誤解が多く、怪しいコスメ分野NO.1が『ナチュラルコスメ・オーガニックコスメ』でしょう。
何故なら、このブログでも再三申し上げていますが、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメには、統一基準がなく、各化粧品メーカーが定める『自社基準』(自主基準)で運営されているからです。
ですから、ナチュラル原料はごくわずかで、多くを合成原料が占めているにもかかわらず、ごくわずかなナチュラル原料を配合しているという理由で「ナチュラル」と宣伝している『怪しいナチュラルコスメ』が当たり前のように存在します。
今回は、誤解を招く『実際の宣伝内容』をご紹介するとともに、最新のナチュラルコスメ・オーガニックコスメの『新基準』についてご説明します。
ナチュラル・オーガニックの基準は化粧品メーカーの「自社基準」
コスメは『薬機法』(旧薬事法)という法律に則っていますが、大部分は化粧品メーカーの『自社基準』で運用されています。
「安全性」に関して言えば、国は配合禁止成分や、一部成分の配合可能量を定めてはいますが、細かな配合成分基準は、化粧品メーカーの『自社基準』です。ですから、同じ成分であっても、「配合OK」としているメーカーもあれば、その成分の肌刺激性から、「配合NG」としているメーカーも存在します。
また、「配合成分の安定性」では、医薬部外品の”有効成分”は、「ある条件のもと一定量の分解を認めない」といった、『分解性(残存率)』が規定されていますから、これに従う必要がありますが、医薬部外品の”その他の成分”、及び、化粧品に配合の成分に関しては、極論を言えば、どれだけ分解しても全く問題ないのです。
「ナチュラル・オーガニックの基準」にしても、国によって定められておらず、全て化粧品メーカーの『自社基準』です。ですから、化粧品メーカーが「このコスメはナチュラル!」と自社基準で規定してしまえば、先程の例に挙げたような、ナチュラル原料はごくわずかで、多くを合成原料が占めているナチュラルコスメが誕生してしまうのです。
自社基準の背景には、2001年の『全成分表示制度の導入』が深く関わっています。
2001年、化粧品に『全成分表示制度』が導入されました。背景には、「ユーザーへ必要な情報(全成分)を提供したうえで、ユーザーニーズの多様化に対応し、より多くの選択を可能にするため」と言われていますが、いわゆる『規制緩和』というやつです。
それまでは、化粧品に配合出来る原料(成分)には制限がありましたが、様々な原料(新規原料)を化粧品に配合出来るよう規制を緩和したんですね。
そして、ここが重要ですが、規制緩和する代わりに、配合成分の全てをユーザーに公開し(全成分表示)、化粧品に関するトラブルは全て化粧品メーカーが責任を負うことになりました。
つまり、化粧品に関わる主たる責任を、『国 ⇒ 化粧品メーカー』に移行させたわけです。
全成分表示制度の導入は『配合成分の安全性』に関する事ですが、これを期に、「国 ⇒ 化粧品メーカー」へと、化粧品に関わる責任が移っていきましたから、『安定性』も『ナチュラル・オーガニック』も全て、『化粧品メーカーの責任=自社基準』なのです。
化粧品メーカーは、自社の責任の下、自社の基準を設定して、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメを販売しています。
これ自体、別に問題があるわけではありませんが、自社基準が、あまりにもユーザー視点とかけ離れていることが問題なのです。
ナチュラル原料はごくわずかで、多くを合成原料が占めているにもかかわらず、ごくわずかなナチュラル原料を配合しているという理由で「ナチュラル」と宣伝することは、ユーザーの利益につながるとは思えませんし、それをユーザーが「ナチュラル」と認めるとも思えません。
合成成分がお肌に合わないユーザーや、合成のモノは使いたくないというご自身の信念でナチュラル・オーガニックを求めるユーザー、つまり、真にナチュラルコスメ・オーガニックコスメを求めるユーザーに、これらコスメが最適だとは到底思えません。
ナチュラルコスメ・オーガニックコスメは『自社基準』のため、誤解を招く様々な宣伝文句が存在します。ですから、まず、これらコスメを選ぶにあたっては、そのメーカーの「自社基準」、つまり、『何をもってナチュラル・オーガニックなのか?』をしっかり確認し、共感を覚えたコスメを選ぶことをおすすめします。
誤解を招きやすい宣伝内容
天然由来成分〇〇%
これは、『THREE』が用いている宣伝文句ですね。「天然由来成分〇〇%」とは、その名の通り、天然由来の成分が、処方中に〇〇%占めているかを表す指標です。
注意点としては、「天然由来成分」であって「天然成分」ではないということです。
コスメに配合する原料は、石油から得られるモノや自然(天然・植物)から得られるモノに、合成などの『処理』を施す場合が多いです。
「天然成分」の場合、天然から得られるモノという意味ですから、『処理』が出来ません。つまり『合成工程』が一切ないということです。
世の中には、「天然成分」を多量配合するコスメは存在しますが、使用感や安定性など、コスメとしての品質に大きな問題があります。
「天然由来成分」ということは、石油から得られるモノではなく、自然(天然・植物)から得られるモノ、及び、自然から得られるモノを『処理したモノ』という意味です。
ですから、「天然由来成分」には『合成工程』は含まれます。
また、「天然由来成分」には『水』も含まれます。スキンケア品は水の配合量が多いですから、「THREE」のアイテムの天然由来成分の%を見ると、非常に高い数字ですし、スキンケア品よりも水の配合量が少ないメイク品は、やや数字が小さいのがお分かりになると思います。
つまり、一部アイテムを除き、天然由来成分の大部分を占めているのが水なのです。
「THREE」の、天然と言いながら『合成工程』を含む点、天然由来成分の%に『水』を含む点に関して、賛否両論あるのは事実ですが、私自身は、「THREE」の場合、自社の考え方をホームページでしっかり発信していますし、「天然成分ではなく天然由来成分」ですから、大きな問題はないと考えています。
むしろ「THREE」は、大好きなナチュラル・オーガニックコスメブランドの一つです。
THREE スリー バランシング クレンジング オイル200ml
植物由来成分〇〇%
この表現もよく見ます。この場合、天然由来成分の考え方と非常に近いです。
成分の由来は『植物』に限定されますが、『合成工程』は含まれます。
ただし、『水』に関しては、含む場合と含まない場合があり、注釈で、「水を含む」といった記載がある場合が多いです。
天然成分〇〇%
この場合は、正真正銘の『天然物』です。『水』は含みますが、一切の『合成工程』は含まれません。
しかし、先程も述べたように、天然成分〇〇%で高い数字を宣伝するコスメは、使用感や安定性といった、『コスメの品質』に大きな問題があります。
だからこそ、『合成工程』によって、コスメの品質に耐えられる成分(天然由来成分)を用いるのです。
「天然成分」を多量に配合したコスメと、「天然由来成分」を多量に配合したコスメでは、品質(使用感・安定性)が全く異なります。圧倒的に、「天然由来成分」を多量に用いた方が、品質は優れます。
コスメは快適に、長く使い続けて頂くモノですから、私は「天然成分〇〇%」よりも、THREEのような『天然由来成分〇〇%』のコスメをおすすめします。
〇〇%の美容成分配合
この表現もよく見ますね。この表現の場合、「95%の美容成分配合」など、%が非常に高いのが特徴です。
これは、美容成分に『水』を含んでいるため、このような高い数字が可能なんです。
また、美容成分と聞くと、植物エキスなど、天然由来の成分のイメージが強いですが、この美容成分には『1-3BG』も含みます。「1-3BG」には、石油由来と天然由来の2種が存在しますから、「〇〇%の美容成分配合」という表現は、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメにのみ使われる表現でないという点はご注意ください。
ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準
他にも様々な宣伝文句が存在します。誤解を招きやすい宣伝文句が多数存在する一番の理由は、何度も申し上げているように、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメには、統一基準がなく各化粧品メーカーの『自社基準』だからです。
『誤解』によって、ユーザーは時に不利益を被りますから、このような状況は好ましい事ではありません。
そこで、日本化粧品工業連合会(JCIA, 日本の化粧品業界団体)は、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの基準を世界レベルで統一しようと動き出し、このほど『新基準(統一基準)』を発表しました。
この『新基準』については、まだまだ課題はありますが、基準がないナチュラルコスメ・オーガニックコスメ分野の『大きな一歩』であると、私は高く評価しています。
『新基準』については、以下記事をご覧ください。この新基準では、従来よく見られる「天然(由来)成分」や「植物(由来)成分」という表現は認められておらず、『自然(由来)成分』・『オーガニック(由来)成分』に限定されます。
<ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準>
おわりに
いかがでしょうか?
誤解しやすい表現が多く並ぶ、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメですが、この状況は好ましくないと判断し、このほど『新基準(統一基準)』が発表されました。
ただし、上記記事をご覧頂ければお分かりになりますが、この『新基準』には法的拘束力がありませんから、新基準が浸透するかしないかは、まだ分かりません。
浸透するには、まだまだ時間がかかると思いますし、全てのナチュラルコスメ・オーガニックコスメが、この基準に従うとも思えません。
ですから、誤解を招きやすい宣伝文句が多い分野のため、ナチュラルコスメ・オーガニックコスメを選ぶ際は、そのメーカーの考え方をしっかり確認して、納得(共感)してからお使いになるようにして下さい。
<ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの新基準>
