コスメの疑問&誤解

<プロ解説>「カルボマー」 いわゆる「増粘剤」はコスメに必要か?

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化粧品、とりわけスキンケア品は、『水』『油』『界面活性剤』で乳化させています(乳化物に限る)。

ですから、これらは化粧品の『主要成分』と言えますが、その他にも様々な成分から構成されているのが化粧品です。

その一つに、カルボマーに代表される『増粘剤』があります。

今回は、増粘剤は化粧品に必要なのか? どのような役割を果たしているのか?についてご説明いたします。

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増粘剤とは?

カルボマー・カルボキシビニルポリマー・増粘剤

増粘剤と言えば、『カルボキシビニルポリマー(カルボマー)』が有名ですね。

乳化タイプの乳液やクリームであれば必ずと言っていいほど配合されている成分です。

一度、ご自身がお使いの化粧品の全成分を確認してみてください。かなり高い確率で配合されていると思います。

増粘剤は、読んで字のごとく、化粧品に『粘性を持たせる(増粘させる)』ために配合します。

食品で言えば、『水溶き片栗粉』の役割ですね。化粧品にとろみ(粘性)をつけるのが増粘剤です。

化粧品にとって増粘剤は『必須成分』です。

では、何故、化粧品に増粘剤を配合して、粘性を持たせなければならないのでしょうか?

増粘剤の役割は?

増粘剤には、非常に重要な役割が『3つ』あります。

化粧品の『安定性』を向上させる

乳化物である乳液は、安定性が悪い(安定性が不安定)と、水と油に分かれてしまいます。

これを『分離』と言います。

分離したものは、乳液としての機能を喪失していますから、メーカーは多大な費用をかけて市場回収しますし、せっかくお金を出して購入してくれたユーザーに対する裏切り行為ですから、ユーザーの信用も失います。

ですから、安定性が不安定なものを発売することは、絶対に許されないことなので、化粧品メーカーは、安定性を向上させる、言い換えれば、化粧品の補償期間である、製造後3年間、安定性を維持させるために様々な策を講じます。

その一つが『増粘剤の配合』です。

乳化物の安定性に影響する因子は、温度水と油の配合比率など様々ですが、『粘性(粘度)』も重要な因子です。

粘性がないモノ、粘性が低いものは、分離しやすい傾向にあります。

ですから、『分離を防ぎ、化粧品としての性状を保つ』ために、増粘剤を配合して粘性を持たせているのです。

『使用感』を演出する

例えば、『保湿化粧水』の場合、「シャバシャバ」のモノか、「とろみ」のあるモノ、どちらをお選びになりますか?

「シャバシャバ」よりも「とろみ」があった方が、保湿効果が高そうな気がしませんか?

このように、『保湿』など、ブランドコンセプトを、ユーザーに伝えるために、『使用感を演する』目的で増粘剤を配合します。

『使用性』を向上させる

シャバシャバの化粧水やオイルクレンジングは、手から流れ落ちたり、顔に塗っている時に垂れたり、メイク汚れと馴染みにくかったりと、使用性に難があります。

少しとろみをつけることで、使用性がぐっと向上します。

このように、ユーザーに快適に使っていただくために、『使用性を向上させる』目的で増粘剤は配合されます。

増粘剤の種類は?

増粘剤には『水系(水に溶ける)』『油系(油に溶ける)』があります。

それぞれ、代表的な増粘剤をご紹介します。

水系の増粘剤

【カルボキシビニルポリマー(カルボマー)】

化粧水、乳液、クリームと、多くのアイテムに配合されている水系の増粘剤です。

皆様にとっても一番馴染みのある増粘剤ではないでしょうか?

カルボマーがこれだけ多くのアイテムに配合される理由は、『増粘能力の高さ』にあります。

ごく少量で粘性を持たせることが出来ます。

そして『使用感』

カルボマーを配合しても使用感にほとんど影響しません。

その他、水系の増粘剤に『キサンタンガム』がありますが(後ほど説明します)、キサンタンガムは若干べたつくので、粘性を持たせるほど多量に配合出来ません。

キサンタンガムの配合は、『べたつき・ヌルツキ』につながりますが、カルボマーはほとんど使用感に影響を与えませんから、好んで配合されるわけです。

『(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー』 というのもカルボマーの一種で(アルキル変性カルボマーとも言います)、化粧品によく配合されます。

『増粘能力の高さ』『使用感の良さ』が、カルボマーの特徴(メリット)ですが、一つ大きなデメリットがあります。

それは、塩化ナトリウム(塩)や一部のビタミンC誘導体など、いわゆる『電解質』が存在すると、粘性を持たせることが出来ません(シャバシャバになります)。

化粧品にはこれら電解質を配合する場合がありますから、そのようなケースでは、カルボマーを配合できません(配合しても粘性を持たせられません)。

その場合は、次にご説明するキサンタンガムを用います。

【キサンタンガム】

キサンタンガムは、カルボマーよりもずっと前から化粧品に用いられている増粘剤です。

キサンタンガムは『多糖類』の一種なので、べたつきます。
※砂糖を思い浮かべてください。砂糖水はべたつきますよね?これと同じです。

増粘能力があまり高くないので、たくさんとろみをつけようと多量配合すると、使用感に悪影響が出ます。べたべたヌメヌメです・・・。

ですが、少しのとろみをつけるには有効なので、化粧水によく配合されます。

増粘能力が高く、使用感にも優れたカルボマーの登場で、昔に比べ、使用頻度は激減しました。

しかし、先ほどご説明したように、カルボマーは電解質に弱いので、電解質が配合されるケースではキサンタンガムが用いられます。

このように、化粧品には、水系の増粘剤として『カルボマー』『キサンタンガム』がよく用いられます。この他に『寒天』『セルロース誘導体』もありますが、カルボマー、キサンタンガムに比べ、使用頻度は低いです。

油溶性の増粘剤

一番有名で、一番用いられる油溶性の増粘剤は、パルミチン酸デキストリンや(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンといった、『デキストリン系』の増粘剤です。

『リップグロス』には必ずと言っていいほど配合されています。

水系の増粘剤の場合、増粘させる対象物は『水』ですが、油系の場合は、『様々な油』が増粘の対象になります。

ですから、どのような油を増粘させるかで、増粘剤の種類が変わってきます。

先ほどの例であれば、リップグロスには、「ツヤのある油」を多量に配合しますから、ツヤのある油にはデキストリン系が適しているというわけです。

使用性向上のために、オイルクレンジングにも配合されますね。デキストリン系は勿論、『ステアリン酸イヌリン』という油溶性の増粘剤も用いられます。

▼ ステアリン酸イヌリン配合 オイルクレンジング

オイルクレンジングにとろみを持たせることで、メイク汚れとの馴染みをアップさせ、垂れないよう使用性を向上させています。

油溶性の増粘剤は、水系に比べれば歴史は浅いです。昔はグロスやオイルクレンジングなんて存在しませんでしたから。

油溶性増粘剤の登場によって、リップグロスが誕生し、オイルクレンジングの使用性が大幅に改善されました。

おわりに

いかがでしょうか?

増粘剤についてお分かりになりましたでしょうか?

全成分表示を見ると、多くの成分が記載されていますね。

化粧品には数多くの成分が配合されていますが、何一つ、無意味な成分はありません。

増粘剤であれば、『安定性の向上』『使用感の演出』『使用性の向上』のように、配合には必ず意味があります。

少しずつではありますが、このブログでも、化粧品成分の配合意味を記事にしてお届けしたいと思います。

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