コスメに配合される美容成分の一つに『セラミド』があります。
「セラミド」と言えば、「ヒアルロン酸」・「コラーゲン」とともに、最も認知度が高い美容成分の一つではないでしょうか?
今回は、化粧品開発者の私が、今現在注目している『セラミドコスメ』をご紹介します。
セラミドの効果は?
「セラミド」と言えば、『敏感肌コスメ』。世の敏感肌コスメのほとんどに、セラミドが配合されています。
では何故、敏感肌にセラミドが有効なのでしょうか?
以下、簡単な模式図(イメージ図)で解説します。
上図は、角層内の『細胞間脂質』のイメージ図です。角層内、角質細胞と角質細胞の間には、『細胞間脂質』が存在します。正常な角層では、細胞間脂質がきっちりと並び、隙間を埋めています。そして、細胞間脂質の間にたっぷりの『水分』を保持し、肌のうるおいを維持しています(図1:正常な角層)。
しかし、角層が乱れると、細胞間脂質が欠損し隙間が出来ます(図2:乱れた角層①)。隙間ができると、そこから肌内部の水分が蒸発し、うるおいが低下します(図3:乱れた角層②)。
これが、肌バリア機能の低下による乾燥した肌の状態、つまり、『(乾燥性)敏感肌』です。
敏感肌では、細胞間脂質が欠損し、うるおいが逃げやすい状態(肌バリア機能の低下)になっています。
何故、敏感肌に『セラミド』が有効なのか?
その答えは、細胞間脂質の主成分が『セラミド』だからです。
細胞間脂質が欠損し、隙間が多い角層では、肌内部から水分が逃げて(うるおいの低下)、肌バリア機能が大きく低下しています(図4:乱れた角層)。
そこで、セラミド配合コスメを使用すると、「セラミド」が肌内部に浸透し、欠損部分に並んで、隙間を埋めてくれます。
セラミドによって、細胞間脂質の隙間が埋まり、水分を保持することが出来て、『肌バリア機能が回復』します。
このように、細胞間脂質の主成分である『セラミド』は、肌バリア機能にとって、非常に重要な成分です。欠損し、隙間が出来てしまった細胞間脂質間を埋めてくれます。だからこそ、バリア機能が低下し、乾燥しがちな『敏感肌』に、『セラミドケア』が有効なのです。
ここで重要なことは、「セラミド」は肌にとって非常に有用な成分ですが、難溶性物質のため、コスメへの配合が困難です。
また、セラミドをただ単に配合するだけでは十分な効果は得られず、図でお示ししたように、肌内部(角層)に浸透して初めて効果を発揮します。
ですから、セラミドコスメを選ぶにあたり、『①セラミド配合技術』と『②セラミド浸透技術』が最も重要であり、次項でご紹介するセラミドコスメは、この2つの技術がしっかりしています。
注目のセラミドコスメ
ディセンシア「アヤナス」
このブログでもご紹介している通り、「ディセンシア」はポーラ・オルビスグループの敏感肌専門ブランドであり、敏感肌コスメとしても、市場における評価は非常に高いです。
「ディセンシア」に配合されているセラミドは『ヒト型セラミド』です。
セラミドには大きく、「ヒト型セラミド」・「合成セラミド(セラミド様物質)」・「天然セラミド」・「植物性セラミド」の4種類があります。
これらセラミドの特長の詳細は、別途記事にしますが、「ヒト型セラミド」は、角層に存在するセラミドとほぼ同等の構造を持つ成分です。「セラミド2(セラミドNS)」・「セラミド3(セラミドNP)」など、セラミドの後ろに数字 or アルファベットがつきます。
「ヒト型セラミド」は、人が持つセラミドとほぼ同じ構造ですから、肌親和性が高く、保湿力・浸透力にも優れ、肌刺激性も少ないと言われています。
このような理由から、私は「ヒト型セラミド」が最も好きですが、先程も述べたようにセラミドは難溶性物質ですから(植物性セラミドは除く)、コスメへの配合が困難です。
ディセンシアはこの「ヒト型セラミド」を、細胞間脂質の構造と同じラメラ構造に配列させた『カプセル』にしました。
正確には、セラミドの『ベシクル』と言いますが、ディセンシアではこれを『セラミドナノスフィア』と表現しています。
これはものすごく『高度な技術』です。
セラミドは難溶性物質であり水に溶けませんから、油に無理やり溶かしてコスメに配合するのが一般的です。
ですから、これまでは、油が配合されている乳液 or クリームにしかセラミドを配合出来ませんでした。
本来、美容成分の浸透を担う『化粧水』に配合すべきですが、これまでの技術では化粧水にセラミドを配合することが出来なかったんですね。
そこでディセンシアは、『セラミドナノスフィア』を開発しました。これにより、セラミドの化粧水への配合が可能になり、ディセンシアの化粧水には全て、セラミド(ヒト型)が配合されています。
『セラミドの化粧水への配合』、正確に言うとこれは、『ポーラ研究所』の技術です。当時、学会や論文で研究発表していて、実際私も聞きましたし、国際学会での発表もしていたので、『世界に認められた素晴らしい技術』と言えます。
さらに「セラミドナノスフィア」は、これまで困難とされていた化粧水へのセラミド配合を可能にしただけでなく、『ナノ』の名がつく通り、非常に小さなカプセルですから、『角層への浸透』も期待出来ます。
現在は、このポーラ研究所の成果を参考に、某大手原料メーカーが、比較的簡単にセラミドベシクルを作製できる化粧品原料を開発しましたから、今では、セラミドの化粧水への配合はディセンシアだけの技術ではありませんが、先駆者として素晴らしい。
『セラミド配合技術』・『セラミド浸透技術』、双方とも超一級品です。
常盤薬品工業「ノブIII」
常盤薬品工業は『ノエビア』のグループ会社です。
「ノブシリーズ」は古くから、『低刺激コスメ』として有名で、その中でも『ノブIII』は臨床皮膚医学に基づいて開発された『敏感肌コスメ』です。
「ノブIII」には、ヒト型セラミドである『セラミド3』が配合されています。
※セラミド3:N-ステアロイルフィトスフィンゴシン
常盤薬品工業は、ノエビアのグループ会社ですから 、ノエビアで培った処方化技術を駆使し、『セラミド液晶化技術』によって、セラミドの『浸透性』を高めています。
『セラミド液晶化技術』を搭載した「ノブIII」は、ただ単にセラミドを配合しているセラミドコスメとは一線を画す存在ですから、自信をもっておすすめ出来ます。
「ノブIII」は、『全品医薬部外品』であり、『低刺激設計』を特長としています。
また、『トライアルセット』がかなり充実していますから、ご興味のある方は一度、トライアルからお試しになってはいかがでしょうか?
コーセープロビジョン「米肌」
コーセーの『米肌(マイハダ)』は、セラミドを配合したコスメではなく、『肌内側のセラミド産生を高める』コスメです。
通常のセラミドコスメが、『肌の外側』からセラミドを与えるのに対し、「米肌」は、『肌の内側』からセラミドを産み出し、肌のセラミド量を増やします。
肌の内側からセラミドを産み出す正体が、『ライスパワーNo.11』です。
この成分、当時は大ブームで、「ライスパワー」という言葉が広く知れ渡るようになりました。化粧品業界をちょっとざわつかせた成分でもあります。
何故なら、「ライスパワーNo.11」は、『水分保持能の改善効果』を認められた、医薬部外品の『有効成分』だからです。
この水分保持能の改善効果は、唯一、「ライスパワーNo.11」だけに認められた医薬部外品の効能です。
「ライスパワーNo.11」は、年齢とともに減り続ける『セラミドを産生』し、肌が自ら潤いを保つ力、『水分保持能』を改善することで、乾燥が原因で起こる小ジワ・ハリ不足・毛穴の開きなどを防ぐ効果が期待出来ます。
私は「コラーゲン配合コスメ」があまり好きではありません。
コラーゲンは『超巨大分子』ですから、そもそも肌内部には浸透しません。「加水分解コラーゲン」のような『低分子コラーゲン』で浸透させる技術はありますが、肌のしわ・たるみのキー成分であるコラーゲンは、『真皮』に浸透させてはじめて効果が期待出来ます。
しかし、いくら低分子コラーゲンと言えど、『真皮』まで浸透するとは考えられませんし、そもそもコスメの浸透表現は『角層まで』と決められています。
ですから、コラーゲンケアであれば、真皮の線維芽細胞に働きかけて、コラーゲン産生を促進させる、肌の中からコラーゲン量を増やすことがベストと考えています。
「セラミド」の場合、真皮よりも浅い表皮の『角層』に届ければよく、「ディセンシア」や「ノブIII」のような『セラミド浸透技術』であれば、角層に届けることは可能ですから、コラーゲンの例と同じではありません。
しかし、肌の内側からセラミドを増やすという発想は素晴しく、何より、医薬部外品の有効成分として、国から効果を認められているという点は、非常に高く評価出来ます。
『水分保持能の改善』は、『ライスパワーNo.11だけ』に認められた医薬部外品の効果効能です。是非、唯一無二の効果を、ご自身のお肌でご確認ください。
おわりに
いかがでしょうか?
敏感肌や乾燥肌にセラミドケアは非常に有効です。
しかし、ただ単にセラミドを配合すればよいというわけではなく、角層に届ける『浸透技術』が必要不可欠です。
『セラミド配合技術』と『セラミド浸透技術』の視点を忘れず、ご自身に合った「セラミドコスメ」をお選びください。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません