2018年3月、『カネボウ エビータ』のスキンケアが全面的に刷新され、エイジングケアシリーズ『カネボウ エビータ ボタニバイタル』にリニューアルされました。
カネボウ エビータと言えば、「50代から」と年齢を明記した、『年齢別コスメ』のパイオニアです。
このリニューアルで、『エビータ』はどのように生まれ変わったのでしょうか?
そこで今回は、化粧品開発者の私が、プロの目から『エビータ ボタニバイタル』を分析いたします。
リニューアルで一番大きく変わった点
日本人女性の最大ボリュームゾーンである団塊世代が、50代にさしかかった2000年に誕生したセルフブランドが『カネボウ エビータ』です。
当時のターゲット女性の、「どのコスメを選んでいいのか分からない」というニーズに対し、いち早く商品周りに『50才から』と年齢を明記しました。
この分かりやすさがユーザーの支持を集め、以来、セルフエイジングケア市場を牽引し続けてきたのが『カネボウ エビータ』です。
今でこそ、「〇〇才から」と年齢を明記する『年齢別コスメ』(年代別コスメ)は珍しくありませんが、カネボウ エビータが年齢別コスメのパイオニアと言えるでしょう。
今回の「カネボウ エビータ」⇒「カネボウ エビータ ボタニバイタル」へのリニューアルで、大きく変わった点は『2つ』あります。順にご説明します。
50才からの表記がなくなった!
エビータと言えば「50才からのコスメ」と言うくらい、最大の特長であった『年齢の要素』がなくなりました。
今回の『エビータ ボタニバイタル』のターゲットは、50代女性ではなく、エイジングケアに取り組みたいと考える『すべての女性』です。
女優の長澤まさみさんをCMに起用する戦略からも、今回のリニューアルによって、『年齢別コスメから脱却する!』というカネボウの強い意志が感じられます。
そもそもエビータが年齢別コスメに走った理由は、先ほども述べたように、「どのコスメを選んでいいか分からない」という『ユーザーニーズ』があったからです。
しかし現代は、女性を取り巻く社会環境が大きく変化しましたし、インターネットやSNSも広く普及しています。これによって、様々なコスメ情報を効率的に入手し活用することが出来ますから、「どのコスメを選んでいいのか分からない」という当時のユーザーニーズが少なくなってきたのでしょう。
また、現代は、『30代』からエイジングケアを意識し、エイジングケアを始めると言われていますから、ターゲットを、エイジングケアに取り組みたい『すべての女性』にシフトしたことは納得できます。
ただし、エビータと言えば『年齢別コスメ』の代表格でしたから、リニューアルで、「50代の」を無くすとは驚きでした。
「50代の」という、17年以上展開してきたエビータブランドの『根幹』を変えたということですから、これはもう、リニューアルと言うより、『新ブランド』と言っても過言ではないでしょう。
植物の強さに着目
「50代の」という年齢別コスメからの脱却を図ると同時に、エビータが取り入れた新しいコンセプトが『ナチュラル×バイタル×エイジング』。
『ボタニカル(植物の)』の名が示す通り、植物の持つ力強さ・生命力に着目して、ブランド誕生以来象徴としてきた『バラ』に、植物の力を組み合わせました。
こうして誕生したのが、『エビータ ボタニバイタル』。
『エビータ ボタニバイタル』は、植物のみなぎる力を味方に、うるおいあふれるハリ肌に導くセルフエイジングケアシリーズです。
このように、2つの変化点を見る限り、今の時代に合った、今の時代のユーザーニーズを反映した素晴らしい商品に思えますが、実は、突っ込みどころ満載です。
突っ込みどころの前に、『エビータ ボタニバイタル』の商品ラインナップを見てみましょう。
エビータ ボタニバイタル 商品ラインナップ
エビータ ボタニバイタルには、2つのラインがあります。
年齢と共に気になる「乾燥悩み」に対応した「高保潤ライン」、通称『赤ライン』と、年齢と共に気になる「ハリ・つや」に対応した「艶リフトライン」、通称『黒ライン』です。
「赤と黒、選べる2つのシリーズ。あなたはどちらのエビータ?」
これをキャッチコピーに展開しています。「赤」と「黒」、色で分けるのはポーラのB.Aのパクリのようにも思えますが、分かりやすくて良い戦略ですね。
また、各シリーズには、「化粧水」・「乳液」・「クリーム」を取り揃えていますが、『オールインワンジェル』もラインナップされており、「赤ライン」「黒ライン」とも、このオールインワンジェルが、エビータ ボタニバイタルを『象徴するアイテム』のようです。
「赤」:高保潤ライン
<商品名> エビータ ボタニバイタル ディープモイスチャー ジェル
<分類> 化粧品、オールインワンジェル
<容量 / 価格> 90g / 1,500円~2,000円
<全成分> 水、グリセリン、DPG、ミリスチン酸オクチルドデシル、BG、スクワラン、シア脂、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、コメ発酵液、マカデミアナッツ油、水添レシチン、カルボマー、コレステロール(羊毛)、水酸化K、キサンタンガム、グリチルリチン酸2K、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、カンゾウ根エキス、ダマスクバラ花水、香料、EDTA-2Na、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ヒアルロン酸Na、ダイズ芽エキス、リンゴ果実エキス、アセロラ果実エキス、キイチゴエキス、水溶性コラーゲン、キュウリ果実エキス、フェノキシエタノール、クロルフェネシン
<その他のラインナップ>
・エビータ ボタニバイタル ディープモイスチャー ローション II
・エビータ ボタニバイタル ディープモイスチャー ローション III
・エビータ ボタニバイタル ディープモイスチャー ミルク II
・エビータ ボタニバイタル ディープモイスチャー ミルク III
・エビータ ボタニバイタル ディープモイスチャー クリーム
「黒」:艶リフトライン
<商品名> エビータ ボタニバイタル 艶リフト ジェル
<分類> 化粧品、オールインワンジェル
<容量 / 価格> 90g / 1,500円~2,000円
<全成分> 水、エタノール、PEG-75、ジグリセリン、DPG、グリセリン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、BG、PEG-60水添ヒマシ油、ポリソルベート20、マカデミアナッツ油、カルボマー、水酸化K、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダマスクバラ花水、ジオウ根エキス、キサンタンガム、香料、EDTA-2Na、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、カキョクエキス、プルーン分解物、ヒアルロン酸Na、オタネニンジン根エキス、ダイズ芽エキス、水溶性コラーゲン、アボカドエキス、キュウリ果実エキス、フェノキシエタノール
<その他のラインナップ>
・エビータ ボタニバイタル 艶リフト ローション II
・エビータ ボタニバイタル 艶リフト ローション III
・エビータ ボタニバイタル 艶リフト ミルク II
・エビータ ボタニバイタル 艶リフト ミルク III
「カネボウ エビータ ボタニバイタル」分析
今回の、「カネボウ エビータ ボタニバイタル」は、長澤まさみさんをCMに起用していますし、何より『カネボウブランド』ですから、期待していましたが、正直がっかりです。
ものすごく期待を裏切られた商品です。
オールインワンジェルがブランドを象徴するアイテム
化粧水・乳液・クリームの『シリーズ使いアイテム』と、1品で済む『オールインワンジェル』を、「赤」・「黒」それぞれのライン内に取り揃えているので少し驚きました。
特に大手化粧品メーカーは、これまで『シリーズ使い』を推奨してきましたから、オールインワンジェルが今の流行でも、なかなか手が出せないのが現状です。
1本で済むオールインワンを発売することは、これまでのシリーズ使いを『否定する』ことにもなりかねないので、オールインワンジェル専用ブランドなど、ブランドやラインを分けるなどの工夫が必要でしょう。
今回、同ライン内に、「シリーズ使い」と「オールインワンジェル」が混在しています。シリーズで使って頂いた方が、メーカー側は儲かるので、シリーズアイテムが主役となりがちですが、今回の「エビータ ボタニバイタル」では、『オールインワンジェル』がブランドを象徴するアイテム、つまり、『主役アイテム』になっています。
これはやはり、昨今のオールインワンジェルブームのためでしょう。
特に、エビータが主戦場とする『セルフ市場』の2016年の化粧品売り上げを見ると、対前年比『98.5%』と、鈍化傾向に歯止めが掛かりません。
セルフ市場のコスメは苦戦が続いているのが現状です。
しかし、化粧水や乳液、美容液など、多くのアイテムが売り上げを下げる中、『オールインワンジェル』のみが、対前年比『113%』の伸びを見せて、堅調に推移しています。
これは世の女性の『時短ニーズ』を捉えた結果ですから、セルフエイジングケアの「エビータ ボタニバイタル」は、『オールインワンジェル』を主役にせざる得なかったのでしょう。
ユーザーニーズがあるところに注力するという戦略は正しいと思いますが、ユーザーに対して詳細な商品説明が出来ない『セルフ市場』で、ユーザー側に「オールインワン or シリーズの選び方」を、いかに伝えるかが課題となるでしょう。
ボタニカルと言いながらナチュラルでない!
これが一番驚き、残念に思った点です。
「ボタニバイタル」という植物を想起させる『ブランド名』、CMやホームページなどの『世界観』から、多くのユーザーが『エビータ ボタニバイタル=ナチュラルコスメ』と思っているのではないでしょうか?
私自身も、初めてCMを見た時、「エビータはナチュラルコスメにシフトしたんだ」と思っていましたから、実際商品を詳細に分析してみて驚きました。
「エビータ ボタニバイタル」は、ナチュラルコスメではなく、『ケミカルコスメ』です。演出で『ナチュラルっぽく』見せているだけです。
このブログでも申し上げていますが、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの基準がない日本において、今回のようなナチュラルっぽく見せて、実はケミカルな『ナチュラル風コスメ』は驚くほどたくさん存在します。
ですから私自身、今さら驚いたりはしませんが、まさか「カネボウ」ほどのブランドが、ここまであからさまにするのか!という点に驚きました。
「赤ライン」・「黒ライン」双方に共通成分として『ポリアミンα※1』を配合。さらに、「赤ライン」には『ボタニモイスト※2』を、「黒ライン」には『ボタニモイストEX※3』を配合して、『ボタニバイタル処方』と、ナチュラル感満載に宣伝していますが、保湿成分として植物エキスを配合する通常のケミカルコスメと何ら変わりはありません。
※1:ダイズ芽エキス、グリセリン
※2:コメ発酵液、ダマスクバラ花水、ヒアルロン酸Na、リンゴ果実エキス、アセロラ果実エキス、キイチゴエキス、水溶性コラーゲン、キュウリ果実エキス
※3:マカデミアナッツ油、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダマスクバラ花水、プルーン分解物、ヒアルロン酸Na、オタネニンジン根エキス、水溶性コラーゲン、アボカドエキス、キュウリ果実エキス
保湿効果や様々な美肌効果が期待できる『植物エキス』は、現代のコスメにおいてなくてはならない『必須成分』です。逆に、植物エキスを配合していないコスメを見つけることが困難なくらい、植物エキスは当たり前の成分です。
「エビータ ボタニバイタル」は、この当たり前のことを、CMやパッケージ(容器)が醸し出す『世界観』で、あたかも全てがナチュラルのように演出しているだけの『イメージコスメ』と言えるでしょう。
現に、「エビータ ボタニバイタル」には、パラベン・フェノキシエタノール・クロルフェネシン(いずれも『防腐剤』)が配合されていますし、なぜか『紫外線吸収剤』も、そして、『ミネラルオイル(鉱物油)』も配合されています。
ナチュラルとは程遠い配合成分です。
これ自体、私は否定するつもりはありませんし、これら成分が肌に悪いとも思っていません。コスメを構成する必須成分とも言えます。
しかし、パッケージやCM、ホームページが醸し出す『世界観』と、『実際の配合成分』が、あまりにも違いすぎて、この『ギャップ』は、果たしてユーザーのためになるのか疑問です。
もしご自身の信念や肌質で、「ナチュラルコスメを使いたい」、「ナチュラルコスメしか使えない」というユーザーが、ナチュラルコスメと思い込んで「エビータ ボタニバイタル」を使ったら、それはもはや、ユーザー側が不利益を被る『優良誤認』ではないでしょうか?
