コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

cosmedeinと申します。十数年、大手化粧品会社で化粧品の研究開発を行ってきました。その知識と経験を活かし、皆様に、『コスメの真実』をお伝えします。普段のお化粧に、是非参考にしてください!

【日焼け止めの疑問⑤】 散乱剤配合の日焼け止めを選ぶべき? 散乱剤のメリット・デメリット

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日焼け止めコスメの疑問・誤解の『第5弾』です。

日焼け止めコスメは、『紫外線散乱剤』配合のモノを選ぶべきでしょうか?

今回は、日焼け止めに配合される『紫外線散乱剤』のメリット・デメリットについてご説明いたします。

『吸収剤』のメリット・デメリットについては、以下記事をご覧ください。

<紫外線吸収剤を選ぶべき?メリット・デメリット>
【日焼け止めの疑問④】 吸収剤配合の日焼け止めを選ぶべき? 吸収剤のメリット・デメリット - コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

 

1.紫外線散乱剤の「メリット」・「デメリット」は?

散乱剤・吸収剤・メリット・デメリット

日焼け止めに配合される紫外線散乱剤は『酸化チタン』『酸化亜鉛』です。

【日焼け止めの疑問②】の記事で、日焼け止めに配合される「酸化チタン」と「酸化亜鉛」は散乱剤ではなく、吸収剤であり散乱剤でもあると述べましたが、この記事では便宜上、「散乱剤=酸化チタン・酸化亜鉛」とさせて頂きます。あらかじめご了承ください。

 

1-1.紫外線散乱剤の「メリット」

紫外線散乱剤(散乱剤)のメリットは、『肌への優しさ』『幅広い紫外線カット領域』、そして『光安定性の高さ』です。

【日焼け止めの疑問③】の記事で述べているように、散乱剤は吸収剤に比べ『肌に優しい』と言えます。

吸収剤は、紫外線領域の中でも『ある特定の波長のみ』を吸収(カット)します。

一方、散乱剤は、「酸化チタン」であれば、UV-B領域である『280nm~320nm』を、「酸化亜鉛」であれば、UV-A領域である『320nm~400nm』を幅広くカットすることが出来ます。

【日焼け止めの疑問①】の記事でも述べたように、SPF値だけを考えれば、人の紅斑反応を引き起こしやすい『315nm付近だけ』をカットすればよく、この付近に極大吸収を持つ吸収剤を配合すれば、高いSPF値を得ることは可能です。

しかし、315nm以外の紫外線による肌ダメージを無視できませんから、UV-B領域・UV-A領域を幅広くカットすることが理想的です。

ですから、『幅広い紫外線カット領域』は、散乱剤の大きなメリットの一つと言えます。

これまでの記事でも、吸収剤の光安定性の悪さについて論じてきました。一般的に、紫外線を吸収して別の物質(構造体)に変化する吸収剤は、光(紫外線)に対して不安定で、『分解』しやすい特性を持ちます。

「分解」してしまった吸収剤は、紫外線吸収能力を失いますから、紫外線カット効果は期待できません。「日焼け止めを塗ったのに焼けた!」という事態になりかねず、だからこそ、日焼け止めは『こまめに塗り直すこと』が重要なのです。

このように、光(紫外線)に不安定で『分解』しやすい吸収剤に対し、散乱剤は光(紫外線)に対して超安定で、『抜群の光安定性』を示します。

そもそも散乱剤は、紫外線が照射されても、吸収剤のように別の物質(構造体)に変わるわけではなく、格子内の電子移動だけですから、分解はしません。

色が変わったり、活性が強く他成分に影響を与える可能性はありますが、それを防ぐために、日焼け止めに配合の酸化チタンや酸化亜鉛(いずれも微粒子)には、表面の活性を抑えるため『表面処理』が施されますから、散乱剤は、光(紫外線)に対し『超安定』と言えます。

光安定性が向上した吸収剤の開発や、分解を抑制する処方化技術、吸収剤の光分解を考慮したSPF, PA測定法など、昔に比べれば、UVフィルター(吸収剤・散乱剤)の『光安定性』への対応は進んでいます。

しかし個人的には、実生活におけるユーザーの紫外線による肌ダメージを考えると、メーカー側はこれまで以上に、UVフィルター(吸収剤・散乱剤)の『光安定性』に着目し、対応すべきと考えます。

 

1-2.紫外線散乱剤の「デメリット」

散乱剤のデメリットは『価格』『仕上がり・使用感』です。

デメリットと言っても、技術革新のおかげで、「コスメの品質として問題」というレベルではありません。あくまで吸収剤と比べて、という程度です。

【日焼け止めの疑問④】の記事でも述べたように、吸収剤の原料価格は圧倒的に安いです(勿論、高価な吸収剤はあります)。

散乱剤の原料価格は、散乱剤の『性能』を考えたら妥当な数字ですが、吸収剤と比べると高価です。

「酸化チタン」を例にとると、日焼け止めには、紫外線を防御するため、粒子が非常に細かい『微粒子酸化チタン』が用いられます。

酸化チタンを『微粒子化』するには高度な技術が必要ですし、そのままでは表面の活性が強すぎるので『表面処理』が必須。また、日焼け止めでは、分散体として用いるケースが多いため、シリコーンなどへの『分散』も必要です。

『微粒子化』『表面処理』『分散』など、散乱剤には高度な技術と様々な工程が必要ですから、必然的にやや高価になってしまうのであろうと思います。

ただし私は、化粧品開発者であり、散乱剤のすごさを理解していますから、散乱剤の原料価格に対しては何も不満はなく、納得しています。

散乱剤のもう一つのデメリットが『仕上がり・使用感』です。

日焼け止めでは『白浮き』という表現が良く使われますが、これは「日焼け止めを塗ったら白くなった」という意味であり、原因は『散乱剤』です。

散乱剤は『粉末』ですから、どうしても白っぽく、不自然な仕上がりになります。

ただし、この白さは、散乱剤(酸化チタン・酸化亜鉛)の粒子が大きくなっていることが原因ですから、高度な技術力を有するメーカーであれば、散乱剤の凝集(粒子が大きくなること)は抑えることが出来ます。

ですから白浮きは、化粧品メーカーの技術力の高さを知る指標になります。

技術力のあるメーカーであれば、『分散技術』に長けていますから、散乱剤配合の日焼け止めでも白浮きしません。

『使用感』に関して言えば、散乱剤は『粉末』ですから、散乱剤高配合のモノは粉由来の『乾燥』を感じるかもしれません。

また、現在は、ニベアに代表される、みずみずしい『ジェルタイプ』の日焼け止めが人気ですが、これは、吸収剤だから実現できる使用感であり、粉末である散乱剤では、ジェルタイプの日焼け止めは不可能です。

 

2.おわりに

いかがでしょうか?

紫外線散乱剤のメリットは『肌への優しさ』『幅広い紫外線カット領域』、そして『光安定性の高さ』です。

一方、デメリットは、『価格』『仕上がり・使用感』です。

記事中でも申し上げましたが、私は、UVフィルター(吸収剤・散乱剤)の『光安定性』が非常に重要だと考えていますから、光に対して超安定な散乱剤の方が、吸収剤より好きです。

散乱剤には、デメリットもありますが、原料メーカーの「表面処理技術」・「分散技術」、化粧品メーカーの「処方化技術」の進歩によって、今ではデメリットを克服したとも言えるでしょう。

是非、皆様の日焼け止め選びの参考にしてください。