コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~

アクセスありがとうございます。cosmedeinと申します。数十年、大手化粧品会社で化粧品の開発を行ってきました。その経験を活かし、化粧品をお使いのすべての人々に、『化粧品の真実』をお伝えしたいと思います。普段のお化粧に、是非参考になって頂ければと思います!

またもや資生堂が自主回収(市場回収)!何故、自主回収は起こるのか?

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2017年9月13日、資生堂が、「アイライナー約40万本を自主回収し、製造販売を中止する」と発表しました。

このアイライナー、今年2月にも自主回収を行っており、同じ商品で2度目の自主回収。

さらに、資生堂としては、今年に入って『4度目』の自主回収。

先日、私も記事にしました。

資生堂、花王、カネボウ、コーセー、ポーラ、化粧品の市場回収(自主回収)は何故起こるのか? - コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~


先日記事にしたばかりなので、「またか・・・しかも、あの資生堂が・・・」と、衝撃を受けました。

私も、化粧品開発者だった頃、自主回収(市場回収)の経験がありますから、この事例を元に、私の経験を踏まえながら、再度、『何故、自主回収は起こるのか?』について述べたいと思います。

 

1.資生堂の自主回収

資生堂自主回収・市場回収・アイライナー

資生堂は、同社の人気セルフメイクアップブランド「インテグレート」のアイライナー『キラーウインクジェルライナー』の一部において、『製造工程での不備』により、アイライナーの芯に『本体プラスチックの小片』が混入した商品があることが判明し、商品を自主回収すると発表しました。

この商品、実は、今年2月にも自主回収を発表しており、同じ商品で2度目の自主回収となります。

また、資生堂は、今回の件で、今年に入り『4度目』の自主回収となりますから、業界にも衝撃を与えたことは間違いありません。

 

2.自主回収の原因は?

今回、資生堂は、製造委託先のドイツの工場で、ペンシル部分を充填する際、加工する機械と本体のプラスチック部分が接触してプラスチックが削れ、ペンシル部分に『プラスチックの小片』が混入したと発表しました。 

これは『OEM』のようですね。

化粧品OEMについては、以前記事にしました。

⇒ 化粧品会社の真実 【化粧品OEMってご存知ですか?】 - コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~


化粧品業界にとって『OEMメーカー』の存在は欠かせません。

自社で、研究所・工場を持っていなくても、OEMメーカーに委託すれば、化粧品事業をはじめることが出来ます。OEMメーカーが、企画、販売以外の、研究開発・製造を請け負ってくれるからです。

化粧品業界には、規模が小さなメーカーがたくさん存在します。これらは、そのほとんどが、製造をOEMメーカーに委託していますから、今の化粧品業界の盛り上がりは、OEMメーカー無くしてあり得ないと言っても過言ではありません。

自社で研究所・工場を持っていない、規模の小さな化粧品メーカーだけが『OEMメーカー』に製造委託しているわけではありません。

資生堂、花王、カネボウ、コーセー、ポーラなどの『大手化粧品メーカー』も、OEMメーカーに製造委託しています。

2つの考えられるケースがありまして、1つは、製品がものすごい売れて、自社工場の製造だけでは追いつかない場合、OEMメーカーに製造委託します。

もう一つは、こちらのケースの方が圧倒的に多いと思いますが、『特殊製剤』を専門のOEMメーカーに製造委託します。

『特殊製剤』というのは、例えば、「シートマスク」、「エアゾール」、「ネイル」、「アイライナー」など、製造するには特別な設備が必要な場合、例え、自社工場が充実している大手化粧品メーカーでも、OEMメーカーに製造委託する場合がほとんどです。

今回の資生堂の場合、「アイライナー」をドイツのOEMメーカーに製造委託していたみたいですね。ドイツであれば、有名なポイントメイクのOEMメーカーがあるので、おそらくそこの会社でしょう。資生堂以外のメーカーも、製造委託しているはずです。

資生堂は今年の7月にも、立て続けに自主回収を発表しましたが、その原因は『プロセスの不備にある』と、私は以前記事にしました。

⇒ 資生堂、花王、カネボウ、コーセー、ポーラ、化粧品の市場回収(自主回収)は何故起こるのか? - コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~


化粧品がユーザーの手元に届くまでには、『開発』『製造』『充填(仕上げ)』というプロセスを経ます。

各プロセスでの『不備』が、自主回収を招きます。7月の資生堂の、「ボディソープ」と「日焼け止め」の自主回収では、検査業務を怠った、『製造プロセス』『充填(仕上げ)プロセス』での不備が原因です。

ただし、以前の記事にも書きましたが、資生堂の場合、品質基準が非常に厳しいです。

ボディソープの『香りの異常』も、日焼け止めの『使用感の異常』も、他メーカーであれば、不備と判断せず、自主回収にまで発展しない可能性は十分考えられます。

資生堂は、自らの『ブランド価値』を守るため、自らに厳しい基準を課し、ほんの少しの異常であっても、他メーカーであれば認めないわずかな異常であっても、『不備』とし、自主回収に至った側面もあるでしょう。

ですから、確かに、自主回収はあってはならない事態ですが、前回の資生堂の対応は見事で、「ユーザーに最高品質のモノをお届けしたい」という強い想いが感じられました。

しかし、今回のケースは全く違います。前回の「ボディソープ」や「日焼け止め」とは、レベルが違います。

化粧品メーカーにとって、『異物混入』は「安全性トラブル」に並ぶくらい、絶対にやってはいけないことです。

ゴミや虫など、様々な『異物混入』が想定されますが、今回は『プラスチック片』ですから、ユーザーに重篤な傷を負わせる可能性が高い。

言語道断ですね。

資生堂は、ドイツのOEMメーカーで製造された製品を、『製品検査』しているはずです。この時に、何か不備があれば、市場に流通させる前に、止めることが出来ますから、不具合品質を市場に流通させない『製品検査』は、最後の砦です。

今回は、『製品検査』で、プラスチック片の混入を発見できず、市場に流通させてしまったわけです。

製品検査は、『充填(仕上げ)プロセス』ですから、今回の自主回収は、『充填(仕上げ)プロセスの不備』が原因だと考えられます。

しかし、製品検査は『抜き取り検査』が基本です。全ての製品の検査(全数検査)は現実的ではありません。

製品検査の難しいところは、「異物混入」といっても、全ての製品にプラスチック片が混入しているわけではありません。ですから、抜き取り検査に用いた製品には混入が無かったということは十分あり得ます。

このような事情がありますから、製品検査で『異物混入』を発見することは、非常に困難なのです。

ではどうすべきか?

そもそも今回のケースは、『ドイツのOEMメーカー』の不備です。製造、充填プロセスを確実に実行していれば、このようなことは起きません。

OEMメーカーに製造委託する場合、まず、委託するOEMメーカーの『信用性』を調査します。経営的側面は勿論、製造設備品質管理など、様々な項目を調査し、信頼出来るかどうかを判断します。

資生堂ほどのメーカーであれば、その判断基準は非常に厳しいはずです。ですから、資生堂に委託されるだけで、一流OEMメーカーの証とも言えるかもしれません。

今回は、ドイツのOEMメーカーのずさんな製造、管理体制が浮き彫りになったわけですが、それであれば、もっと初期段階で、このOEMメーカーの『信用性』を判断し、必要に応じて、『改善指示』を出したり、場合によっては取引を辞めるなどの措置が必要だったのでは?と思います。

OEMメーカーの信用性を調査し判断するのは、『開発プロセス』の役割です。初期段階の『開発プロセス』で、OEMメーカーの信用性を判断しない限り、OEMメーカー由来の品質トラブルは根絶出来ません。

一見、製品検査をスルーした「充填(仕上げ)プロセス」が原因だと思いきや、事の本質は『開発プロセスの不備』というのが私の考えです。

製品が生み出される一番の初期段階、『開発プロセス』で食い止めなければ、後プロセスである『製造』『充填』へ行けば行くほど、品質トラブルを防ぐことは困難ですし、より被害が大きくなります。

このプロセスの初期段階を『川上』と言いますが、いかに川上での対応を確実にするかが、品質トラブルを防ぎ、自主回収騒動を起こさない、最も有効な策です。

資生堂はこの他にも、様々なOEMメーカーに製造委託していますから、これを期に、OEMメーカーでの製造、管理体制の見直しを行っていると思います。

 

3.おわりに

いかがでしょうか?

自主回収の大変なところは、疑わしいロット全てを回収しなければなりませんから、今回のケースでは、全製品にプラスチック片が混入しているわけではなく、疑わしいロット全てですから、回収数『約40万個』と、とんでもない数になってしまうんですね。

資生堂らしからぬミスで、多大な損害を被っただけでなく、ユーザーからの信頼も失ってしまいました。

今回は、ドイツのOEMメーカーの責任ですが、ユーザーに対しては、販売元である資生堂が全責任を持って対応しなければなりません。また、OEMメーカーの信用性を見抜けなかった、そして、OEMメーカーを管理出来なかった、資生堂の責任は重いです。

資生堂程の会社ですから、今回の回収騒動で、会社自体が大きく傾くことは考えにくいですが、企業価値の低下を招いたことは間違いありません。

ユーザーの皆さんはあまりご存知ないかと思いますが、『資生堂の業界団体に対する功績』は絶大です。今、多くの化粧品メーカーが存在しますが、これらメーカーは、資生堂のおかげで、化粧品事業を展開出来ているのです。

今後、記事にしようと思いますが、資生堂がいなければ、今の化粧品業界の発展はあり得ませんし、ヨーロッパ勢に負け、ヨーロッパ勢の言いなりになっていたでしょう

日本の化粧品業界を支える資生堂ですから、全ての化粧品メーカーのお手本となるような、製品開発、品質管理を実践してほしいと思います。

 

資生堂の偉業はこちら

⇒ シワケアが熱い! 資生堂とポーラを徹底比較 勝つのはどっち? - コスメの真実 ~元化粧品開発者によるブログ~