育毛剤には、様々な『有効成分』があります。
各メーカーは、「処方への配合」や「商品コンセプト」から、数ある有効成分の中から選定し、育毛剤として販売しています。
育毛剤の有効成分の一つに、「エチニルエストラジオール」という『女性ホルモン』があります。この成分を配合した育毛剤は、あまり多くはありませんし、「女性ホルモン=危険?」という風潮が強いのも事実。
そこで今回は、「女性ホルモン配合の育毛剤は効果があるのか?おすすめなのか?危険なのか?」などを、化粧品開発者の私がご説明します。
育毛剤の有効成分
育毛剤の有効成分には様々な種類がありますが、作用機序(育毛メカニズム)によって大きく4つに分けられます。
ヘアサイクル(毛周期)を整える
髪の毛は、「成長期」・「退行期」・「休止期」というサイクルを形成しています。これを『毛周期』と言いますが、例えば、「休止期」の頭髪が増加すると、毛の再生と脱毛のバランスが崩れ、髪の毛が減少します。
ですから、毛周期全体を管理し、「成長期」・「退行期」・「休止期」のバランスを保つことは重要であり、有効成分「感光素301(タカナール)」には、その効果が期待できます。
頭皮環境を整える
炎症箇所は毛が抜けやすいため、頭皮の炎症を抑えることは育毛にとって重要です。有効成分「酢酸トコフェロール」や「グリチルリチン酸2K」に、抗炎症効果が期待できます。
また、頭皮も肌と同じで、『保湿』が重要。頭皮が乾燥していると、毛が育ちにくくなるため、十分なうるおいを頭皮に与えることは育毛の基本です。有効成分「パンテトニルエチルエーテル」や「センブリエキス」などに効果が期待できます。
毛母細胞の細胞増殖を促進させる
毛髪を作り出す細胞が『毛母細胞』です。毛髪の発生と成長をつかさどる「毛乳頭」から指令を受け、『毛母細胞』は盛んに細胞分裂を行い、毛髪を作り出します。
ですから、「毛母細胞」の細胞増殖を促進させることは非常に重要で、血行を促進させて、「毛母細胞」に細胞増殖に必要な栄養を送ったり、「毛乳頭細胞」に直接働きかけて、「毛母細胞」を増殖させる発毛促進因子を産生させたりします。
血行促進としては「HClピリドキシン」、発毛促進因子を産生させる有効成分には「アデノシン」などがあります。
男性ホルモンを抑える
「5αリダクターゼ」という脱毛酵素が『男性ホルモン』と結合すると、『DHT(ジヒドロテストステロン)』という脱毛を促すホルモンに変化します。この「DHT」が毛周期を乱れさせ、脱毛が引き起こされます。
ですから「DHT」の元を絶つ、つまり、男性ホルモンを抑制することが育毛には効果的です。
そして、この効果が期待できる有効成分が、今回の記事の主役である「エチニルエストラジオール」などの『女性ホルモン』です。
育毛剤に配合の「女性ホルモン」は危険か?
育毛剤に配合される女性ホルモン「エチニルエストラジオール」は、癌治療にも用いられる成分であり、女性ホルモンを皮膚(頭皮)から取り入れることで、一時的に、体内の女性ホルモン量が増加し、ホルモンバランスが崩れるなど、効果は期待できるものの、『安全性(副作用)』を心配する声が多いです。
実際、私が所属していた大手化粧品会社では、「エチニルエストラジオール」は安全性の観点から配合禁止(自社基準)でしたから、私自身、この成分を扱った経験がありません。
私も、コスメ(医薬部外品含む)は安全であることが大前提ですから、「エチニルエストラジオール」配合の育毛剤には否定的です。
ただし一方で、「エチニルエストラジオール」は育毛剤に配合可能な有効成分ですから、『国が認めている』という事実があります。もし、安全性に重篤な課題がある成分であれば、そもそも国は配合を認めません。
また、癌治療に用いられるといっても、医療で用いられる量は、育毛剤に配合のそれとは比較にならないでしょう。
ですから、単純に、「女性ホルモン=危険」と考えるのは間違いかもしれません。
最終的にはユーザーの判断になりますが、「女性ホルモン」配合の育毛剤について例を挙げると、製薬会社として有名な『持田製薬』は、1991年に女性ホルモン「エチニルエストラジオール」を配合した薬用育毛剤を発売しています。それから22年後の2013年8月にはリニューアルしていますが、「エチニルエストラジオール」は配合したままです。
つまり、製薬会社である持田製薬は、『25年間』にわたり、女性ホルモン「エチニルエストラジオール」を配合した育毛剤を販売し続けています。
もし、「エチニルエストラジオール」が本当に危険な成分であれば、25年もの販売実績はあり得ませんし、わけのわからないメーカーならまだしも、製薬会社である『持田製薬』が研究に研究を重ね、「エチニルエストラジオール」の効果と安全性(用量を守った上での)に問題なしと判断した結果ですから、単純に「女性ホルモン=危険」と考えるのはどうかとも思います。
実際、持田製薬は、「エチニルエストラジオール」配合の同社育毛剤において、通常、育毛効果を実感するには6ヶ月(24週)の継続使用が必要なところ、医師所見による「脱毛の程度」が、12週後から有意に改善したデータを報告しています。
「エチニルエストラジオール」の育毛効果は、先の持田製薬のデータからも明らかですが、ユーザーの皆様が、安全性に関する正しい知識を持ったうえで、使用の判断をして頂ければと思います。
「エチニルエストラジオール」配合の育毛剤
女性ホルモン「エチニルエストラジオール」配合の育毛剤はそれほど多くはありませんが、代表的な商品をご紹介します。
持田製薬「コラージュフルフル育毛ローション」
持田ヘルスケア㈱(持田製薬グループ)の『コラージュフルフル育毛ローション』が、先に説明した持田製薬の育毛剤です。
女性ホルモン「エチニルエストラジオール」配合の育毛剤で、真先に名前が挙がる商品であり、25年以上の販売実績があります。
コラージュフルフル 育毛ローション 120ml[コラージュフルフル 育毛剤 女性用]
株式会社セラピュア「ケフトル ローションEX」
『ケフトル』は、女性ホルモン「エチニルエストラジオール」だけでなく、「ステルチオール」(血行促進)、「酢酸トコフェロール」(抗酸化)といった、『3つの有効成分』を配合した育毛剤です。
「有効成分の数は育毛効果に関係ない」というのが医薬部外品(育毛剤)の基本的な考え方ですが、私自身はこれまでの記事でも述べているように、『複数の有効成分配合の育毛剤』をおすすめしています。
何故なら、「ケフトル」を例に挙げると、薄毛の原因は人様々であり、どの育毛メカニズムに働きかけるのが効果的かも人によって違います。
「男性ホルモン抑制」が一番効果的な育毛法である人もいれば、「頭皮環境を整える(抗炎症)」が一番効果的な人もいるでしょう。
ですから、育毛メカニズムが異なる有効成分によって、複数の作用点に働きかけるのが効果的なケアだと私は考えています。
「ケフトル」は、男性ホルモンに働きかける『エチニルエストラジオール』、頭皮環境を整える『酢酸トコフェロール』、血行を促進させて栄養を送る『酢酸トコフェロール』と、複数の作用点に働きかける有効成分が配合されています。
おわりに
女性ホルモン「エチニルエストラジオール」の育毛効果は、持田製薬が公に示している通りです。
現在、育毛剤をお使いで、効果に満足しておらず、お使いの育毛剤に女性ホルモン「エチニルエストラジオール」が配合されていないのであれば、一度、検討されてみてはいかがでしょうか?
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません