コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

cosmedeinと申します。十数年、大手化粧品会社で化粧品の研究開発を行ってきました。その知識と経験を活かし、皆様に、『コスメの真実』をお伝えします。普段のお化粧に、是非参考にしてください!

コスメは冷蔵庫で保管してもいいの? コスメの保管温度の真実

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コスメは、決して安い買い物ではなく、消耗品として考えた場合、高価なモノですから、皆さまは大切にお使いになっていると思います。

その一環として、大切なコスメを『冷蔵庫』で、冷やして保管するユーザーも多いのではないでしょうか?

実際、私の周りでも、メーカーから推奨されていなくても、コスメを冷蔵庫で冷やして保管している方が結構いらっしゃいます。

商品の使用方法や保管方法欄に、冷蔵保管という表記がなくとも、コスメは冷蔵保管・冷蔵使用してもよいのでしょうか?

そこで今回は、化粧品開発者の私が、『コスメの保管温度の真実』と題しまして、「コスメは冷蔵庫で保管してもいいの?」というご質問にお答えします。

 

1.コスメと保管温度

コスメ・冷蔵庫・保管

世の中のユーザーが、コスメを『冷蔵保管』する一番の目的が、コスメの品質劣化を防ぐためでしょう。

後ほど詳しくご説明しますが、コスメは温度が高いほど、分離や変色などの『品質劣化』が進行しやすく、温度が低いほど、品質は保たれます。

しかし、化粧品メーカーは、様々な温度に保管されても大丈夫なようにコスメを開発します。

つまり、確かに『低温』の方が、コスメの品質劣化は防げますが、常識の範囲内であれば、高温であっても、顕著な品質劣化は起こりません。

ユーザー側に保管温度をコントロールしてもらうことは難しいですから、様々な温度環境に置かれてもいいように、『△△℃~〇〇℃』の範囲に、一定期間保管されても大きな問題を生じないコスメを、我々化粧品開発者は開発しているのです。

この「△△」や「〇〇」に入る数字は、販売国における『常識的な温度』であり、当然、-30℃や60℃などの低温・高温は、日本ではあり得ませんから、このような数値(温度)ではありません。

「△△」や「〇〇」は、化粧品メーカーによって違います。例えば、「-20℃~50℃」としているメーカーもあれば、「-10℃~35℃」としているメーカーもあるでしょう。

これがコスメにおける、各化粧品メーカーの『安定性基準』です。

※コスメの安定性基準は、各化粧品メーカーの自社基準です

大手化粧品メーカーほど、より厳しく安定性を確認しますから、温度範囲は広い、つまり、『安定性基準は厳しい』と思います。

このように化粧品開発者は、様々な環境下でコスメが保管されることを想定して、ある温度に一定期間さらされても、安定性に問題を生じないコスメを開発していますから、常識の範囲内であれば、ユーザー側が保管温度に配慮する必要はありません

ですから、『コスメを冷蔵庫で保管する必要はない』が真実です。

※冷蔵保管と表記がある、及び、冷やして使うコスメは除く

ただし、先ほども述べたように、コスメは冷やして保管した方が、品質劣化を防げることは事実です。次項では、冷蔵保管表示がない通常のコスメを、冷やして保管した際の『メリット』『デメリット』をご説明します。

 

2.冷蔵保管のメリット 

2-1.品質劣化を抑制:分離

水と油を界面活性剤で乳化させるコスメは、専門的に言うと、『熱力学的に不安定な系』です。ですから、いずれ必ず水と油に『分離』するのが乳化タイプのコスメであり、我々化粧品開発者は、界面活性剤や作製条件などによって、分離の速度をコスメの品質保証期間である3年以上に遅らせているにすぎません。

ですから、熱力学的に不安定な乳化タイプのコスメにとって、『温度』は天敵であり、温度が高ければ高いほど、分離(品質劣化)しやすくなりますから、コスメの冷蔵保管は、『分離の抑制』に効果的です。

 

2-2.品質劣化を抑制:変色、変臭

コスメに配合の成分(原料)には様々な種類があり、温度によって色が変わったり、匂いが変わったりするモノがあります。

この色の変化、匂いの変化を、『変色』『変臭』と言いますが、コスメを快適に長く使い続けていただくためにも、顕著な変色・変臭を防ぐ必要があります。

黄~茶に変色するケースが多いですが、透明~乳白色のコスメが、茶に変色したら「大丈夫かな?」と心配になられるでしょうし、ものすごい匂いを発していたら使うこと自体、嫌になると思います。

高温ほど、変色・変臭の傾向が強くなりますから、コスメの冷蔵保管は、『変色・変臭の抑制』にも効果的です。

 

2-3.驚愕の使用感

コスメは使用温度(使用環境)によって、『使用感』が変わります。実際、夏場と冬場で、同じコスメなのに、使用感が違うと感じているユーザーは多いと思います。

特に乳化タイプのクリームは、温度によって『硬さ』が違いますから、この物性値の差がそのまま使用感の差になって現れます

また、半固形脂や固形脂を配合したクリームがより顕著で、低温と高温では、びっくりするくらい硬さが違いますから、『使用感の差は歴然』です。

ですから、半固形脂・固形脂配合のクリームであれば、冷蔵庫で冷やして保管することで、『驚愕の使用感』を体験できますし、実際、そのようなコスメは存在します。

それが資生堂の『HAKU メラノクール ホワイトソリッド』です。この商品は、冷蔵庫で冷やして使う『ソリッド状の美白クリーム』です。

 


冷蔵保管のコスメですから、『クール便』で届けられますし、店舗販売できないため、『WEB限定』です。

この商品は、私にとっての『衝撃コスメ』であり、『おすすめコスメ』ですから、詳細は別途記事にしますが、一言でいうと、驚愕の使用感でありながら、美白の医薬部外品という点が素晴らしすぎます。

『驚きの使用感』『美白効果』をお試しください。

 

3.冷蔵保管のデメリット

3-1.エキス由来のオリ(澱)

コスメを冷蔵保管するデメリットの一つが、エキス由来の『オリ(澱)』の析出です。

「オリ」とは、エキスに含有の微量成分が、”かす”のように出てくる現象で、『低温』で出やすく、特に、化粧水によく見られます。

ただし、オリが出たからと言って、お肌に極端に悪いというわけではなく、あくまで外観上好ましくないと考えられているだけであって、重篤な事態ではありません。

 

3-2.成分の析出(結晶化)

こちらは非常に重篤で、コスメの冷蔵保管で『最も注意すべきこと』です。

コスメには、固形状・粉末状の成分が配合されており、これらは、水や油に『溶解』させてコスメに配合されます。温度が低いと、これら成分の溶解度が低下し、『析出(結晶化)』するケースがあります。

この析出で、最も注意すべきことでありながら、けっこう頻繁に起こり得ることは、『パラベン類の析出』です。

パラベン類の一つ「メチルパラベン」は粉末状ですが、一度溶解させたモノが析出すると、非常にしっかりとした結晶になります。

パラベンの析出に気づかずコスメを使用すると、しっかりとした結晶ですから、痛いですし、場合によっては、肌を傷つける恐れがあります。

何より、パラベンが析出してしまったコスメは、『防腐力が低下』しますから、絶対に使い続けるべきではありません。

もし、普通に使用していてパラベン類の析出が確認されたら、『メーカーの責任』になりますから、直ちに問い合わせ(返品)すべきですが、メーカーが推奨していない冷蔵保管によって析出が確認された場合は、『自己責任』になりますからご注意ください。

もし、コスメを冷蔵保管される際は、『析出』には注意です。

 

4.コスメは冷蔵庫で保管してもいいのか?

 私は、冷蔵庫で冷やして使うコスメを除き、コスメの冷蔵保管はおすすめしません

何故なら、化粧品メーカーは、ユーザーが様々な環境にコスメを保管することを想定して、幅広い温度領域でコスメの安定性を確認しますし、確認して問題ないものを商品化しますから、極端な高温・低温以外の『常識の温度範囲内』であれば、そんなに簡単に品質劣化は起きないからです。

それよりも、冷蔵保管によって起こり得る「析出」などの『デメリット』の方が心配です。

ただし、ご紹介した、資生堂の「HAKU メラノクール ホワイトソリッド」は、冷蔵庫で冷やしてお使いください。この商品は、冷やして使うことを前提に開発されたコスメですから、冷蔵保管必須です。

 

5.おわりに

いかがでしょうか?

大切なコスメを冷蔵庫で保管して、品質劣化を防ぎたい気持ちはよく分かります。

しかし、化粧品メーカーは、幅広い温度範囲で安定性を確認しますから、『常識的な温度』であれば、そんなに簡単に品質劣化はしません。

コスメの『安定性』は、各化粧品メーカーの『自社基準』です。この基準は、化粧品メーカーによって異なり、大手ほど厳しい基準を設ける傾向にあります。

ですから、安定性基準が緩い、あまり聞いたことがないメーカーのコスメであれば、品質劣化しやすいことは十分考えられますから、このような場合であれば、冷蔵庫で保管した方が良いかもしれません。

ただし、コスメの冷蔵保管の『デメリット』と、冷やして使うコスメを除き、メーカー保証の対象外の冷蔵保管は『自己責任』だということは知っておいてください。

 

 

※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません