今話題のコスメの一つが『DHC スーパーコラーゲン』です。
以前から有名なコスメではありますが、「スーパーコラーゲン」のTV-CMが開始され、その宣伝内容がすごいので、多くの方の興味を引いているのではないでしょうか?
しかし、この「スーパーコラーゲン」、本当に『スーパー』なのでしょうか?
そこで今回は、『DHC スーパーコラーゲンの真実』と題しまして、化粧品開発者の目で、「スーパーコラーゲン」に隠された真実を暴きたいと思います。
DHC スーパーコラーゲンとは?
『DHC スーパーコラーゲン』は、特許取得したDHC独自の『コラーゲン』を配合し、シリーズ総販売数『100万個突破』を誇る、人気シリーズです。
『コラーゲンコスメ』と言えば、真っ先に名前が挙がる商品の一つです。
あくまでDHCが発表している、スーパーコラーゲンの特長を以下に記します。
【スーパーコラーゲン開発の背景】
従来のコラーゲンは分⼦量が⼤きく、角層に留まり潤いを⽣み出すはたらきをしていました。しかし、弾⼒や潤いの ある若々しい肌を保つためには、真⽪層のコラーゲン量が重要です。真⽪層の細胞は外側からコラーゲンを与えることで 新しい肌コラーゲンを再⽣することが知られているため、コラーゲンを真⽪層まで浸透させることが研究課題でした。 そのような中、DHCは約8年間に及ぶ研究により、真⽪層へ届く世界最小の「スーパーコラーゲン」の開発に成功。 さらに、従来のコラーゲンは純度が低く、肌へ有効な部分がわずか1.36%しかなかったのに対し、「スーパー コラーゲン」は肌コラーゲンの再⽣に有効な成分だけを集めた純度100%を実現しました。
※ DHC NEWS RELEASEより抜粋
【スーパーコラーゲンの全成分名】
ジペプチド-8
「スーパーコラーゲン」の特徴は、純度100%は勿論ですが、一番は、世界最小レベルの大きさのため、『真皮まで届く』ということですね。テレビCMでも「ただひとつ、真皮層まで届くコラーゲン」と大々的に宣伝しています。
これら特徴は、嘘偽りのない『事実』であることは間違いありませんが、化粧品開発者の私の目から見れば、『怪しい点満載』です。
次項では、「DHC スーパーコラーゲン」の隠された真実を暴きたいと思います。
※ あくまで、私の見解です
DHC スーパーコラーゲンの真実
そもそもコラーゲンなのか?
コラーゲンは、肌の奥『真皮』にて、たっぷりの水分を抱え込みながら『肌のハリ』を支えています。乾燥した真皮の重量の『約70%』がコラーゲンとも言われるくらい、コラーゲンは、若々しくハリのあるお肌を維持するために重要な成分です。
コラーゲンは、どんな『成分』か?
コラーゲンは、線維状の『タンパク質』です。
では『タンパク質』とは?
「タンパク質」は、アミノ酸が鎖状に結合した物質で(ペプチド結合)、通常、100個以上のアミノ酸(1万以上の場合もある)が結合した『巨大分子』です。
ですから、線維状のタンパク質である「コラーゲン」も『巨大分子』となり、当然、肌の奥には浸透しません。
肌に浸透させるために、分子を小さくした『加水分解コラーゲン』というものもありますが、真皮にまでは浸透しません。せいぜい角質層の上の方までしか浸透しないでしょう。
では、「DHC スーパーコラーゲン」はどうか?
『世界最小のコラーゲン』とありますが、その成分の正体は『ジペプチド-8』です。
『ジペプチド-8』って、これはコラーゲンではありません!
『ペプチド』とは、2個以上のアミノ酸が結合(ペプチド結合)した物質です。
アミノ酸が2個なら『ジペプチド』、3個なら『トリペプチド』、4個なら『テトラペプチド』と言い、2~10個程度の少数なら『オリゴペプチド』、10~100個と多数なら『ポリペプチド』とも言ったりします。
「DHC スーパーコラーゲン」は『ジペプチド』です。これはつまり、『アミノ酸2個』ということです。100個以上のアミノ酸が結合したタンパク質である「コラーゲン」とは全く違います。
この成分自体は、DHC独自のモノで、特許取得済ということですから、素晴らしいです。否定はしません。
しかし、後ほど述べますが、これを「スーパーコラーゲン」と言う表現方法や、その他の宣伝内容に『大変な違和感』を覚えます。
まずは、ユーザーの皆様に、『真実』を知って頂きたいと思います。
怪しい表現内容が多すぎる!
DHCは、「薬用ディープクレンジングオイル」や「オリーブバージンオイル」など、魅力的な商品を多く取り揃えており、今や通販業界最大手にまで成長しました。
これは、ユーザーから、商品の良さを認めてもらった証拠であり、素晴らしい実績です。
しかし、商品は良いが、その宣伝手法には、昔から賛否両論があり、私自身は、DHCの一部の宣伝手法は支持できません。
有名なのが、2000年初頭にDHCが行ったテレビCMです。当時、テレビCMで「◯◯日本一」とか「◯◯No.1」などを連呼していました。
そもそも「No.1」や「日本一」といった表現は禁止されており、まして、テレビCMであれほど頻繁に連呼されれば、ユーザーにとっては深く印象に残るものの、他の化粧品メーカーはたまったもんじゃありません。
明らかな『ルール違反』であり、このグレーとも思われる(限りなくクロに近いグレー)宣伝手法は、当時、かなり非難されたと記憶しています。
今回の「DHC スーパーコラーゲン」でも、かなり『怪しい表現』が多数見受けられます。
まず第一に、先程も述べたように、「スーパーコラーゲン」は『コラーゲンではない』ということです。『ジペプチド』ですから、コラーゲンには程遠い成分です。しかも、それに『スーパー』をつけるとは・・・考えられません。
「スーパー」で有名な成分に、『スーパーヒアルロン酸』があります。この正体は『アセチル化ヒアルロン酸Na』で、『資生堂』が開発した、従来のヒアルロン酸Naの『約2倍』の保水能を有します。
従来の2倍の保水能ですから、『スーパー』と名がつくのも納得できます。
しかし、DHCの場合は全く違います。コラーゲンと言うには無理がある成分に、さらに『スーパー』の冠をつけているわけですから、資生堂と比べれば技術水準が低すぎると言わざる得ません。
極めつけが、『真皮まで届く』と、テレビCMで堂々と言っている事です。
「えっ!いいの?」と思ったユーザーは多いはずです。
何故なら、化粧品の浸透に関する効果効能表現は、『角質層(角層)まで』と決まっており、真皮までの浸透は表現出来ません。
ただし、このケースは、NGではありません。DHCは、「製剤が真皮まで届く」と言っているわけでなく、「スーパーコラーゲン(ジペプチド-8)が真皮まで届く」と言っているため、成分に関する表現であれば、それが真実であれば、可能なんです。
ですが、いかにも「製剤(商品)が真皮にまで届く」的な表現なので、いくら問題ないと言っても、化粧品開発者としては、『優良誤認』になりかねないこれら表現内容を支持するわけにはいきません。
このように、「DHC スーパーコラーゲン」には、『明らかに出来ない真実』があるのです。
「スーパーコラーゲン」は、アミノ酸2個が結合した『ジペプチド』であるのに、それを『コラーゲン』と堂々と言っており、さらに『スーパー』の冠を付けている点。
そして、真皮にまで届くという表現を、あたかも製剤(商品)にまで『拡大解釈』した宣伝内容。
勿論、「スーパーコラーゲン(ジペプチド-8)」の『保湿効果』は期待出来ると思いますし、製剤の感触自体は悪くないので、「DHC スーパーコラーゲンシリーズ」の全てを否定するつもりはありません。認めるところは認めています。
ですが、DHCは、今や化粧品業界のトップメーカーの一つです。影響力もあります。このようなメーカーが、ユーザーの不利益につながる『優良誤認』になりかねない表現(宣伝)をすることは残念でなりません。
自社の売り上げ、利益優先ではなく、『ユーザー第一』で、企業活動に取り組んで頂きたいです。
コラーゲンコスメに重要なこと
『コラーゲン』は、若々しくハリのあるお肌を維持するための必須成分です。ですから、コスメには様々なコラーゲンが配合されています。しかし、先程も述べたように、通常のコラーゲンは『巨大分子』のため、肌への浸透は難しく、まして肌の奥『真皮』にまで浸透するなんてあり得ません。
分子量の小さい『加水分解コラーゲン』なら、多少の浸透性はあるかもしれませんが、真皮にまで到達して肌のハリに寄与するなんて考えられません。
DHCは、「外側からコラーゲンを与えることで 新しい肌コラーゲンを再⽣する」と言っています。確かに、テトラペプチドが最適なコラーゲン線維を形成するという報告はありますが、「外側からコラーゲンを与えること自体、無理な話では?」というのが正直な感想です。
※ Fragrance Journal, 36(3), 50-56(2008)
コラーゲンは肌のハリのために重要な成分ですが、巨大すぎて、外から届けるには無理があります。ですから、外から届けるのではなく内から、つまり、肌内部、真皮の『線維芽細胞』に働きかけて線維芽細胞を活性化し、『コラーゲン生成を促進させる』ことが重要なのです。
『外』からでなく『内』から。これが、コラーゲンに対する『最も適切な考え方』ではないでしょうか。
敏感肌ブランド『ディセンシア』には、独自成分の『CVアルギネート』が配合されています。海藻由来のオリジナル成分である「CVアルギネート」は、『線維芽細胞を活性化』し、コラーゲン産生量を『170%アップ』する効果が期待出来ます。
私としては、巨大分子のコラーゲンを『外側』から与えることは難しいので、ディセンシアの「CVアルギネート」のように、線維芽細胞を活性化し、肌内部、『内側』からコラーゲンを増やすことが出来る成分をおすすめしますし、内側から増やすことが『正しいコラーゲンケア』だと考えています。
<CVアルギネート配合コスメ「ディセンシア アヤナス」>
おわりに
いかがでしょうか?
今回のDHCの件では、『宣伝戦略』と言ってしまえばそれまでです。怪しい点はありますが、嘘偽りではなく、「ジペプチド=コラーゲン」と言うのも、『解釈の違い』と言うことも出来るでしょう。
ただし、中小の、あまり知らないようなメーカーがやるならまだしも、DHCのような巨大な化粧品メーカーがやるようなことではないと思います。
DHCは、影響力もありますし、商品自体の品質も素晴らしいので、『優良誤認』になりかねない、ここまで大胆な宣伝をする必要があるのか、疑問であり、理解できません。
コスメを選ぶのは、ユーザーの皆様の自由です。『真実』を知り、商品の特長をよく理解したうえで、納得してお選びください。
※ 本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません