千葉市の教育委員会は、市立中に通う中学生の『校内での日焼け止めの使用』を認め、今月中にも市内全55校に通知を出すようです。
出典:<千葉市教委>「日焼け止め使用許可を」全中学に通知へ(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
この件に関しては、私も子を持つ親として賛成の立場ですが、一方で、使用を認めるのであれば、『正しい使用法の啓蒙』をして頂きたいです。
今回は、「千葉市教育委員会が校内での日焼け止め使用を認めた件」について、化粧品開発者である私の見解を述べさせて頂きます。
千葉市教委、校内での日焼け止め使用を許可
千葉市教育委員会は、市立中に通う中学生の、校内での日焼け止めの使用を許可すると、市内全55校に通知を出すことに決めました。
私が中学生の頃は、紫外線の肌(身体)に及ぼす影響について、今ほどの認識はありませんでしたから、学校で日焼け止めを使うという発想自体、考えられませんでした。
しかし現代は、紫外線と肌(身体)の研究が進んでいます。
記事中で西井医師がおっしゃっているように、紫外線は将来的な皮膚老化や皮膚ガンにつながり、この対策に『日焼け止めが有効』ということは学術的に証明されています。
また、日焼け止めは、日本では『化粧品(医薬部外品)』として扱われますが、米国やカナダ、オーストラリアでは『医薬品』として扱われます。これは各国が、より深刻に、紫外線の肌への影響を考えているということです。
ですから、研究が進んだ現代において、校内だからといって日焼け止めの使用を禁止することはナンセンスと言えるでしょう。
そのような意味で、今回の千葉市教委の決定を支持しますし、今だ、日焼け止めの使用を校則で禁止している学校があることに驚くとともに、学校側が日焼け止めの『正しい使用法』を理解し、指導しなければ、今回の素晴らしい決定が無駄に終わってしまうと危惧しています。
日焼け止めの校内での「正しい使用法」
記事中、「学校生活における紫外線対策に関する日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の統一見解」(2015年9月)」が記載されていますから、この使用法に沿って、化粧品開発者の私の見解を述べさせて頂きます。
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の統一見解(2015年9月)
【子供の時から適切な紫外線対策を行うことは生涯にわたり健やかな肌を保つために大切な生活習慣】
これはごもっともですね。日焼けした小麦色の肌が、健康的で良いという時代もあったようですが、現代では、この考えは真っ向から否定されており、適切な『紫外線対策』は必須です。
【むやみに強いSPFの日焼け止めを使わなくても、SPF15以上であれば学校生活における紫外線対策として十分】
むやみに強いSPFの日焼け止めを使わなくても良いというのは、その通りです。このブログでも再三申し上げていますが、日焼け止めの一番重要な使用法は『たっぷりな量をこまめに塗り直す』です。
紫外線防御スペック(SPF, PA)は、高ければ高い方がいいという訳ではなく、『TPO』に合わせて選ぶべきです。
「SPF 15以上」であれば十分と言うのは、ある意味正しいですが、先に述べたように紫外線防御スペックはTPOに合わせるべきですから、例えば、屋外での運動や屋外でのプールでは、「SPF 15」では不十分です。以下を目安にお選びください。
・通常の学校生活 ⇒ 「SPF 15~25, PA ++~+++」
・屋外での運動、プール ⇒ 「SPF 30~50+, PA+++~, ウォータープルーフ」
【たっぷりと均一に塗らないと効果が得られない。顔ではクリームならパール大、液なら1円玉大を2回塗りする】
これはその通りです。日焼け止めは『たっぷりの量』を塗らなければ、最大限の効果は得られません。
このブログでも過去、記事にしていますが、再度、SPF, PAがどのように測定されているかをご説明します。
詳細な条件は割愛しますが、SPF, PAは、製剤を『人の背中』に塗って測定します。
人(被験者)の背中に製剤を塗って、紫外線を照射する訳ですが、この時、『塗る量』が決まっています。
塗る量は、『1cm×1cmあたり、2mg』です。
これを『規定量』と表現させて頂きますが、日焼け止めに表示されているSPF, PAは、『規定量を塗った時の値』です。しかし、実際にユーザーが日焼け止めを塗る量は、この「規定量」に比べて『かなり少ない』です。
世のユーザーは、日焼け止めに配合の酸化チタン(紫外線散乱剤)の『白浮き』を嫌いますから、白浮きしないよう製剤を良く伸ばして使います。
これが、塗る量を少なくしている原因の一つですが、当然、塗る量が「規定量」よりも少なければ、表示SPF, PAの効果を得ることは出来ません。
これはつまり、「日焼け止めを使っているのに日焼けしてしまう」という事態を招きますから、日焼け止め製品には、『最大限の効果を得るために、たっぷりの量をこまめに塗り直してください』 といった内容の表示がされているはずです。
ですから、日焼け止めを使う際は、表示SPF, PAの効果を最大限得るために、『たっぷりの量』を塗るようにして下さい。
【効力が弱くなったり、汗で流れたりするため、2~3時間おきに重ね塗りをすると効果的】
これも非常に重要な使用法です。日焼け止めは『こまめに塗り直す』必要があります。
今の日焼け止めには、技術革新によって、「ウォータープルーフ」や「アクアブースター(資生堂)」、「フリクションプルーフ(カネボウ)」などの、様々な『耐性技術』が備わっていますが、これら技術によって、日焼け止めが崩れにくくなったのであって、崩れないという訳ではありません。
これに関しては以下記事に詳細が書かれていますから、是非ご覧ください。
<日焼け止めを塗ったのに日焼けした経験はありませんか?>
【プールの水質汚濁が懸念されるが、汚濁されないことは複数の実験で明らかになっている】
これはその通りですね。仮に水質汚濁が懸念されたとしても、紫外線によるダメージの方が深刻です。
【子供が使うのに適した日焼け止めクリーム:「無香料」「無着色」の表示があるもの】
日焼け止めを『おしゃれ』と認識している学校が多く、これが、日焼け止めの使用を禁止する校則誕生の要因となっている側面はあるでしょう。
日焼け止めは「おしゃれ」ではなく、紫外線ダメージから肌を守るための必須アイテムです。しかし世の中には、『香り』を楽しむ日焼け止めが存在します。
『香るUVスプレー』というのが典型的な例で、スプレータイプの日焼け止めに多いですね。
さすがに学校で、香料や精油の香りをまき散らすのはどうかと思いますから、校内で使う日焼け止めは『無香料』が望ましいと私も思います。
ですから、学校側も、日焼け止めの『タイプ』や『特性』をしっかり理解する必要があるでしょう。
【子供が使うのに適した日焼け止めクリーム:プールでは「ウオータープルーフ」の表示があるもの】
ウォータープルーフというのは、『水への耐性』で、水に濡れても『崩れにくい』ことを意味します。
※崩れにくい=紫外線防御効果(SPF, PA)が低下しにくい
ですから、プールではウォータープルーフタイプが望ましですが、先程も述べたように、水に濡れても『崩れにくい』のであって、『崩れないではない』ということをよく理解する必要があります。
長時間、水の中で活動した後は、『塗り直し』が必須です。
校内で使うおすすめの日焼け止めは?
学校で使うことを想定すると、以下のような条件の日焼け止めが最適だと考えます。
・SPF 30~, PA+++~, 耐水性
・紫外線吸収剤フリー
・無香料
・クリームタイプ
これらを満たし、化粧品開発者の私がおすすめする日焼け止めは、ポーラの『ホワイティシモ UVブロックミルキーフルイド』です。
吸収剤は決して危険な成分ではありませんが、子供の頃から有機化合物に触れるのに、少し抵抗がある方も多いと思うので、『紫外線吸収剤フリー』がおすすめです。
ポーラは、『紫外線散乱剤技術』には定評があります。また、「ホワイティシモ UVブロックミルキーフルイド」は、『アレルギーテスト』だけではなく、『2歳以上を対象とした幼児プラクティカルテスト』も実施していますから、お子様でも安心してお使い頂けるでしょう。
※全ての方にアレルギーが起きないというわけではありません
※すべての幼児の肌に合うというわけではありません
『無香料』でもありますから、「おしゃれ」(香り)を楽しむ要素は全くなく、紫外線ダメージから肌を守る『機能性』に特化した、校内で使うにふさわしい日焼け止めが『ポーラ ホワイティシモ UVブロックミルキーフルイド』です。
おわりに
いかがでしょうか?
今回の千葉市教育委員会の決定は、紫外線によるダメージの深刻さが叫ばれる現代において、正しい判断だと思います。
しかし一方で、日焼け止めの特性をしっかり理解しなければ、最大限の紫外線防御効果を得られなかったり、香料や精油の香りを楽しむ「おしゃれアイテム」になったりと、場合によっては学校生活に支障が出る可能性もあります。
ユーザー側は勿論ですが、学校側も、日焼け止めの特徴をよく理解し、生徒の皆さんに『正しい使用法』を指導して、校内での日焼け止めの使用が、日本全国に広がってほしいと思います。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません