近年、『乾燥による小じわを目立たなくする(効能評価試験済)』という内容を、商品周りやホームページに表示して、宣伝している化粧品を多く見ます。
今回は、この表示はどういうことなのか? この表示がある化粧品は優れているのか? 買うべきか?について、私の見解を述べさせていただきます。
シワに対する効果効能表現について
これまで日本では、『シワに効く』とか『シワが目立たなくなる』といった表現を化粧品にすることは出来ませんでした。
『シワ』に対する効果効能表現が認められていなかったのです。
※メイクアップ効果の場合は認められています。
『シミ』に対しては違います。美白の医薬部外品があるように、効果が認められた有効成分を、決められた量配合すれば『メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ』という表現が出来ます。
シワに対して改善効果のある化粧品は、ユーザーニーズが高く、現に、欧米ではシワ改善効果を化粧品に表示し、販売することが認められています。
このような背景から、業界団体(日本化粧品工業連合会)が、かねてより厚生労働省に要望し、2011年、『乾燥による小ジワを目立たなくする』という表現を、化粧品に表示し販売することが可能となったのです。
この表現を化粧品に表示したり宣伝する場合は、「化粧品機能評価法ガイドライン」に基づく試験、もしくは、これと同等以上の試験を、化粧品メーカーの責任において実施し、その効果を確認したうえで、試験を行なったことを製品に表記(効能評価試験済み)しなければなりません。
さらに、ユーザーから問い合わせがあった場合、データを提示して効果の根拠を説明する必要があります。
以上は『化粧品』の場合です。
このように化粧品の場合は、決められた試験を実施し、効果が確認されれば、『乾燥による小じわを目立たなくする』と、シワに対する効果効能表現を、商品周りやホームページなどで出来るようになりました。
では、『医薬部外品(薬用化粧品)』はどうでしょうか?
美白の医薬部外品のように、『シミ』に対する有効成分は存在しますが(アルブチンやビタミンC誘導体など)、『シワに対する有効成分』は長らく存在しませんでした。
そんな中、ポーラから、シワに対する有効成分が開発され、2017年1月、日本初のシワを改善する医薬部外品『リンクルショット メディカル セラム』が発売されました
ここで注意しないといけないのは、化粧品の、「乾燥による小じわを目立たなくする」表記は、『乾燥による小じわ』しか対応していないという点です。
シワの要因は、乾燥や紫外線、加齢と様々ですが、化粧品の場合は『乾燥によるシワ』しか対象ではありません。
一方、医薬部外品の場合は、乾燥・紫外線・加齢が原因とされる、『総合的なシワ』に対し有効であると表現することが出来るのです。
また、化粧品の、乾燥によるシワの場合は、効果効能試験さえすれば良いので、どのメーカーでも、どの商品でも、試験さえクリアすれば表示可能です。
しかし医薬部外品の場合は、シワの有効成分はポーラが開発したものなので、どのメーカーも真似できるわけでなく、この有効成分を配合したポーラの商品のみ、総合的なシワ(乾燥、紫外線、加齢)に対する改善効果を表示出来るのです。
「乾燥による小じわを目立たなくする」表示はすごいこと?
医薬部外品の、シワの有効成分はすごいことです。
では、化粧品の、「乾燥による小じわを目立たなくする」表示はすごいことでしょうか?
確かに、乾燥による小じわに有効であると、科学的に証明された商品ですからすごいはすごいです。
しかし、「絶対にこの表示がある化粧品を選ぶべき!」、「この表示がある化粧品の方が、ないものよりも優れている!」というわけではないと私は考えます。
乾燥による小じわ対応ですから、この表示のある化粧品は『保湿』に優れます。
世の中には、表示はしていないが、もし試験を実施したら、乾燥による小じわに対し改善効果が認められるであろう保湿化粧品がたくさん存在しているのです。
実は、「乾燥による小じわ~」表示をするための効果効能試験には、かなりのお金と時間がかかります。この試験に充てるお金があるのなら宣伝費にまわすとか、発売スケジュールから試験をする時間がないといったケースでは、試験を実施しません。
商品を開発する際、「乾燥による小じわ~」表示が、差別化につながる、宣伝効果になると判断したら、お金と時間をかけて試験を実施するのです。
ですから、この表示がある化粧品だけが特別というわけではないのです。
ただし、乾燥による小じわに対する改善効果が科学的に認められたわけですから、乾燥による小じわにお悩みのユーザーであれば、安心してお使いいただけると思います。
「乾燥による小じわを目立たなくする」表示のためにすることは?
もし、「乾燥による小じわ~」表示をするという商品の企画が立ち上がったら、製剤化担当者はどうするのでしょうか?
実は、対応策はありません。
『この成分をこれだけ配合したら、乾燥による小じわの効果効能試験をクリアする』という明確な対策がないのです。
なので、担当者は、「乾燥による」ですから、『保湿に注力』して製剤化をするしか方法がありません。
この試験は、クリアするための明確な対応策がありませんから、絶対にクリアするというわけではなく、保湿に注力して開発しても、「試験をクリア出来なかった」「再試験するにしても、お金と時間がない」「表示をあきらめる」というケースはあります。
全てとは言いませんが、ある程度は『運次第』と言えるのが、乾燥による小じわ試験です。
おわりに
いかがでしょうか?
「乾燥による小じわを目立たなくする」表示について、お分かりになりましたでしょうか?
この表示がある商品は、乾燥による小じわに対して有効であると、科学的に証明されています。そのような意味で、優秀とは言えますが、ご説明した通り、世の中には効果があるが表示していない(試験をしていない)化粧品はたくさんあるので、この表示を、化粧品を選ぶ際の最重要項目とはせず、一つの目安程度に考えて頂くのがいいと思います。
▼ 「乾燥による小じわ~」表示がなくても優れたエイジングケア化粧品はあります, 記事と合わせてご覧ください