最近は、オーガニックブームで、『精油』配合の化粧品も増えてきました。
皆様も一度はお使いになったことがあるのではないでしょうか?
精油はものすごくいい香りがするので、ユーザーにとっては心地よいかもしれませんが、実は、化粧品会社にとっては大変悩ましい存在で、化粧品会社泣かせなのです。
今回は、精油にまつわる化粧品会社の苦労をお伝えします。
精油とは
『エッセンシャルオイル』とも言います。
『精油(エッセンシャルオイル)』とは、植物の花や皮、樹皮、葉などから抽出した『天然の揮発性オイル』のことを言います。
水に溶けにくいなど、油に似た性質のため、『オイル』と言ってますが、正確にはオイルではなく、『芳香物質(香料)』です。
1滴(0.05ml)のバラの精油を抽出するには約50本のバラの花が必要です。
ですから、精油は、『非常に貴重で高価な天然の香料』なのです。
精油には主に2つの効果があります。
【効果1】鎮静、ホルモン調整、安眠、リラックスなど、『身体に対する効果』
【効果2】殺菌、抗菌、虫よけなど、『菌や虫に対する効果』
ただし、化粧品は『嗜好品』でもあるので、「天然精油で香りをつけた」という『付加価値付け』で精油を用いることが多いのが現実です。
オーガニックや自然派ブームに乗って精油のイメージは大変良いですから。
しかし、ユーザーにとっては良くても、化粧品会社にとっては頭が痛い成分なのです。
精油を配合するうえで大変なこと
私も化粧品会社にいる時は、数多くの精油を扱い、精油配合商品を開発してきました。
精油を化粧品に配合するうえで大変なことを以下に記します。
① 原価(原料価格)が高い
前述した通り、精油は非常に貴重なので、原価がびっくりするくらい高いです。
化粧品を開発する際は、「このくらいの原価で製剤化しなさい」と、指示が出ます。
その原価内におさまるように、製剤化します。
精油の配合量はそれほど多くありませんから、原価が高くとも、トータルでオーバーすることはあまりありませんが、配合量が多い場合は、簡単にオーバーしてしまうので、油やその他のエキス類でトータル原価を調整します。
② 香りのロットブレがすさまじい
これが一番の課題で、精油が、化粧品会社泣かせの理由です。
精油は原料会社から購入しますが、例えば、今購入したものと、数ヶ月後に購入したものでは、精油のもと(植物の花など)は同じでも、抽出した時期が異なりますよね。
このように、原材料は、製造(抽出)するごとに『ロット』という名称で管理します。
原料ソースが同じでも、製造時期(抽出時期)が異なればロットも異なります。
同じ原料で、同じ工程で製造しても、ロットが違えば、性質は異なります。
これを『ロットブレ』と言います。
ロットブレは精油だけでなく、油や界面活性剤、植物エキスなど全ての化粧品原料にあります。
例えば、界面活性剤の場合は、ロットブレによって、これまで何の問題もなく製造できていた乳液が、いきなり製造できなくなった!ということはよく起こりえます。
精油の場合は、ロットブレがすさまじいです。同じ原料なのに、抽出時期が違うと香りが全く違います。さらに、産地によっても違いがあります。
精油のロットブレにより、『全く香りが異なる製品』が出来てしまうのです。
これはつまり、『同じ品質の商品を継続的に製造出来ない』ことになり、リピーターのお客様から、「以前購入した商品と香りが全く違う」とのクレームを頂いてしまうのです。
ただし、精油のロットブレ対策として、商品周りに、「天然精油で賦香(香り付け)しているため、収穫時期により香りに違いがあるかもしれませんが、品質に問題ありません」という『デメリット表示』をする場合が多いです。
また、精油を好んでお使いのお客様は、オーガニックや自然派化粧品に詳しく、理解がある方なので、「天然であれば香りは異なる」という認識をお持ちで、クレームにはならない可能性はあります。
ですが、ある程度名前が知れて、規模が大きい化粧品会社には、『安定品質を継続的に製造する』というプライドがありますから、精油のロットブレ対策には必死なのです。
1種類の精油だけで賦香すると、ブレた時に対処できないので、複数の精油をブレンドして配合することがほとんどです。
こうすれば、万一ロットブレが起こっても、他の精油で調整して、本来の香りに近づけることができますからね。
おわりに
いかがでしょうか?
ユーザーに支持される精油ではありますが、化粧品会社にとっては、大変厄介な成分なのです。
特に『安定品質を継続的に製造してお客様にお届けする』をモットーにしている大手化粧品会社にとって、精油のロットブレ対策は必須です。
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