今、炭酸コスメが大人気です。花王のエストが登場してから、しばらく炭酸コスメブームが続いて、落ち着いたかと思いきや、現在では、様々なメーカーから様々なタイプの炭酸コスメが発売されているから驚きです。
炭酸コスメで一番気になるのが、『炭酸のお肌への効果』ではないでしょうか。
今回は、『炭酸コスメの真実』と題しまして、「本当に炭酸コスメはお肌にいいのか?」という疑問にお答えし、炭酸コスメに潜む罠とともに、話題の炭酸コスメをご紹介いたします。
炭酸コスメとは?
その名の通り、炭酸を配合したコスメを『炭酸コスメ』と言います。
炭酸コスメのブームの火付け役は、花王エストの『アクティベートサーキュレーター』でしょう。これは、エアゾールタイプの炭酸パックですが、これを期に、炭酸クレンジング、炭酸洗顔、炭酸化粧水、炭酸乳液、炭酸UVなど、各種メーカーから、ありとあらゆる炭酸コスメが発売されています。
ブームってすごいです。
でも、中には、ブームに乗っかろうと、ただ単に炭酸を配合し、『形だけの炭酸コスメ』なるモノが多数存在します。炭酸の効果を最大限得るためには、炭酸コスメに『最適な剤型』が存在するのです。
次項で、炭酸のお肌への効果と、その効果を得るための最適な剤型についてご説明するので、日頃の炭酸コスメ選びの参考にしてください。
炭酸のお肌への効果とは?
炭酸の効果は『血行促進』です。
メカニズムを簡単にご説明すると、お肌に炭酸が塗布されると、経皮吸収効果によって、真皮の下の毛細血管内に、『炭酸(炭酸ガス=二酸化炭素)』が吸収されます。
毛細血管の中に炭酸ガス(二酸化炭素)が取り込まれると、血液中の二酸化炭素濃度が上がり、「酸素が足りない!」と、一種の酸欠状態になります。そうすると、体中に酸素を送ろうと、血管が拡張して、血流が良くなります。つまり、『血行促進』というわけです。
さらに、炭酸コスメの使用により、シワやくすみの改善や、毛穴数の減少、有効成分の浸透促進などの報告例もあります。
血行促進と、これら効果の関連は明確になっていませんが、血行促進によって、新陳代謝が活発になり、『ターンオーバーの正常化』が期待できます。
ターンオーバーの正常化は、メラニン代謝や肌バリア機能の維持にも影響を及ぼす、お肌にとって非常に重要なことなので、『炭酸コスメ』の使用によって、血行を促進させることは、健やかなお肌を手に入れるための有効な手法と言えます。
ただし、それは、正しい知識の元、正しい炭酸コスメを選んだ場合に限ります。
炭酸コスメには『罠』が潜んでいます。皆様、誤った炭酸コスメをご使用にならないようご注意ください!
炭酸コスメに潜む罠
炭酸と炭酸ガスは違います!
ここまでは分かりやすく、「炭酸=炭酸ガス」と言う考えでご説明しましたが、厳密にいうと、炭酸と炭酸ガスは違います。『炭酸(H2CO3)』は、炭酸ガス(二酸化酸素)が水に溶けた状態のモノを言います。いわゆる、炭酸水ですね。
一方、『炭酸ガス(CO2)』は、二酸化炭素です。
先程、炭酸には血行促進効果があると言いましたが、炭酸ガス(二酸化炭素)のままでは効果は期待できません。炭酸ガスを直接お肌に吹きかけても、ほとんど吸収されず、効果は得られません。
炭酸ガスをお肌に吸収させるためには、水に溶かして『炭酸』にしなければなりません。炭酸ガスが水に溶けて『炭酸』となって初めて、炭酸ガスが吸収され、血行促進効果を得ることが出来るのです。
血行促進のため、お肌に「炭酸ガス」を取り込みたい。しかし、「炭酸ガス」そのものだと、吸収されない。「炭酸ガス」を水に溶かして「炭酸」にすることで、お肌に取り込むことが出来る。血行促進効果が期待できるのは『炭酸ガス』であり、『炭酸』は、炭酸ガスをお肌に取り込ませるための『手段』です。
ですから、炭酸コスメと言っていますが、正確には『炭酸ガスコスメ』かもしれませんね。
なんか、少しややこしいですが、ここで重要なことは、炭酸ガスは、水に溶けた状態でないと(=炭酸)、お肌に吸収されず、効果を得ることが出来ないということです。これは、炭酸コスメを選ぶ時にも重要なので、是非、覚えておいてください。
炭酸コスメのタイプを知ってください!
炭酸コスメには大きく分けて、『エアゾール』と、有機酸と炭酸水素ナトリウムを混ぜて使用時に炭酸ガスを発生させる『二剤混合』があります。二剤混合は、手間ですし、使用感などに大きな制約があることから、炭酸コスメであれば、私は断然『エアゾール』をおすすめします。
エアゾールは、耐圧容器に充填されますから、『高濃度の炭酸ガス』の配合が可能ですし、何より、昨今のエアゾール製剤化技術の進歩によって、使用感に優れたモノがたくさんあります。
炭酸コスメは『エアゾール』がおすすめ。
ただし、エアゾールであれば何でもいいと言うわけではありません。
大きな落とし穴があります。
炭酸コスメに最適な剤型を知ってください!
エアゾールで、冷たく感じる製品があると思います。皆様、一度はお使いになったことがあるのではないでしょうか?『冷感スプレー』というものですね。熱中症対策として人気の商品です。
何故、冷たく感じるかというと、エアゾールから吐出させるには、LPGなどの『液化ガス』が必要です。この液化ガス、使用時、製剤をお肌の上に吐出させると、『空気中に拡散』されます。これを『気化』と言い、この時の『気化熱』で冷感を感じます。アルコール消毒の際、スーと冷たく感じるのと同じ原理です。
このように、エアゾールから製剤を吐出させるために配合する、液化ガス(LPGなど)を『噴射剤』といいます。炭酸ガスも『噴射剤』です。ただし、炭酸ガスは、LPGに比べ、液化しにくい性質を持っています。
先程、炭酸ガスは水に溶けた状態でないと(=炭酸)、お肌に取り込まれず、血行促進効果が期待できないとご説明しました。
ですから、炭酸コスメを使用するとき、炭酸ガスが、お肌に取り込まれる前に『気化』してしまったら、炭酸ガスの効果は全く得ることが出来ません。
お肌に吐出した際、炭酸ガスの気化(拡散)を防ぎ、水に溶けた『炭酸』の状態で、製剤中に保持させることが、炭酸コスメを使用するうえで一番重要なことです。
<吐出後、炭酸ガスの『気化(拡散)』を防ぎ、製剤中に、『炭酸』の状態で保持させる>
このためには、私は、『泡タイプ』の炭酸コスメをおすすめします。お肌に吐出した際、『泡』が、炭酸ガスの気化を防ぎ、製剤中に炭酸の状態で保持されるのをサポートしてくれるからです。
泡タイプでない、炭酸ローションや炭酸UVスプレーは、お肌に吐出しても、気化(拡散)の恐れがあります。炭酸コスメと言っても、炭酸ガスがお肌に取り込まれる前に気化するようでは、それはもはや『形だけの炭酸コスメ』であり、炭酸によって得られる効果は一切ありません。
ですから、炭酸コスメであれば、『泡タイプ』が絶対におすすめ。炭酸マスクや炭酸パックに、『泡タイプ』が多いですね。炭酸乳液でも泡タイプはあります。
話題の炭酸コスメとは?
ご説明したように、炭酸コスメで重要なことは以下2つです。
① : お肌に浸透するのは、炭酸ガスそのものではなく、水に溶けた炭酸
② : お肌に浸透させるには、吐出後の炭酸ガスの気化を防ぎ、製剤中に炭酸の状態で保持させる必要あり
これを満たすものは、『泡タイプのエアゾール』です。
泡タイプのエアゾールが、一番、炭酸ガスの効果(血行促進)を得られる剤型だと私は考えています。ただ単に、炭酸ガスを配合した『形だけの炭酸コスメ』にはご注意ください。
▼エアゾール 『泡タイプ』の炭酸コスメです
おわりに
いかがでしょうか?
炭酸コスメは、血行促進など、様々な効果が期待できますが、化粧品では、これらの効果があります!と、商品周りで言うことは出来ません。
化粧品の場合、炭酸ガスは、『噴射剤』としか言うことが出来ないのです。
しかし、炭酸ガスのお肌への効果は、科学的にも証明されていますから、噴射剤としか言うことが出来ない現状を残念に思います。
ただ、ご説明したように、炭酸ガスの効果を得るためには、炭酸ガスの気化を防ぎ、水に溶けた炭酸の状態を維持していなければなりません。世の中には、このことに対する配慮を忘れ、ただ単に炭酸ガスを配合した、『形だけの炭酸コスメ』が多数存在しますから、これらが市場から淘汰されない限り、炭酸ガスの効果効能表現は厳しいかもしれません。
いずれにしても、正しい知識の元、炭酸コスメに最適な剤型を選択するようにしてください。
※本記事の内容は個人的な見解であって、効果を保証するものではありません