コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

cosmedeinと申します。十数年、大手化粧品会社で化粧品の研究開発を行ってきました。その知識と経験を活かし、皆様に、『コスメの真実』をお伝えします。普段のお化粧に、是非参考にしてください!

ポーラ法廷闘争裁判へ!!しわ改善「ポーラ リンクルショット」が値下げした本当の理由とは?

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本日、yahooニュースを見ていたら、ポーラHD社長 vs 不正疑惑告発の元役員の争い、舞台は法廷へという記事を目にしました。

正直驚きました。

ポーラと言えば、日本を代表する化粧品会社で、このブログでも記事にしている通り、日本初の医薬部外品しわ改善美容液「リンクルショット」が大ヒットし、絶好調です。

この記事の内容が本当であれば、かなりのイメージダウンにつながるでしょう。

今回は、法廷闘争の内容と、大ヒット商品「ポーラ リンクルショット メディカルセラム」が値下げした『本当の理由』について、化粧品開発者の私の考えを述べたいと思います。

 

1.ポーラHD社長 VS 元役員 法廷闘争

ポーラ・裁判・リンクルショット・値下げ

記事によると、事の発端は約18年も前にさかのぼるようです。

2000年に、ポーラ2代目社長 鈴木常司氏が急逝され、お子様がいらっしゃらなかったため、おいの郷史氏が社長に就任し今に至ります。

その際、株の相続をめぐり、郷史氏と常司氏の奥様との間で、壮絶な訴訟合戦が繰り広げられました。

この話は当時、業界では有名で、週刊誌に連日報道されていました。私は、株のことはよく分かりませんし、他社のことなのであまり興味がなかったため、週刊誌を読んだりはしませんでしたが、周りの先輩たちが騒いでいたのを覚えています。

この訴訟自体は、2005年に和解が成立したようで、それ以降、あまり話は聞かなくなりました。

ポーラのような一族経営の会社であれば、跡取り問題で、このような話はよくある事だと思います。

しかし、18年経った今になって、常司氏の秘書を長く務めた現役員(現在は解任)が、実は郷史氏が契約書を偽造していたと暴露しました。

郷史氏は、当時の資産管理会社の株を、『1株1円』で常司氏から生前贈与されたように契約書を偽造したということです。

当時の裁判では、この事実は隠されたままで、結果的に郷史氏は、常司氏の保有株の大半を継承しました。

その後ポーラは、ポーラ・オルビスホールディングス(HD)として上場を果たし、大きく飛躍を遂げました。

2000年初頭のポーラは、訪問販売が不調で下降の一途をたどり、グループ会社のオルビスのおかげで、何とか大きな売り上げ減を免れているという厳しい状況が続いていました。

しかし、もともと技術力には定評があった会社ですから、BAやエステ、アペックスなどに最新の技術を投入し、CMや美容雑誌への露出を増やしたことで、認知度が高まりました。

そして、ポーラ・オルビスホールディングスとして東証一部への上場、海外メーカーのM&A、さらには日本初のしわ改善医薬部外品「リンクルショット メディカルセラム」の発売などにより、今では、見事なV字回復を果たしています。

そのような意味で、苦しい時期の2000年初頭から舵取りした郷史氏の功績は素晴らしいと思いますが、もしこの記事の内容が事実であれば、この素晴らしい功績は、契約書偽造という罪の上に成り立っていると言えます。

化粧品は何よりも『イメージ』を重視する『ブランドビジネス』ですから、今回の件は、ポーラブランドの価値を大きく下げる事態になりかねません。

記事の内容が事実かどうかは、今後の裁判の行方を見ないと分かりませんが、ポーラに関わる従業員の皆さんがかわいそうです。

従業員の皆さんは、お客様のために日々、企業活動に勤しんでおられますから、このような18年も前の、一族経営にありがちなごたごたに巻き込まれて、不安な日々を送っているのだろうと思います。

従業員の皆様のためにも、ポーラを愛するお客様のためにも、早急に事実を明らかにして頂きたいです。

 

2.ポーラ リンクルショット メディカルセラム

「ポーラ リンクルショット メディカルセラム」は、『日本初』のしわ改善医薬部外品です。

長らく日本では、『しわに効く』とか『しわが改善する』といった表現を、化粧品や医薬部外品にすることは出来ませんでした。『しわ』に対する効果効能表現が認められていなかったわけです。

※メイクアップ効果の場合は認められています

一方で、しわに対して改善効果のある化粧品はユーザーニーズが高く、現に欧米では、しわ改善効果を化粧品に表示し販売することが認められています。

このような背景から、業界団体(日本化粧品工業連合会)が、かねてより厚生労働省に要望し、2011年、『乾燥による小じわを目立たなくする』という表現を、『化粧品』に表示し販売することが可能になりました。

※「化粧品機能評価法ガイドライン」に基づく試験、もしくは、これと同等以上の試験を、化粧品メーカーの責任において実施し、その効果を確認したうえで、試験を行なったことを製品に表示する必要があります

しかし、『医薬部外品(薬用化粧品)』に関しては、依然としてしわに対する効果効能表現は認められていませんでした。

そのような状況下、『ポーラ』が、しわに対する有効成分『ニールワン』を開発し、その効果を国が認め、ついに、2017年1月、日本初のしわを改善する医薬部外品、『ポーラ リンクルショット メディカル セラム』が発売されました。

一方、ポーラから遅れること6ヶ月。今度は『資生堂』が、しわ改善 医薬部外品「エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリームS」を発売しました(2017年6月21日発売)。

資生堂は、従来から用いられている成分『レチノール』に、日本で初めて、『しわ改善』という新しい効果・効能を見出し、国から認可を得ました。

ポーラの「ニールワン」はしわを改善する『新規物質』、資生堂の「レチノール」は『既存物質』ですが、しわを改善するという『新しい効能』を可能にしました。

これが、2017年のコスメ業界の話題を独占した、『しわ改善医薬部外品』の経緯です。

詳細は以下記事をご覧ください。

<ポーラ VS 資生堂 しわ領域対決!>
シワケアが熱い! 資生堂とポーラを徹底比較 勝つのはどっち? - コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

<ポーラ VS 資生堂 しわ領域対決 決着!?>
しわ取り化粧品 ポーラVS資生堂 しわ領域 頂上決戦 決着か? - コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

<資生堂 表情プロジェクト>
しわ取り化粧品 ポーラVS資生堂 表情プロジェクトに新たな動き - コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

 

3.ポーラ リンクルショット メディカルセラムが値下げした本当の理由

2017年の発売以降、驚異的なペースでユーザー支持を拡大し、大ヒット商品となった「ポーラ リンクルショット メディカルセラム」ですが、発売から1年後の2018年1月1日、これまでの15,000円(税抜)から、『13,500円(税抜)』に価格改定(値下げ)されました。

ポーラ側はこの値下げに至った理由を、「リンクルショットが想像以上に売れたため、生産効率が飛躍的に向上し、コスト低減を果たすことが出来た」としています。

さらに、「しわ改善という新しい価値をもっと身近にして、より多くのユーザーに使ってもらいたい」という想いもあるようです。

商品が売れればコストダウンは可能です。

原料や容器の使用量が大幅に増えることで、原価が抑えられ、その分を販売価格に反映できます(値下げ)。

今回のリンクルショットの場合、全成分表示と処方特徴から察すると、ポーラ独自のしわ改善有効成分 「ニールワン」以外は、珍しいものではなく一般的な成分です。

ですから、商品が売れ、「ニールワン」の使用量が増えたため、「ニールワン」の原料価格が下がったと考えるのが妥当ではないでしょうか?

しかしこれは、事実であっても、値下げの『真の理由ではない』と私は考えています。

何故なら、コスメは『ブランドビジネス』ですから、販売価格はあってないようなものであり、いかようにも設定できるからです。

もともとの「15,000円」という価格は、「原材料費」や「人件費」・「研究開発費」・「宣伝広告費」などを綿密に計算し、そこに「利益」をのせてはじき出した数字ではないでしょう。

ベンチマーク品を設定し、どこのシリーズから発売するかを決め、これだけの『価値』であればこのくらいの『価格』が妥当だと判断して、販売価格15,000円は決められていると思います。

