紫外線に曝されるだけの人にとって、最高スペック品を使うことは、肌に『余計な負担』を与えるだけです。
長時間、屋外で活動をせず、生活紫外線に曝されるだけであるなら、「SPF 30~ PA+++~」で十分です。
このように、SPF, PAは高いものを選ぶのではなく、ご自身の『生活スタイル(TPO)』に合わせて選ぶべきです。
アリィーの日焼け止めは、全てが『SPF 50+ PA++++』です。日常生活であるなら、これほど高いスペックのモノは必要ありません。肌に『余計な負担』を与えるだけです。
SPF, PAは高ければ高いほど良いというのは間違いで、『TPO』に合わせて選ぶべき。そして、高いSPF, PAではなく、たっぷりな量をこまめに塗り直すという『使用法』が、日焼け止めにとって一番重要なこと。
上記が、『日焼け止めの本質』であり、化粧品メーカーがユーザーに広めていかなければならない真実です。「カネボウ アリィー」の、全てが最高スペックというラインナップは、上記、「日焼け止めの本質」とは大きくかけ離れています。
カネボウは影響力のある化粧品会社ですから、ユーザー側がTPOに合わせて選べるよう、資生堂アネッサのような『マイルドタイプ』をラインナップに加えるべきですし、『紫外線カット至上主義』の考えを改めて頂きたいと思います。
アネッサ、アリィー以上におすすめの日焼け止め
ポーラ ホワイティシモUVブロック ミルキーフルイド
日焼け止めコスメであれば私は、アネッサ、アリィーよりも『ポーラ』をおすすめします。
ポーラと言えども、日焼け止めコスメで、アネッサ・アリィーの知名度には遠く及びませんが、敏感肌・赤ちゃんなど、『デリケートなお肌に使える根拠』がしっかりしています。
『ホワイティシモUVブロック ミルキーフルイド』は、ベビー・子供・デリケートな肌の人に使える『低刺激設計』です。
同じ低刺激設計に、アネッサのマイルドシリーズがありますが、先にご説明したように、アネッサは、紫外線吸収剤を配合しており、ベビー・子供・デリケートな肌に使えるかの根拠が脆弱です。
一方、『ホワイティシモUVブロック ミルキーフルイド』は、デリケートな肌の人にも使って頂けるように『紫外線吸収剤フリー』です。
さらに、『2歳以上の幼児を対象とした連用テスト』を実施しており、幼児に対する安全性を確認しています。
※ 勿論、全ての幼児の肌に合うという訳ではありません。
アネッサの『脆弱な根拠』に比べ、『ホワイティシモUVブロック ミルキーフルイド』の「吸収剤フリー」と「2歳以上の幼児を対象とした連用テスト」は、『信頼性の高い根拠』です。
「2歳以上の幼児を対象とした連用テスト」を実施している、『ベビー・子供用日焼け止め』には、滅多にお目に掛かれません。
ですから、『ホワイティシモUVブロッグ ミルキーフルイド』は、最もおすすめする日焼け止めの一つです。
ポーラ BA ライト セレクター
もう一つのおすすめ日焼け止めは、『ポーラ BA ライト セレクター』です。
これは、太陽光の中で肌に良い影響をもたらす『赤色光』に着目した『新発想』の日焼け止めジェルクリームです。
『光は拒むから選ぶへ』をコンセプトにしています。
太陽光からは、紫外線、可視光線、赤外光と、様々な波長の光が地表に届いています。その中には、紫外線のように人の健康に害を与えるものが含まれており、日焼け止めコスメの目的は、紫外線ダメージからお肌を守る事です。
ポーラはいち早く、紫外線だけではなく、『近赤外線の肌ダメージ』にも着目していました。
近赤外線は遠赤外線の波長が短いもので、太陽から地上に到達するエネルギーの約30%を占めます。ポーラは、近赤外線が紫外線とは異なるタイミングで、真皮のさらに深層に影響を与えることを2014年に発見しています。
このように、これまでの日焼け止めの役割は、紫外線や近赤外線といった、人の肌(健康)を害するものから守る(拒む)でした。
しかし、今回のポーラの研究によって、太陽光の中に、肌を育てる『赤色光』が存在する事が初めて明らかになりました。
赤色光とは、可視光の一部で、肌にハリ感・弾力感を与えてくれます。また、赤色光は、エステや美容機器にも活用されており、医療分野でも注目されています。
ポーラは、太陽光から降り注ぐ、人の肌(健康)を害する「紫外線」と「近赤外線」をカットしながら、人にとって有用な「赤色光」を透過させる『特殊コーティング粉体』を新規開発し、『BA ライト セレクター』が誕生しました。
SPF 50+、PA++++、と業界最高レベルの紫外線カット効果で、PM2.5 などの大気汚染物質もカットする効果を持ちます。
ジェルクリームタイプですから、テクスチャーもみずみずしくて、お肌になめらかに広がり、あるで素肌のような心地よさです。
『光を選ぶ』という、新発想『BA ライト セレクター』。これまでの常識を覆す、他とは一線を画す日焼け止めコスメと言えるでしょう
おわりに
いかがでしょうか?
今回の資生堂アネッサの『化粧膜形成技術』は素晴らしいですし、カネボウアリィーも従来のフリクションプルーフを『スーパーフリクションプルーフ』に進化させました。
さすが、日焼け止めコスメを牽引する2ブランドと言えるでしょう。
しかし一方で、資生堂アネッサの、敏感肌、赤ちゃん用に、紫外線吸収剤を配合する設計、カネボウアリィーの紫外線カット至上主義には疑問が残ります。
日焼け止め分野では、アネッサ・アリィー程の知名度はありませんが、ポーラ BA ライト セレクターの、『赤色光透過技術』は、アネッサ・アリィーに引けを取らない素晴らしい技術です。
是非一度、お試しください。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません