今回は、化粧品開発者の私が今現在注目しているナチュラル・オーガニック系の日焼け止め、『HANA オーガニック UV ミルク(ウェアルーUV)』をご紹介します。
注目ポイント
成分へのこだわり
化粧品の配合成分の構成を考えてみましょう。
化粧品は、より簡潔に表すと『ベース』+『訴求成分』で成り立っています。
乳液を例にとって考えてみます。
水と油と界面活性剤で乳液は出来ます。しかし、これだけだと何の特徴もありませんし、お肌への効果という点でも寂しいですね。そこで、ヒアルロン酸やコラーゲン、植物エキスなどの『美肌成分(保湿成分)』を配合します。
乳液の例で言うと、水・油・界面活性剤が『ベース』です。ヒアルロン酸、コラーゲン、植物エキスなど、美肌効果が期待できる成分は、商品周りやホームページで『〇〇配合!!』と大きく宣伝しますね。このような成分が『訴求成分』です。
訴求成分は、いわば、その商品の『顔』ですから、化粧品メーカーは、美肌効果が高いモノ、ユーザーが興味を持っているモノ、他社が配合していないモノなど、非常に強いこだわりを持っています。
訴求成分にこだわりを持つのは当然です。
「HANA オーガニック UV ミルク」(以後、ウェアルーUV)は、訴求成分へのこだわりは勿論ですが、『ベース』へのこだわりがすごいです。
この商品、『100%天然由来成分で構成されていて、植物成分の98.5%がオーガニック原料』です。
ナチュラル系、オーガニック系の中には、「本当にナチュラル?オーガニック?」と疑問に思うコスメがたくさん存在します。何故なら、ナチュラルコスメ、オーガニックコスメの明確な定義がなく、メーカーの自社基準で運用されているからです。
ですから、例えば、成分中の10%を植物由来原料、その他90%を石油由来原料が占めたとしても、メーカーが「5%以上の植物由来原料を配合すればナチュラル系コスメ」と、自社基準を設けた場合、このコスメは立派はナチュラルコスメになります。
メーカーの自社基準故に、植物由来原料10%、石油由来原料90%でも、ナチュラルコスメになってしまうんです。
これでは『優良誤認』になりかねない・・・と、化粧品メーカーと全く関係がない『第3機関』がオーガニックの基準を設けました。それが『認証系コスメ』です。
認証系では『エコサート』が有名ですね。エコサートの基準の一つに、製品の95%以上が天然原料であり、そのうち植物原料の95%以上がオーガニック原料である、というものが存在します。エコサートの基準はこれだけでなく、容器や製造に至るまでありますが、全ての基準を満たした商品には『エコサート認証』が与えられ、製品に表示可能となり、エコサート認証を得たオーガニックコスメとして販売が可能となるのです。
▼エコサート認証コスメ
先ほど述べた通り、ナチュラル・オーガニック系コスメの中には、自社基準で運用しているため、怪しいモノが多数存在しますが、メーカーとは関係がない第3機関が認証する認証系コスメは、『本物のオーガニックコスメ』と言えるでしょう。
話しを「ウェアルーUV」に戻しますが、この商品は認証系コスメではありません。ですが、その配合基準は、エコサート基準に則っており(私の予測です)、認証系コスメではありませんが、認証系コスメに匹敵する本物のオーガニックコスメです。
認証を得るためには、費用がかかります。ですから、世の認証系コスメは、その費用を価格に上乗せするため、少し高いんですね。「ウェアルーUV」の場合、認証系コスメレベルのこだわりの配合成分ですが、認証をあえて取得せず、その分浮いた費用を販売価格に還元していると予測します。私の感覚であれば、この配合成分でこの価格は正直厳しい。4500円~5000円にしたいというのが本音でしょうか。
こだわりの配合成分は、ホームページを見ても明らかです。成分の『全成分名称』と『配合目的』は勿論、『由来』と『原産国』まで記載されています。ここまで公開するということは、成分に対する強いこだわりと自信があるのでしょう。
BGは化粧品によく配合される成分で、皆様も馴染みがあると思います。通常、BGは『石油由来』ですが、『さとうきび由来』のモノも存在します。ただし、原料価格は石油由来のBGの『10倍以上』です。
全成分表示では、BGとなってしまうので、石油由来か、さとうきび由来か分からないんです。ですから、あえて原料価格が高いさとうきび由来のBGを使用せず、石油由来のBGを使用して、『ナチュラル』を謳うナチュラルコスメは存在します(全成分では分からないので)。
しかし、「ウェアルーUV」の場合は、『さとうきび由来のBG』と、ホームページにしっかり明記されています。正直なメーカーです。
認証系コスメではありませんが、『本物のオーガニックコスメ』と言える、「ウェアルーUV」の配合成分へのこだわりは素晴しいと思います。
成分へのこだわりだけじゃない
「ウェアルーUV」は本物のオーガニックコスメですが、それ以前に、『日焼け止め化粧品』であることを忘れてはいけません。
配合成分へのこだわりは素晴しいが、肝心の日焼け止めとしてはどうでしょうか?
通常のオーガニックコスメの日焼け止めは、正直、日焼け止め機能は劣ります。『SPF15~20、PA+~++レベル』で、十分な紫外線カット効果とは言えませんし、何より、『白浮き』します。
原料にこだわるため、技術的に困難なんですね。
しかし、「ウェアルーUV」は『SPF30、PA++』を達成しました。生活紫外線の防御であれば、十分すぎる程のスペックです。
さらに、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛)の『分散技術』により、白浮きを極力抑えています。
HP上では、『白浮きしない』と言っていますが、ケミカルの同スペック品と比較すると白浮きします。ですが、気になるレベルではありません。
さらに、「ウェアルーUV」はナノ原料(酸化チタン、酸化亜鉛)を使用していません。紫外線散乱剤には酸化チタン、酸化亜鉛が用いられますが、これらは、小さければ小さいほど、紫外線防御効果が高いと言われています。『小さければ小さい=ナノ原料』です。
つまり、ナノサイズの酸化チタン、酸化亜鉛を配合せず、大きな酸化チタン、酸化亜鉛を使っているというわけです。ナノ原料は『肌への浸透の懸念』がありますから、これを避けたんですね。
もし「ウェアルーUV」が、ナノサイズの酸化チタン、酸化亜鉛を用いていたなら、PA+++(実際はPA++)は可能で、もっと白浮きはしなかったでしょう。
別の記事でご説明しようと思いますが、私自身、ナノ原料は安全であり、ナノサイズの酸化チタン、酸化亜鉛を使うべきという考え方です。ですから、ナノサイズの酸化チタン、酸化亜鉛を使って、日焼け止めとしての機能を、さらに向上させてほしかったというのが、正直な感想です。
ですが、「ウェアルーUV」の日焼け止めとしての機能は十分ですし、何より、ナノ原料に対する考え方は、メーカーによって様々ですから、あくまで私個人の意見であること、ご了承ください。
総評
正直、私自身は、ナチュラル・オーガニックコスメよりも、ケミカル系コスメの方が好きです。
ナチュラル・オーガニックコスメは、配合成分へのこだわりだけで、機能を軽視しがちですし、何より、自社基準で運用しているため、「本当にナチュラル?」と思わせるような眉唾物が多すぎるからです。
しかし、「ウェアルーUV」は認証系コスメではありませんが、配合成分、HPでの成分詳細を見る限り、『本物のオーガニックコスメ』と言えるでしょう。
『お肌にはナチュラル、オーガニックのモノを使いたい』という方に最適です。
注意点
ご使用の際は以下にご注意ください
①:「ウェアルーUV」の日焼け止めスペックは『SPF30、PA++』です。生活紫外線の防止であればこのレベルで十分です。しかし、長時間屋外で活動される場合や、レジャーの際は、より高スペックのモノ(SPF50+、PA++++)をおすすめします。日焼け止めのスペックは(SPF,PA値)、『TPO』に合わせてお選びください。
②:「ウェアルーUV」は汗や皮脂に対し、決して強くありません。ケミカルの日焼け止めと比べたら、崩れやすいでしょう。しかし、ウォータープルーフの日焼け止めが崩れにくいと勘違いされている方が多いのではないでしょうか?詳細は別の記事でご説明しますが、ウォータープルーフというのは、『水』に対して強いのであって、『汗』に対し強いというわけではありません。
程度の差はあれ、日焼け止めは『汗』で崩れます。汗で崩れない日焼け止めなんて存在しません。ですから、崩れ防止のために、ウォータープルーフの日焼け止めを選ぶよりも、『崩れたら塗り直す』という使用法が重要です。
塗り直しを重視する考え方は、私個人ではなく、化粧品メーカーも同様です。商品の注意書きに、塗り直しを推奨するような表現が記載されているはずです。
ですから、十分な紫外線カット効果を得るためにも、たっぷりな量を、まんべんなく均一に塗るようにしてください。また、夏場は特に崩れやすいので、こまめに塗り直すようにしてください。
③:本記事の内容は私個人の考えであって効果を保証するものではありません。また、ヒトによってはお肌に合わないケースも考えられます。お肌に合わなかったり、何かしらの違和感をお感じになった際は、直ちに使用をお止め下さい。
▼本物のナチュラル・オーガニック系日焼け止めです