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コスメの真実 話題の成分

紫外線吸収剤って何? ~後編:吸収剤について絶対に知るべき4つの事~

紫外線を『吸収』して、お肌を紫外線ダメージから守る成分、それが『紫外線吸収剤』です。日焼け止めコスメや、BBクリームなどのSPF表示商品に、なくてはならない存在(成分)です。

紫外線吸収剤については、先日、『前編:様々な紫外線吸収剤の特徴』という記事をアップしました。ここには、コスメによく配合される吸収剤の特徴が書かれているので、是非ご覧ください。

前編の記事にも書きましたが、吸収剤については、「吸収メカニズム」、「光安定性」など、まだ知って頂きたい内容がたくさんあります。

そこで今回は、『後編』です。

『後編:吸収剤について絶対に知るべき4つの事』を、化粧品開発者の私が、どこよりも詳しくご説明いたします。

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紫外線吸収剤の『配合規制』について

紫外線吸収剤・日焼け止め・安全性

紫外線吸収剤は、化粧品メーカーが、好き勝手に配合していいわけではございません。

吸収剤には、日本は勿論、世界各国における『配合規制』があります。

配合が許可されている吸収剤の『種類』『配合量(配合上限)』が、国ごとに決まっています。

日焼け止めや、SPF表示商品を開発する際は、日本は勿論、発売国(海外)での『配合規制』を把握しなければなりません。

皆様がお使いの日焼け止めは、お手元に届いている時点で、配合規制をクリアしているはずですから、詳細な規制内容は割愛しますが、ここで一つポイントがあります。

それは、各吸収剤の配合量の規制はありますが、吸収剤総量の規制はないということです。

吸収剤、『A』『B』『C』『D』、それぞれの配合量の規制はありますが、『A+B+C+D』の、吸収剤総量の規制はありません。

これは、後ほどご説明する、吸収剤の『安全性(お肌への刺激)』に関わってきます。

 

紫外線吸収剤の『吸収メカニズム』について

紫外線吸収剤・日焼け止め・安全性

紫外線吸収剤はどのようなメカニズムで、紫外線を吸収するのでしょうか?

上図が、吸収メカニズムの概略図です。

紫外線吸収剤『A』は、紫外線を吸収すると、励起(れいき)状態と言う高エネルギー状態の化合物『A’』になります。

そして、この『A’』が、熱や異性化(分子の形を変える)などの『エネルギーを放出』すると同時に、元の吸収剤『A』に戻り、また紫外線を吸収します。

このように吸収剤は、『一連のサイクル』を繰り返し、紫外線ダメージからお肌を守っているわけですが、問題は、このサイクル、『無限』ではありません。

無限でないため、後ほどご説明しますが、吸収剤には、『光安定性』『安全性(お肌への刺激)』の課題があるのです。

 

紫外線吸収剤の『光安定性』について

上図の「紫外線吸収剤の吸収メカニズムの概略図」を再度ご覧ください。

先程もご説明した通り、吸収剤『A』は、紫外線を吸収し、高エネルギー状態の『A’』になります。そして、熱などのエネルギーを放出すると同時に、元の吸収剤『A』に戻り、また紫外線を吸収します。

しかし、このサイクル、『無限』ではありません。

励起状態と言われる化合物『A’』は、『高エネルギー状態』ですから、様々な反応を起こし、変化しやすい化合物なのです。熱などのエネルギーを放出し、元の吸収剤『A』に戻ってくれればいいんですが、反応しやすいので、『A’』は、『A’’』『A’’’』といった、元の吸収剤「A」とは『全く別の化合物』に変化する場合があります。

当然、『A’’』『A’’’』には紫外線を吸収する能力はありません

この一連の反応を『吸収剤の分解』と言います。

このように、吸収剤は、光(紫外線)によって分解しやすく、分解すると、紫外線を吸収する能力が無くなりますから、吸収剤にとって『光安定性』は最も大きな課題です。

この事実がありながらも、長らく化粧品業界は、吸収剤の光安定性について、有効な対策を講じてきませんでした。

しかし近年、ヨーロッパを中心に、吸収剤の『光安定性』が問題視され始めました。

当然と言えば当然ですね。

「日焼け止めを塗っているから、紫外線を浴びても大丈夫!」と思いきや、実は、お肌の上で、吸収剤の分解が進行して、紫外線を吸収できていない、紫外線からお肌を守れていない状態なんですから。

『前編』でもご紹介しましたが、最も使用されているUVBの吸収剤は、『メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(OMC)』で、最も一般的なUVAの吸収剤が、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)』です。

数年前であれば、この2つの吸収剤の組み合わせが最も一般的で、ほとんどの日焼け止めコスメは、この2つの吸収剤を組み合わせて使用していました。

しかし、この2つの吸収剤は、『光安定性』に課題があります(特にアボベンゾン)。

OMCが紫外線を吸収して、励起状態になった化合物『A’』と、アボベンゾンが励起状態になった『B’』は、互い同士が反応しやすい、つまり、この2つの吸収剤が合わさると、分解が促進される傾向にあります。

ですから、光安定性への対応として、近年は、UVA吸収剤に「アボベンゾン」ではなく、『ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル』が使用されるようになっています。

また、日焼け止めや、SPF表示コスメには、必ず、『たっぷりの量をこまめに塗り直してください』という内容の表示がされています。

仮に、吸収剤が分解しても、『こまめに塗り直すこと』で、紫外線防御効果を維持できるからです。

これも、有効な光安定性への対応です。

紫外線吸収剤の特徴を議論する際、『防御波長領域(UVB or UVA)』『防御能力』は勿論ですが、『光安定性』も重要な要素なのです。

 

紫外線吸収剤の『安全性(お肌への刺激)』について

紫外線吸収剤で、『光安定性』と並ぶ懸念事項が、『安全性(お肌への刺激)』です。

子供用や、ナチュラル系日焼け止めに『ケミカルフリー(吸収剤無配合)』があるので、「紫外線吸収剤はお肌に安全?」と思っている方は多いのではないでしょうか?

結論から言うと、吸収剤には『安全性(お肌への刺激)の懸念』があります。懸念があるからこそ、各国は配合規制をしているのです。

しかし、安全性の懸念があるからといって、日焼け止めコスメの使用を避けることは絶対にあってはなりません。それ以上に、紫外線が与えるお肌へのダメージの方が深刻です。

安全性の懸念がある理由は3つあります。

 

紫外線吸収剤の経皮吸収

『前編』でもご説明した通り、基本、吸収剤は『分子量が小さい』有機化合物です。

※ポリシリコーン-15は、高分子量の吸収剤です

分子量が小さいため、『お肌の内部へ浸透する』恐れがあります(経皮吸収)。

実際、私も、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(OMC)が角質層内部へ浸透するデータを見たことがあります。ただし、そもそもお肌には『バリア機能』が備わっていますし、角質層の上の方であって、奥深くまで浸透するわけではありません

ですから、有機化合物に対しお肌が弱い方を除き、経皮吸収性はそれほど気になさらなくてもいいと思います。

 

紫外線吸収剤の分解

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再度、吸収メカニズムの概略図を載せますが、吸収剤が光(紫外線)によって『分解』することは先ほどご説明した通りです。

これにより、紫外線防御効果が落ちますから、『分解』は大きな問題ですが、分解によって生じる、もう一つの問題があります。

それが、紫外線吸収剤の『安全性(お肌への刺激)』の懸念です。

『A’’』『A’’’』といった、『吸収剤の光分解によって生じる化合物』に安全性の懸念があるのです。

化粧品メーカーは、製剤や原料の安全性をしっかり確認しますが、光分解による分解物の安全性に関しては、確認することが困難です。

基本、原料単体での、『光毒性』『光感作性』試験をクリアしているはずなので、大きな問題はないとの考え方もありますが、吸収剤の場合、それぞれの励起状態化合物、『A’』『B’』同士が反応して、分解物『C’』を生じるケースがあるため、安全性に問題なしと断言はできず、『安全性に懸念あり』というのが、結論でしょう。

 

紫外線吸収剤の配合総量

紫外線吸収剤には、日本を含む各国に、『配合規制』があるとご説明しました。その中で、各吸収剤の配合量(配合上限)が定められていますが、『吸収剤総量』の規制はありません。

吸収剤総量に関しては、各化粧品メーカーの自社基準です。例えば、安全性的に、吸収剤総量『20%まで』とするメーカーもあれば、『40%まで』とするメーカーなど様々です。

吸収剤は、安全性が懸念される成分ですから、当然、配合量が多ければ多いほど、そのリスクは高まります。

 

紫外線吸収剤の安全性懸念に対し、どうすべきか?

確かに吸収剤には、安全性の懸念がありますが、それを理由に、日焼け止めの使用を避けることは絶対にお止め下さい。吸収剤が与えるお肌へのダメージよりも、紫外線が与えるお肌へのダメージの方が比べ物にならないほど甚大です

※化学物質に対しお肌が弱い方は、吸収剤を配合しない『ケミカルフリー』の日焼け止めをお使いください

では、どうすべきか?

「①吸収剤の経皮吸収」については、経皮吸収しない高分子量の『ポリシリコーン-15』のみ配合の日焼け止めを選択するという手もありますが、現実問題、そのような日焼け止めは、おそらく存在しないと思います。
また、私自身、吸収剤の経皮吸収についてはそれほど心配していないので(お肌にはバリア機能が備わっているので)、これに関しては、神経質になる必要はないと考えています。

「②吸収剤の分解」については、分解物のお肌への『安全性』もそうですが、『紫外線防御機能の維持』という観点からも無視できません。
『前編』でもご説明していますが、『光安定性の高い吸収剤配合』の日焼け止めを選択してください。UVAの吸収剤に「t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン」ではなく、『ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル』を配合している日焼け止めや、『オクトクリレン』(UVB吸収剤)配合のモノがおすすめです。

「③吸収剤の配合総量」について。
日焼け止めの、重要な使用法の一つに、『TPOに合わせて』があります。

TPO, つまり、『時』『場所』『場合』に応じてということです。 日常生活であれば、「SPF 20~, PA++~」で十分。長時間、屋外での活動や、屋外でのレジャー・スポーツの場合は、「SPF 50~, PA+++~」を選ぶ。

高スペックになればなるほど(高SPF, 高PA)、吸収剤の配合総量は多くなります。配合総量に関しては、国が定めておらず、メーカーの自社基準ですから、安全に使える範疇かは疑問です。配合総量が多ければ多いほど、吸収剤の安全性リスクは高まります

長時間の外出や、強い紫外線を浴びる環境になく、生活紫外線レベルであれば、「SPF 50+, PA++++」のような最高スペックを選んで、あえて、吸収剤のお肌への刺激のリスクを高める必要はありません

日焼け止めは、吸収剤のお肌に対する安全性懸念を理解し、単純に高スペック品を選ぶのでなく、時と場所と場合に合わせて、『最適なスペック』を選ぶようにしてください。

 

おわりに

いかがでしょうか?

紫外線吸収剤について、お分かりになりましたでしょうか?

『前編』もご覧になって頂くと、より理解が深まると思います。

紫外線吸収剤の特徴を知り、ご自身がお使いの日焼け止めを理解して、確実な紫外線対策をしてください!

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※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません

 

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