他の無名なメーカーならまだしも、「カネボウ」ほどのメーカーがすることではないと私は思います。
特にカネボウは、『白斑』の問題がありますから、ユーザーに対して誠実な態度で臨む必要があります。
今回の「エビータ ボタニバイタル」が不誠実とまでは言いませんが、世界観と実配合成分との『ギャップ』は、化粧品開発者の立場からすれば、『正すべき事』ではないかと思います。
日本に、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの明確な統一基準がないことが、そもそもの原因かもしれませんが、このブログでもご紹介したように、日本の化粧品業界団体が、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの統一基準の策定に動き出しています。
詳細は以下記事をご覧ください。
<ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準>
今回の「エビータ」のリニューアルに、この新基準の適応は間に合いませんが、カネボウや資生堂、ポーラなど、日本を代表する大手化粧品メーカーがこの新基準を取り入れれば、世の中に広がっていくと思います。そして、世に広く浸透すれば、ユーザー側が不利益を被りかねない『ナチュラル風コスメ』が淘汰されていくでしょう。
ケミカルコスメであることを承知の上で、「エビータ ボタニバイタル」の『ブランドコンセプト』・『世界観』に共感して使用するのであれば問題ありませんが、『ナチュラルコスメ?』という理由で使用を考えているのであればご注意ください。
おすすめのオールインワンジェルは?
昨今のオールインワンジェル人気、ユーザーの時短ニーズを反映して、「エビータ ボタニバイタル」の象徴アイテムは『オールインワンジェル』です。
しかし、先程も述べたように、ケミカルコスメである事を承知の上で選択するのであれば問題ありませんが、私は、「エビータ ボタニバイタル」が醸し出す世界観と、実際の配合成分との『ギャップ』に疑問を持っています。
ですから、「オールインワンジェル」であれば、「エビータ ボタニバイタル」よりも、『トリニティーライン ジェルクリーム プレミアム』をおすすめします。
「カネボウ」は確かにすごいメーカーですが、「トリニティーライン」を開発したドクタープログラムは『大正製薬グループ』です。
コスメの総合力は、カネボウが上かもしれませんが、大正製薬には、製薬(創薬)で培った『高い技術』がありますから、カネボウに引けを取りません。
「トリニティーライン」は、『水を一滴も加えず、95%以上が美容成分』です。水の代わりに、『シラカンバ樹液』を超高配合しています。
また、『48種の美容成分』を配合し、さらにセラミドを従来品の『55倍』配合しています。
「アレルギーテスト済み」・「パッチテスト済み」・「乾燥性敏感肌の方の協力によるパッチテスト済み」です。
「無香料」・「無着色」・「エタノール不使用」でもあります。
これだけの内容であれば、「トリニティーライン」の方が、よっぽど『ボタニカル』だと私は思います。
「エビータ ボタニバイタル」は、種々の植物由来成分を配合していますが、ただ配合しているだけです。ここに技術は存在しません。一方「トリニティーライン」は、種々成分を『ナノカプセル技術』によって、角質層の奥まで浸透させます。
『浸透化技術』は非常に評価出来ます。
しかも、大正製薬の『製薬会社品質』ですから、私が最もおすすめするオールインワンジェルの一つが、『トリニティーライン ジェルクリーム プレミアム』です。
おわりに
いかがでしょうか?
特に、「カネボウ エビータ ボタニバイタル」のように、ドラッグストアなどの『セルフ市場』を主販路にするコスメは、商品の詳細をユーザーに伝えることが困難ですから、『イメージコスメ』になりがちです。
イメージコスメ自体を否定するつもりはありませんが、ユーザーが、そのコスメの『真実』を知る事が大前提です。
メーカー側が作り出す『世界観』・『演出』だけで、コスメを選ばないようご注意ください。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません