コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

cosmedeinと申します。十数年、大手化粧品会社で化粧品の研究開発を行ってきました。その知識と経験を活かし、皆様に、『コスメの真実』をお伝えします。普段のお化粧に、是非参考にしてください!

【日焼け止めの疑問⑧】 「アクアブースターEX」「フリクションプルーフ」は危険?高機能化に潜む罠!

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日焼け止めコスメの疑問・誤解の『第8弾』です。

前回の、【日焼け止めの疑問⑦】 危険!!汗・水に強いウォータープルーフタイプは効果なし!?では、ウォータープルーフの誤った解釈が、「いつの間にか日焼け」による『重篤な肌トラブル』を引き起こすことについて論じました。

これは、日焼け止めコスメにおいて『最も重要な事』ですから、再度、今回の記事で掘り下げます。

今回は、日焼け止めコスメの『高機能化』は素晴らしい事ばかりではなく、『大きな罠』が潜んでいることについて論じたいと思います。

 

1.日焼け止めコスメの「高機能化」

アクアブースター・フリクションプルーフ

化粧品の進歩は目覚ましいです。

化粧品メーカーの『処方化技術』の進歩、OEMメーカーの『製造技術』の進歩、原料メーカーの『素材開発技術』の進歩、これらが、化粧品の進歩を支えています。

日焼け止めコスメでは、ウォータープルーフに代表される『耐性技術』の進歩が素晴らしいです。

ウォータープルーフに関してはこれまでも記事にしていますが、これは『水に対する耐性』を表す指標で、この表示がある日焼け止めは、水に対して崩れにくい水に対して紫外線防御効果が維持できることを意味しています。

ただし、この表示の解釈を誤ると、日焼け止めコスメを塗布したのに日焼けしてしまった!という『いつの間にか日焼け』につながりますからご注意ください。

詳細は以下記事をご覧ください。

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耐性技術は、水に対する「ウォータープルーフ」だけではありません。

代表的な耐性技術に、資生堂の『アクアブースターEX』とカネボウの『フリクションプルーフ』があります。

 

1-1.資生堂「アクアブースターEX」

資生堂の「アクアブースターEX」は、『水・汗・摩擦(こすれ)』に対する耐性です。

このブログでも再三申し上げていますが、日焼け止めコスメのような『乳化タイプ』のコスメの膜は、汗や海水に弱く、汗や海水に対して崩れやすいです。

汗には『乳酸塩』、海水には『塩化ナトリウム(塩)』などの『電解質』が多量に含まれており、化粧膜は、『電解質』に弱く、これらと接すると崩れてしまいます。

ですから、ウォータープルーフだからと言って、汗や海水に対しても強いと考えるのは大間違いであり、これはメーカー側の誤った『拡大解釈』です。

資生堂はこの事実をしっかり把握していますから、汗などの電解質に触れると、UVブロック膜が均一になり、さらに強くなる技術を開発しました。

これが『アクアブースター技術』です。

そして、この「アクアブースター技術」に、『均一性』『滑りやすさ』を付与して、こすっても(摩擦)取れにくいUVブロック膜(化粧膜)へと進化させたのが『アクアブースターEX技術』です。

日焼け止めコスメを塗布した後に、肌上に形成される『UVブロック膜』は、ミクロな視点で見ると、非常に『不均一』です。

指で塗布しますから、不均一になるのは仕方がない事ですが、化粧崩れは、この『不均一な箇所』から起こります。

ですから、「アクアブースターEX」の、UVブロック膜の『均一性』に着目した点は、さすが資生堂と言えます。

着眼点、技術ともに素晴しいのが、資生堂の『アクアブースターEX技術』です。

 

1-2.カネボウ「フリクションプルーフ」

一方、カネボウの耐性技術が『フリクションプルーフ』です。

「フリクション」の名が示す通り、『こすれ(摩擦)』に対する耐性技術です。

高機能・高品質の日焼け止めコスメが開発される一方、「しっかり塗っていたはずなのに焼けてしまった・・・」という声が無くなることはありませんでした。

そこでカネボウは、『摩擦による影響では?』と考え研究を進めました。

実は以前から、摩擦が原因ではないかと推測していたものの、評価する方法が無かったため、積極的に研究しなかったみたいですね。転機となったのが、『花王』が開発した、紫外線カメラで撮影した画像を解析することで、日焼け止めの『化粧膜(UVブロック膜)』の状態を評価する技術です。

カネボウは、この技術と、大学との共同研究により、日焼け止めコスメの化粧膜が、『摩擦』によってとれることを科学的に解明し、これを抑制する技術『フリクションプルーフ』の開発に成功しました。

これまでの日焼け止めコスメの化粧膜は、ただ単に、肌の上にのっている状態であり、衣服やカバンなどの『摩擦』でとれやすいものでした。

カネボウの研究によると、水着を着た女性の背中に日焼け止めを塗布して、わずか『10分間』動いただけで、ほとんど汗をかいていないにもかかわらず、水着の紐がこすれた部分だけ、日焼け止めがとれてしまいました。

「フリクションプルーフ」が搭載された化粧膜は、『弾性』をもっており、仮に摩擦を受けても、化粧膜の形状を維持するためにとれにくくなっています。

摩擦によって化粧膜は変化します。これまでは『剛直な膜(かたい膜)』のため、摩擦によって壊れてしまうところ、今回は『柔軟な膜(弾性膜)』のため、変化はしますが壊れず、最終的に元の形状に戻る(形状維持)というわけです。

摩擦に対する耐性技術『フリクションプルーフ』は、「花王の技術力」と「カネボウの経験値」の融合によって誕生した素晴らしい技術と言えます。

 

2.高機能化に潜む罠!

皆様の中にも、日焼け止めコスメを塗ったのに日焼けしてしまった!という『いつの間にか日焼け』を経験されたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか?

富士フィルムの女性9788名を対象にした研究によると、実に『65%以上』の方が、「十分に紫外線ケアをしているにもかかわらず、日焼けしたことがある(肌色が変化した)」という『いつの間にか日焼け』を経験されています。

『いつの間にか日焼け』の原因は様々だと思いますが、私は、昨今の日焼け止めコスメの『高機能化』が要因の一つではないかと考えています。

先程もご説明したように、ウォータープルーフ・アクアブースターEX・フリクションプルーフなどに代表される、日焼け止めコスメの『耐性技術』は素晴しいです。

しかしこれらは、水・汗・海水・摩擦に対して『崩れにくい』のであって、決して『崩れない』という訳ではありません。

「耐性技術が搭載された日焼け止めを使っているから崩れない」と考えるのは、非常に危険で、この過度な自信が、日焼け止めが崩れている事実からユーザーの目をそむかせ、日焼け(いつの間にか日焼け)を起こしていることは十分に考えられます。

しかも、これら耐性技術が搭載された日焼け止めは、「SPF50+ PA++++」などの『高スペック品』が多いですから、高スペック品をお使いのユーザーは、屋外でのスポーツなど、紫外線量が多い環境下に長時間居るということですから、『いつの間にか日焼け』のダメージは甚大です。

このブログでも再三申し上げていますが、日焼け止めコスメにとって一番重要なことは、『たくさんの量をこまめに塗り直す』です。

日焼け止めコスメの高スペック化は、この一番重要な使用法から、ユーザーを遠ざける恐れがあります。

勿論、コスメの進化は喜ばしい事ですし、化粧品開発者は、「これまでにない技術を開発した!」という『達成感』を感じるために、日々コスメ開発に従事していると言っても過言ではありません。

しかし時に、コスメの進歩、開発者の達成感は、ユーザーにとって『不利益』になる可能性があり、まさに、日焼け止めの『耐性技術』がこれに該当するのではと思います。

耐性技術は無いよりもあった方がいいですし、資生堂の「アクアブースターEX」とカネボウの「フリクションプルーフ」は、日焼け止め史に名を残すであろう『素晴らしい技術』であることは言うまでもありませんが、化粧品メーカーとして、『正しい日焼け止めコスメの使用法』の啓蒙も、平行して行って頂きたいと思います。

皆様も、お使いの日焼け止めコスメの耐性に過度な期待をせず、正しい知識と使用法で、『いつの間にか日焼け』から大切なお肌をお守りください。