ですから、「15,000円」という価格自体に、それほどの意味を持ちませんから、それが「13,500円」に値下げしたところで、ポーラにとって大幅に収益が悪化するといった不安はないはずです。

今回の値下げは、値下げせざる得なかったと考えるのが妥当でしょう。

つまり、当初は、値下げする予定も必要もありませんでしたが、『想定外の出来事』が起きたため、値下げせざる得なかったというのが、本当の理由だと私は推測しています。

この『想定外な出来事』こそ、資生堂のしわ改善医薬部外品の発売でしょう。

コスメの基礎研究・商品開発は機密性が高く、まして、医薬部外品の有効成分開発となると、その企業に属していても一部の人間しか詳細を知らないほどの『トップシークレット』です。

ですから、ポーラの「ニールワン」開発は超極秘に進めていたはずです。資生堂の「レチノール」の新効能に関しても同様で、超極秘ですから、外部(他社)に情報が漏れることはあり得ません。

2017年1月に、日本初のしわ改善医薬部外品「リンクルショット メディカルセラム」を発売したポーラですが、まさかそのわずか6ヶ月後に、資生堂が同じしわ改善医薬部外品を発売してくるなど、思ってもみなかったでしょう。

ポーラにとってこの資生堂の動きは、まさに『想定外』で、ニュースリリースされたときは、かなり動揺したと思います。

ポーラの「ニールワン」は新規物質です。新規物質ゆえに、『市販後2年間の経過調査(市販後調査)』が義務付けられています。

簡単に言うと、発売後2年間は、ユーザーが安全に使えているかをしっかり調査し、万一、重篤な肌トラブルなどが確認されたらすぐ報告しなさいというものです。

ですから、「ポーラ リンクルショット メディカル セラム」が、公式ホームページからは購入出来ず、百貨店を中心としたカウンセリング販売限定にしているのは、『市販後調査』のためです。万一、肌トラブルなどが起こった場合、カウンセリング販売であれば、購入者を追跡し特定することが出来ます。

さらに、これが一番重要ですが、市販後調査期間の2年間は、他の商品に「ニールワン」を配合出来ない、つまり、「ニールワン」配合の新商品の発売が出来ません

もし、資生堂の発売が無ければ、2年間新商品が発売できなくとも、日本初の「リンクルショット メディカルセラム」だけで十分戦っていけますし、市場優位性は保てます。

しかし、有効成分は違えど、同じ『しわ改善』という効能で資生堂が商品を発売してきましたから、ポーラにとって市販後調査の2年間は、重くのしかかっていると思います。

何故なら、資生堂の場合、「レチノール」自体は既存物質であり、既存物質の「レチノール」に新しく『しわ改善』の効能を見出しただけですから、市販後調査の必要はありません

つまり、しわ改善の新商品を、さらに発売できるということです

現に資生堂は、今回のしわ改善医薬部外品の一連のプロモーションを『表情プロジェクト』と題し、第一弾が『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリームS』(2017年6月発売)、第二弾が『SHISEIDO バイタルパーフェクション リンクルリフト ディープレチノホワイト4』(2017年11月発売)、そして第三弾が『ベネフィーク レチノリフトジーニアス』(2018年2月発売)と、次々に「レチノール」を有効成分としたしわ改善医薬部外品を発売しています。

ポーラの市販後調査(2年間)の間に、実に、3商品のしわ改善医薬部外品の発売ですから、ポーラとしては予想外だと言えるでしょう。

しかし、市販後調査という決まりがある以上、新商品の発売は出来ませんから、値下げせざる得なかったというのが、私が考える「リンクルショット」が値下げした本当の理由です。

勿論、予想を上回る売り上げで、原料価格が下がったという要因もあるでしょうが、このブログでも再三申し上げているように、コスメは『高付加価値商材』ですから、安易な値下げには反対です。

値下げは価値を下げる事と同義ですから、ブランド価値を守るためにも、ある一定の販売価格を維持することは必要です。

ただし、値下げと言っても、それでも「13,500円(税抜)」ですから、十分な高付加価値商材とも言えます。

いずれにしても、「ポーラ リンクルショット メディカルセラム」こそが、『日本初のしわ改善医薬部外品』ですから、市販後調査後のポーラの次なる戦略(新商品)に大いに期待しています。




※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません