先日、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメに『新基準』(統一基準)が出来ると記事にしました。
<ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準!!>
「基準」というのは、多くの化粧品メーカーが賛同して、世の中に浸透していかなければ意味がありません。しかし、この基準には法的拘束力がありませんから、賛同するかしないかは、化粧品メーカーの『自主判断』です。
で、実際のところ、今回の『新基準』は、多くの化粧品メーカーが賛同し、世の中に広く浸透していくのでしょうか?
今回はこの問題に対して、化粧品開発者の私の意見を述べさせて頂きます。
新基準の背景
何故今回、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの『新基準』が出来たのか?
簡潔にご説明します。詳細は以下記事をご覧ください。
<ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準!!>
今のコスメ市場には、ナチュラル原料はごくわずかで、多くを合成原料が占めているにもかかわらず、ごくわずかなナチュラル原料を配合しているという理由で「ナチュラルコスメ」と宣伝している『怪しいナチュラルコスメ』が当たり前のように存在します。
「怪しいナチュラルコスメ」によって、ユーザーは不利益を被りますから、このような状況は好ましいことではありません。
何故、このような状況になっているかと言うと、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメには、認証コスメを除き、ナチュラル・オーガニックの『統一された明確な基準』が存在しないからです。
「統一された明確な基準」が存在しないからこそ、化粧品メーカーの言ったもの勝ち(自主基準)になりますから、「怪しいナチュラルコスメ」が後を絶ちません。
このような状況が長く続いていましたが、このほどついに、日本化粧品工業連合会(JCIA, 日本の化粧品業界団体)が、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの基準を国際レベルで統一しようと動き出しました。
それが、今回の『新基準』(統一基準)です。
<ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準!!>
多くの化粧品会社が賛同し世の中に浸透していくか?
今回の、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメに関する『新基準』の策定は、大きな一歩であり、大変評価すべきことです。
しかし、そもそも「基準」というのは、多くのメーカーがこれに賛同し(従い)、世の中に広く浸透しなければ意味がありません。
ですから、今後のJCIA(日本の化粧品団体)の課題は、いかに多くの、そして有力な化粧品メーカーに、この基準を導入してもらえるかであり、有力(大手)化粧品メーカーが基準に従えば、その他メーカーも追随しますから、結果、多くのナチュラルコスメ・オーガニックコスメにこの基準が適用され、浸透していくのであろうと思います。
そのためには、『THREE』がキーメーカーになると私は考えています。
「THREE」は、ポーラ・オルビスグループのナチュラル・オーガニックコスメブランドです。誕生した当時は、かなり苦戦していたようですが、非常に個性的なブランドですから、徐々にユーザー支持を拡大し、今では、日本を代表するナチュラル・オーガニックコスメにまで成長しました。
また、『ポーラグループ』ということもあり、品質面での評価も高く、大変影響力のある(有力な)ナチュラル・オーガニックブランドの一つと言えます。
この「THREE」が、今回の新基準に賛同し、商品への表示に導入したら、他メーカーも追随し、浸透していくでしょう。
しかし私は、「THREE」が、今回の新基準に賛同し導入するのは『かなり厳しい』と見ています。
何故なら、「THREE」は現在、『天然由来率』を商品に表記しています。これは、「THREE」が考える天然由来の成分を、製品中何%配合しているかという指標で、「THREE」独自の『自主基準』です。
各商品の成分で天然由来率を表記したブランドは、「THREE」がはじめてと言えるかもしれません。
今回の新基準では、「植物由来」や「天然由来」という表現は使うことが出来ず、『自然指数』・『自然由来指数』・『オーガニック指数』・『オーガニック由来指数』の4つの指数表示に限定されます。
「THREE」の新基準賛同が厳しいと考えている理由は2つあります。
まず1つ目は、先に示したように、今回の新基準では「THREE」がこれまで用いてきた『天然由来』が使えません。
「THREE」は、ブランド誕生当初から「天然由来」を使ってきましたから、思い入れがあるでしょうし、何より、この表記に賛同して「THREE」ユーザーになっている方もいるでしょう。
せっかくここまでブランドを成長させ、ユーザー数を拡大してきたのに、その根底を変えるというのは、なかなか出来る事ではありません。
2つ目の理由が『数字の大小』です。
「THREE」の天然由来率を見ると、軒並み高い数字であることがお分かりになると思います(スキンケア品)。
数字の高さは、天然由来に『水』を含んでいますし、数字が高くなるよう、やや恣意的に天然由来を設定しているからです。
もし「THREE」が、今回の新基準を導入して、表記を例えば『自然由来指数』に変えた場合、確実に現在の天然由来率の数字よりも低くなります。
勿論、「数字の高さ=品質の高さ」ではありませんが、ユーザー側は、数字の大小でコスメを選びがちです。
場合によっては、新基準導入によって数字が低くなったことを、『品質・魅力・競争力の低下』にとらわれてしまいますから、このような、『ブランド価値の低下』の誤解を与えるようなことは、簡単には出来ないと思います。
これだけ「天然由来率」が浸透し、ユーザー数が拡大したにもかかわらず、「数字が小さくなる=ブランド価値の低下」につながる恐れがある新基準を導入するメリットが、「THREE」側にありませんから、私は、「THREE」が新基準に賛同し、導入することは無いと考えています。
ですから、今回の新基準の浸透はかなり厳しく、仮に浸透したとしても時間がかかるというのが、私の考えです。
おわりに
いかがでしょうか?
化粧品メーカー(企業)は、ユーザーニーズに応えながら、自社の利益を確保し、永続的に成長していかなければなりません。
そのためには、自社のブランド価値を低下させるような取り組みはすべきではありません。
そのような意味で、「THREE」をはじめとした化粧品メーカーが、『新基準』の導入に躊躇するのであれば、その気持ちはよく分かりますが、今回の『新基準』は、ユーザーにとっては大変有益です。
ですから、ユーザー目線で考えると、個人的には「THREE」や「HANA オーガニック」のような影響力のあるナチュラル・オーガニックコスメブランドが賛同し、広く浸透してほしいと思います。
新基準の詳細は以下記事をご覧ください。
