
美容液成分〇〇%以上配合!
このような表記をして、あたかも美容液成分が高配合されているかのようなアピールするコスメをよく見ます。○○の数字が大きければ大きいほど、何か凄そうな気がしますが、そもそもこれらコスメに、これだけの美容液成分が配合されているのか?
この記事では化粧品開発者の私が、美容液成分高配合コスメのカラクリをお教えします。
美容液成分〇〇%配合は本当だけど、、、
特に、日焼け止めやBBクリーム、クレンジングなど、基礎スキンケア以外のアイテムに、美容液成分70%~80%配合と宣伝している商品が多いです。
美容液成分70%~80%って凄いと思いませんか?この表現だけで、肌に良さそうなイメージがあります。
しかし、
これだけの美容液成分、本当に配合されているのでしょうか?
実は、これには『カラクリ』があります。
それは、美容成分ではなく、美容液成分と、『液』と表現している点です。
『美容成分』というと、ヒアルロン酸やコラーゲンやエキス類が該当します。
しかし、ヒアルロン酸などの美容成分が70~80%も配合されているわけではないです。
美容成分ではなく、『美容液成分』です。
皆様がお使いの『美容液』は、『水・油・エキス類』で構成されています。
ですから、美容液成分〇〇%配合の〇〇の中には、ヒアルロン酸やエキス類だけでなく、水と油も含まれます。
化粧品には『水』が非常にたくさん配合されています。ですから、
水を含むからこそ、70~80%といった高い数字が可能となる!
この表現が、日焼け止めやBBクリーム、クレンジングなど基礎スキンケア以外のアイテムに多いのは、日焼け止めであれば「紫外線防御」、BBクリームであれば「演色」、クレンジングであれば「メイク汚れの除去」が基本機能であり、これらは基礎スキンケアとは異なり、美容や美肌が主目的ではないです。
主目的ではないものの、『付加価値の一つ』として、スキンケア的な、美容液的な効果をアピールしたいわけです。
美容液成分〇〇%と聞けば、スキンケア効果がありそうな気がしませんか?
ユーザーに、基本機能の優秀性だけでなく、スキンケア効果も高いと、分かりやすく伝えるための方法が、美容液成分〇〇%配合という文言なのです。
確かに、日焼け止めやBBクリーム、クレンジングに、「美容液成分70~80%配合」と表記されていれば、スキンケア効果がありそうで凄そうですが、実際は、たいして凄くありません。
BBクリームの配合成分を詳しく見てみましょう。
<一般的なBBクリームの配合成分>
① 水 50~70% ⇒ 美容液成分
② 油 10~30% ⇒ 美容液成分
③ 界面活性剤 ~5% ⇒ 美容液成分ではない
④ エキス類 ~2% ⇒ 美容液成分
⑤ 粉体 ~15% ⇒ 美容液成分ではない
⑥ 防腐剤や増粘剤など ~1% ⇒ 美容液成分ではない
上記が、ざっくりではありますが、BBクリームの配合成分と配合量です。
これを見ると、普通に、何も意識せずにBBクリームを製剤化しても、美容液成分70%~80%になるのがお分かり頂けると思います。
ですから、美容液成分70~80%配合と聞いても、すごい!と思う必要なんて全くありません。
意識しなくても自然にそうなります。数字に嘘偽りはありませんが、数字は後付けです。
化粧品メーカーの宣伝方法、宣伝文句が秀逸なんです。
美容液成分75%配合
以下は、あるBBクリームの全成分表示です。
この商品は『美容液成分75%配合』と大きく宣伝しています。
青太字が美容液成分だと考えられます。
水、シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリエチルヘキサノイン、ペンチレングリコール、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ジステアルジモニウムヘクトライト、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン、サクシニルアテロコラーゲン、加水分解ヒアルロン酸、加水分解ヒアルロン酸アルキル(C12-13)グリセリル、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、カラスムギ穀粒エキス、シア脂、水溶性プロテオグリカン、セイヨウトチノキ種子エキス、ヒメフウロエキス、シャクヤク根エキス、アフリカマンゴノキ核脂、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー、キサンタンガムクロスポリマー、ベンゾイミダゾールダイアモンドアミドエチルウレアカルバモイルプロピルポリメチルシルセスキオキサン、ナイロン-6、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ラウレス-4、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、塩化Na、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、トリメチルシロキシケイ酸、BG、シア脂油、トリベヘニン、フェノキシエタノール、トコフェロール、シリル化シリカ、グリセリン、オクチルドデカノール、水添ココグリセリル、炭酸水素Na、ヒドロキシエチルセルロース(+/-) 酸化チタン、酸化鉄、タルク、ジメチコン、合成金雲母、水酸化Al、ステアリン酸、ハイドロゲンジメチコン、マイカ、メチコン
75%配合って、すごい高い数字ですが、水と油と多価アルコールとエキス類が含まれますから、特別高いというわけではないです。
普通にBBクリームを製剤化すれば、容易に達成できる数字です。
美容液成分ではない、残りの25%は、粉体、防腐剤、増粘剤、安定化剤でしょう。
美容液・ミネラル成分98%配合
『美容液・ミネラル成分98%』というものもありました。
98%ってすごくないですか?
でもすごくないです。『ミネラル』というのがポイント。
水、油、エキス類に加え(美容液成分)、ミネラルということは『粉体』まで含んでいます。
ですから、先ほどの美容液成分に加え、酸化チタン・酸化亜鉛・酸化鉄・タルク・マイカ・シリカ・硫酸Mgなどの粉体全てが、ミネラル成分としてカウントされるので、98%という数字が可能になります。
98%って確かにすごい数字ですが、これも普通に製剤化すれば容易に達成できます。
有名商品でも
我々化粧品開発者は、製剤化するうえで、美容液成分○○%を特に意識してないです。
出来たものが結果的に美容液成分○○%であるだけで、これは企画サイドが考えた、いわば『販売戦略』の一つです。
『水』を多量に含むコスメは、自然と高い数字になる性質を持っています。
水を含む事を前提で数字を出していますから、個人的にはあまり好きな戦略ではありませんが、「資生堂アネッサ」や、「マナラ ホットクレンジング」も同様の策を講じているため、コスメの世界では一般的な手法と言えるでしょう。
「資生堂アネッサ」では、美容液成分ではなく、『スキンケア成分』と表現しています。
また、「マナラ ホットクレンジング」は、『美容液成分91.3%』と表現しています。
ホットクレンジングの場合、水はほとんど配合されておりません。ホットクレンジングの熱の正体は、グリセリンによる『水和熱』です。結果的にグリセリン高配合になりますから、これだけの高い数字が可能となります。
残りは界面活性剤や防腐剤ですが、さすがにこれらは、美容液成分とカウントされません。
このように、有名商品であっても、「美容液成分・スキンケア成分○○%」と表記していますから、立派な販売戦略と言えるでしょう。
しかし、日焼け止めやBBクリーム、クレンジングなどの基礎スキンケア以外のアイテムの本来の目的は、スキンケア効果ではないです。ですから、この表現に惑わされず、紫外線防御や演色、クレンジング力など、『本来の機能』を最優先にコスメをお選びください。
おわりに
いかがでしょうか?
数字のカラクリ、お分かりになりましたか?
いかにユーザーに、分かりやすく、ダイレクトに商品特徴を伝えるか、化粧品メーカーはあの手この手を考えています。
メーカーの宣伝文句に騙されないようコスメをお選びください。
※本記事の内容は個人見解であって効果を保証するものではありません